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愛のキューピッドは味噌ラーメンと餃子

新キャラドーン!

「あれ?康介くん、今日はお弁当なの?」


薗田葵は弁当を包んでいたバンダナを広げる康介を不思議そうに見つめる。


「鞄に入ってたからな。母ちゃんが入れたんだ」


浦江遥綺が3Gだと発覚した事件から数日間、康介の管轄地域は平穏だった。


「へー、康介くんもお母さんのお弁当食べるんだね」


二つ分のバンダナで机は埋まる。遥綺は午前の授業が終わるやいなや、購買へ走っていったのだった。


「でもよ、弁当って鞄臭くなるよな?俺だけか?」


わざわざ通学鞄に顔を突っ込んで嫌な顔をする。


「ご飯があったかいうちに詰めちゃうからだよ」


「へー、家庭的だなお前」


「このお弁当だって僕が作ってるんだから」


色取り取りの弁当を前に葵は得意満面だ。


「じゃあ俺の分も」


「パン代浮かせるためでしょ。やだよ、面倒くさい」


「そんなんじゃねえよー。同じ釜の飯を食うみたいな奴でさ」


明日からの弁当をかけて葵に迫る康介。一方で購買の列に並ぶ遥綺も、ある男に迫られていた。


「(はーあ、4時限目長引いたせいでこんな後ろの方になっちゃった。康介クンたち食べ終わっちゃうなー)」


廊下の右端にずらりと並んだ人々。携帯ゲームをしながら時間を潰していた遥綺の目の前に、遥綺より少しだけ背の高い(康介程ではない)男が割り込んだ。


「なっ、ちょっと君!パンならちゃんと後ろに並んでよ!」


後ろに並んでいた人々が割り込んだ男を軽蔑の目で睨みつける。


「君、1年B組だよね?」


整った顔立ちの男はサラサラとした髪を揺らす。


「そう……ですけど?なにか!」


思わずいつも通りに非難していたが、彼が見るからに上級生であることに気づき慌てて取り繕う。


「割り込もうって訳じゃなくてさ、お願いがあるんだ。ちょっと来てくれないかな、浦江遙綺ちゃん?」


そういって優しく手を取ると、そのまま列を離れる。


「誰なんですかあんた!僕はパン!パン買わなきゃいけないんですけどー!?」


視線を浴びながら列の外をエスケープする二人。手を引かれるままに誰もいない空き教室に連れ込まれた。


ドアを閉めるとすぐに、両肩を掴まれる。


男がなかなかの男前であることには、向かい合って初めて気づいた。


「な、なななななななんですか!?僕そういうのはちょっとまだ、」


「宇康介君と仲良くなりたいんだ」


「あの、僕、男の人と付き合ったこととかもないし……だから……え?康介クン?」


彼の興味が自分ではなく宇康介に向いていることに、安堵と同時に羞恥心を感じる。耳までほのかに赤らんでいた顔がさらに赤くなった。


「康介クンなら、友達ですけど……」


遥綺の表情は特に気にしない様子で、嬉しそうに微笑む。


「よかった。彼に手紙を渡して欲しいんだ」


「手紙?……それより誰ですかあなた」


「1年A組、南城ま純平だよ」


学ランの胸ポケットから名札を取り出して見せた。


「1年って、同級生じゃん!」


「驚かせてごめんね。それじゃ、康介君にヨロシク!」


そう言って南城は爽やかな春風をまといながら去って行った。


空教室には遥綺と、ハートのシールで留められた子綺麗な封筒だけがのこされた。


「これ、ラブレターだよね……?」





「遙綺ちゃん、おかえりー。パン買わなかったの?」


購買から帰って来た遥綺は手ぶらだった。


「ダイエットじゃねーの」


正確に言うと彼女は手ぶらではなく、後ろでに何かを隠し持っていた。


「はぁ、はぁ、康介クン、事件です!」


二つのランチョンマットの上に手を突く。


「なんだよ。財布スられたのか。金なら貸さねーからな」


「だからパン買えなかったんだ!先生に相談した方が……」


勘違いする二人を無視して先の封筒を康介におしつける。


「なっ……!?遥綺ちゃん、これって」


「ラブレターだよ!早く読んで!」


あからさまな封筒と遥綺の発言に、葵はなにも口にしていないのにむせかえる。


「なんだよ気持ち悪いな。ハブの卵でも入ってんのかー?」


康介はそれを受け取り充分警戒しながら封筒を開ける。中には小じゃれた便箋が入っていた。


「うわーん!ちょっと二人がそういう関係になったら僕はどうなるのさー!」


「なんて書いてあるの?」


葵を無視して便箋を眺める康介を遥綺が覗き込む。手紙の内容はこのようなものだった。


「宇康介君、突然こんな手紙を書いたこと、悪く思わないで欲しい。あまり長い手紙を書くつもりはないので簡潔に書かせてもらうよ。

僕、南城純平は3Gだ。能力は「リフト」、重い物を持ち上げることができる。普段はそれなりに便利な能力なんだけど、僕はこの能力をもっと人のために使いたいんだ。

そこで、ヒーローの君と力を合わせてこの街を守りたいと思ってる。でもそれは君にとって迷惑かもしれない。だから今日の放課後、玄関前で待っているよ。君の答えを聞かせて欲しい。

