さよならです
アリシアパート
レアさんの声が階段の下から聞こえてくる
どうやらリクスさんが目を覚ましたらしい
あんなに酷い怪我をさせて、私は彼に合わせる顔が無い
リクスさんがレアさんに肩を貸されて ゆっくりと階段を上がってくる
傷こそ治っているが胴体に巻いた包帯とコルセットが痛々しい
「リクスさん••••••謝って済まないのは分かっています、けれど私には謝ることしか出来ません 本当にごめんなさい」
深々と頭を下げる、今回の事を知っているフューリさんとクゥさんが気を遣ってくれているのか、まだよく分かっていないサラちゃんの遊び相手をしている
恩人の管理人さんも椅子に座ってこちらの光景を見ていた
「これで全員揃ったぞ?アリシア••••••話してくれるな?」
レアさんに諭されて私はそっと自分のコートに手をかけリクスさんと戦った時のワンピース姿になった
しかし、その背の部分は大きく穴が空きその穴から忌まわしい私の漆黒の翼が露わになっている
「既に分かっていると思いますが私は人間ではありません」
全員が神妙な面持ちで私の話を聞いてくれている
「私は幼少の頃、勇者オルバ=ストラヴァーに拾われた悪魔です」
ずっと、胸の内にしまい続けた禍根を洗いざらい曝け出す
「血のつながりこそありませんでしたが本当の親子の様に暮らしていました」
「でも、私は悪魔••••••父は人間、どうやっても埋まらない寿命の壁があります」
「ですから 私は驚いたんです。 もう、亡くなって100年以上経つ 父宛に手紙が届いた事が」
「だから、本当は嬉しかったんです まだ父を知っている人がいると思うと」
「そして、自分の居場所が見つかるかと思うと••••••そんなはず無いのに」
「剣技も魔法も父の真似事に過ぎません、ただ 私には自分でも認識出来ない もう一つの凶悪な人格がありました」
「そのせいで父を傷付けたり 物を壊したりしてその場所にいられなくなり何度も住処を転々としました」
「今回も、それのせいで••••••皆さんに迷惑を」
堪えていた涙が溢れてくる
「とにかく、私みたいなのは皆さんと一緒にいる資格なんか•••ッ! 無いんです」
「•••ッ!•••短い間でしたがお世話になりました••••••ッ!本当に楽しくて•••ッ!•••嬉しかったです!」
言葉の間に嗚咽が漏れ出す
「おねいちゃん?行っちゃうの?」
サラちゃんが泣き出す私を見て遊びをやめてこちらに駆け寄ってくる
「うん、もう、••••••さよならです」
涙を拭い、最後にサラちゃんの頭を撫でて 玄関の扉に手をかけようとした時、
「いやぁ‼︎サラはずぅぅっとおねいちゃんと一緒にいたい‼︎また絵本読んでほしいの‼︎お人形遊びしたいのぉ‼︎」
サラちゃんが膝に抱きついたまま離そうとしてくれない
心がどんどん辛くなって私はまた泣いていた
「おい、アリシア 出て行く必要なんて無いんだぞ?」
リクスさんがレアさんの肩から離れて私の前に立ち、道を塞いだ
「でも、私は••••••」
私の言葉を遮る様に 突然、大きな声で言い放つ
「自分の事が怖いなら自分の中の悪い奴に負けないように"アリシア"が強くなればいいだけだろ!」
驚愕した、私自身が強くなる?
「もし、お前が悪魔に負けそうになったら俺が手を貸してやるさ ダチだからな!」
「ッ!••••••リクスさん••••••ウゥッ!」
いつの間にか私は膝を着き 泣き崩れていた
「それとな、自分の居場所ってのは探すものじゃないんだぜ?」
リクスさんが私の肩に手を置く
とても暖かい手だった
まるでお父様のよう
「自分で作るんだよ」
「うぁぁあぁぁぁぁぁぁあ‼︎あぁああぁぁぁぁあ‼︎」
泣いた
子供みたいに泣きじゃくった
うれしくてたまらなかったのに