偽りの身分
「2度と顔を見せないでよね!」
退散して行く男達には中指を突き立てて威嚇するお姉さん
彼女が瞑目すると持っていた水晶のような剣はガラスの様に割れ、消えてしまった
碧く澄んだ瞳は宝石の様で、長身の正にモデルのような体型の彼女は胸元がバッサリ空いた大胆な白のドレスコートを着ていてどこか艶やかな感じ、
「あ、あの、助けていただいてありがとうございます」
「いいよ、お礼なんて ただ あたしは女の子に集団で襲いかかる男が許せなかっただけだからさ」
頭を下げお礼をすると彼女は笑顔で答える
「アリシィもお姉さんもすっごい強いんだねぇ!うん!決めた、お姉さんをお友達第2号にしてあげる」
ミナが嬉しい顔をして白に近い水色髮のお姉さんの手を握り握手をするが すぐにミナは手を引いてしまった
「⁉︎冷た!お姉さんの手すっごく冷たいんだけど!」
お姉さんが笑う
「アハハ、まあまあ それより友達だったけ?いいよ、あたしはシアンよろしくね」
はぐらかす様に自己紹介をするお姉さん
気にせず自分も名乗るミナ
「私ははミナ!みーちゃんでいいよ、こっちの怪力美少女はアリシィ!」
「か、怪力ってなんですか⁈」
「フフ!面白いお友達が出来たわ そうだ、お友達の2人にとっておきの••••••」
シアンさんが突然裏を向いて何かをしだした
そのまま待つこと数十秒、
「はい、お待たせ!あたし特製アイスクリーム!美味しいよ?」
どうやってこんな短時間で作ったのだろうか?と思いつつミナと私はアイスを受け取り一口食べる
とても濃厚なミルクの味の中にほのかなミントとバニラエッセンスの香りがアクセントになり香ばしいコーンがサクサクして口の中を飽きさせない
凄く美味しい‼︎
「あたしは今日街にアイスを売りに来た しがないアイス屋さん、手が冷たいのはそのせいね」
巨大なパフェを食べたのにも関わらず、2人ですぐに完食した
「美味しい!こんなアイス初めて食べた!濃厚なのにしつこくないしシンプルで複雑な味ね」
ミナは興奮した様子で褒めちぎる
よかった、とシアンさんが答える
でも、何故アイス屋さんがあんなに強いのだろう?
「今日はラッキーな日ね アイスの味が分かるお友達2人にも会えたし、••••••あ、明日 デートの約束もつけたし?」
赤らめた頬を両手で抑え、たじろぐシアンさん
突然、ミナが愕然とする
「アリシィ••••••これが••••••本当の••••••恋だ!」
「こ、恋ですか⁈」
恋、それは乙女の原動力!
恋、それは甘い永遠の夢!
恋、それは追い求める至高の宝物!
シアンさんは恋をしている‼︎
「アリシィ!人の恋の邪魔は絶対しちゃいけないってお母様から聴いたわ!」
「ええ!私もお父様から愛し合う2人を引き裂くのは悲しい事だと教わりました!」
もう辺りは暗くなって来ている、つまりこれからシアンさんは帰って明日のデートの準備をしなくてはならない!
「「デートの準備を邪魔するのはあまりにも無粋!」」
声を揃えて叫ぶ
「アリシィ、帰りたく無いけど シアンの邪魔しちゃ悪いから私、帰る!」
「はい!私も帰ります!アイスごちそうさまでした••••••そしてシアンさん!後でラブバナ聞かせてくださいね?」
「分かったわ、ありがとう二人とも 絶対デートをうまくやってみせるわ!」
私達は女の硬い友情に目覚めた!
「アリシィ、この宝石はもう要らないからお礼にアリシィにあげるね?私との友情の証!またね、アリシィ、シアン」
ミナがドレスと交換しようとしていた綺麗な石を私の手に握らせて走って行ってしまう
「じゃあ、私も行きます 頑張ってくださいね!」
シアンさんに別れを告げる
私が見えなくなるまでシアンさんは手を振ってくれていた
今日はとっても楽しかったなぁ
また会えるよね?ミナ••••••シアンさん
「二人とも行っちゃったか、••••••あたしに友達だなんて、ホント"人間"って面白いね、」
「ただのアイス屋さんと女の子が戦える訳無いじゃない」
「ねぇ、悪魔ちゃん?」




