偽りの身分 出会い
アリシアパートです
凄い、綺麗••••••
私はふらっと立ち寄った洋服屋さんのショウウインドウに飾られた服に釘付けになっていた
クリーム色のフワリとした生地 腰の部分には光沢のある若葉色のリボンをあしらった膝丈カーテンスカートのドレス
春の季節にぴったりな爽やかと程よい清楚さがガラス越しに伝わってくる
他にも何軒か観て回っていたのだが結局1番最初に立ち寄った、この店に何度も戻って来てしまった
しかし、その度に溜め息をつく
72000エン、田舎から出て来た私には到底手が届かない額 私の故郷では2ヶ月分の生活費程
諦めにも似た感情で私は私に言葉をぶつける
どうせ、私になんか似合わない
私にあんな服似合うわけないだろう
もし、私があの服を買えたとしても
早速、着替えて鏡の前に立ったとしても
そこに映るのはなんだ?
不気味な翼のはえた姿で微笑む
「••••••悪魔だ••••••」
ショウウインドウに映る私の目は潤んでいた
いけない、私がお洒落の事なんか考えちゃいけなかったんだ
季節外れのコートをギュッと深く着込み直す
リクスさん達に打ち明けた後も、結局コートは脱がなかった
いや、脱げなかった
ずっと隠し続けていたし、今更 翼が背中に密着しても不快には思わない
それよりも、ずっと 正体がバレる方が怖い
たとえリクスさん達が私の正体を知っているとしても
私は私の嫌いな部分を曝け出すのは嫌
幸い、待ち合わせ時間まではまだ有る
服なんか見るのは辞めにして 甘い物でも食べよう
そう踵を返した時、
店の中から二つの声が聞こえてきた
「だぁかぁら!この宝石と飾ってあるドレス交換してって言ってるでしょ⁈」
「すまないねお嬢ちゃん、ウチは現金しか使えないんだ物々交換は出来ないよ」
「なんでよ!こっちの方が値段高いんだから損はしないでしょ?」
「悪いね、お金持って来たら売ってあげるからまたおいで?」
「その間に誰かに買われてたら承知しないんだからね!」
ガチャン!と勢い良く店の扉が開いて中から金髪のロングヘアーのピンク色ミニスカートを穿いた女の子が出て来る
「ハァ、なんでこうこの国の人って頑固物ばっかりなの?」
ムシャクシャに頭を掻く、相当イライラしている様だ
関わらないようにしようと思った瞬間、彼女と目があってしまい
1歩2歩とこちらに近づいてくる
な、なんで?
「あなた、さっきからずっとウインドウのドレス見てたよね?」
「は、はい⁈」
どうやら店内から見られていた様だ
「あのドレスは私が先に目を付けたんだからいつか私が買って帰るの!私が買うまで買わないでよね!」
なんて、自分勝手な言い分だろうか購入するのは個人の自由でしょ
でも、もう私に買う気は無く 誰が買おうとどうでも良かった
「私はただ観てただけですよ、高くて手が出せないですし 買う気は無いです」
そう、言うと金髪の子は満足したのか顔を綻ばせ笑顔をみせて
「そう、ならいいの••••••それにしても、私と趣味が合うなんていいセンスしてるわね?」
そう言って、私を下から上まで舐める様に見つめる
近くで見ると着ている服は奇抜だが瞳はブルーで高そうなネックレスをつけていて、とても高貴な雰囲気を醸し出していがそれに全く伴わない程の性格の粗さだ
「そうだ、美味しいクレープがあるお店知ってるんだけど今から行かない?」
いきなりのお誘いに私は驚き、対応に困って考え込む 確かに甘い物を食べようとしていた所だったが
「いいじゃん!行こう?ほら、」
「え⁉︎あっ!ちょっと、ああ!」
私が答える前に強引に私の手を引っ張り無理矢理クレープ屋さんに連れて行かれた