南城純平」


「ふーん」


退屈そうに便箋を葵に渡す。


「康介クン、どうするの?南城なんとかは仲間にして欲しそうにこっちを見ているよ!」


「ま、使えるものは使ってやらなきゃな」


「なんだ、びっくりしたー。ラブレターかと思ったよ。でもある意味ラブレターかな?それにしても世の中良い3Gの人も多いんだね」


言いながら葵は便箋を綺麗にたたんで封筒にもどした。


「南城クンて僕より強いかなー。強かったら仲間にするのナシね」


「そしたら遥綺がクビだからな」


「ええっ!?で、でも重い物を持ち上げるなんて、地味な能力だよねー!」


「遥綺の気持ち悪い能力よかマシだろ」


「黙って聞いてれば酷いじゃないの。それが命の恩人に対する言葉なの?」


遥綺の財布についていたクマのキーホルダーが野太い声で喋り出す。ツクモだ。


はいはい悪ござんした、と適当にあしらう。


遥綺が机の上に財布を置くと横向きに倒れたクマが一人でに起き上がった。


「それで、話すの?純平ちゃんと」


「まあな。」


「いいよもうそんなのほっとこうよー。仲間のフリして実は敵かもしれないじゃん」


遥綺はクマの頭をいじり回しながら言う。


「だったらぶん殴るだけだ」


ぐるる……と、誰かの腹が鳴る。


「ていうかお腹減ったー。南城クンのせいでお昼抜きだよ」


「あ、じゃりこ食べる?」


葵がカバンからカップのお菓子を取り出すと、遥綺はそれを開けて食べた。


「こんなんじゃ絶対たりないよ。もっとないの?じゃりこ」


「ごめん、一個しかない」


「嘘だー。そんなこと言って、本当は飴とかあるんでしょ」


床に置いてあったカバンを勝手に漁り出す。


「それは俺のカバンだ。第一飴じゃ腹は膨れねーだろ」


「もうだめだーあと二時限も持たないようおうおう」


「だったら罰としてその南城とかいうヤローにラーメンでも奢らせようぜ。帰りにさ」


「それだあっ!!!」







「起立、礼」


一斉にそれぞれの生徒が席を動く。速やかに教室を後にする者や教師に話しかける者。浦江遥綺は友人の席まで歩く者。


「はーやくいこうよー!ラーメンラーメンラーアーメン。味噌チャーシューと餃子ー」


彼女の中での南城純平は既にラーメン奢り男となっていた。


「遥綺ちゃん……まだ奢ってくれるかも分からないのに」


「俺一人で行ってくるからお前らはここにいろよ。どんな奴か分からないしな」


「はーい」




玄関では、1学年のロッカー側面に背をつけ南城純平は康介を待っていた。


「(うわ、あいつか?キザそうで苦手なタイプだぜ)」


「宇康介くんだね。友達は来なかったのかい?」


康介を見つけ、サラサラと髪を揺らしながら歩み寄る。


「まあな。みんなで来るような事でもないだろ」


「そっか。手紙は読んでくれたんだよね」


放課直後の玄関は喧騒に包まれているが、二人の間には幕がはられたように静寂が張り詰める。


「前向きに考えた結果、お前の能力を見てから決めることにした」


「ありがとう。必ず君の力になれる能力だよ。ちょっといいかな」


そういって康介の肩に手を当てる。

反射的にその手を払いのけようとするが思いとどまった。


「康介君、体重はどれくらいかな?」


「この前の身体計測の時は100kgくらいだったか」


ヒーローの体は装甲外骨格、人工筋肉、FCパック(燃料電池)、通信装置などなどあらゆる改造により一般的な人間よりかなり重くなる。身長180cm程度の康介の場合は体重も相当のものだ。


「普通の人ならまず持ち上げるのは難しいね。でも……」


「なっ、」


肩を引っ張って横に倒され、なすがまま、反対の手を膝に回される。


ふわりと体が浮き上がりお姫様抱っこと呼ばれる形になった。


「こんな風にね。どんなに重いものでも簡単に持ち上げられるんだ」


「わかったから降ろせよ!こっぱずかしい」


「ああ、ごめん」


すとんと地に足をつけると、今度は逆に体が重く感じられた。


「どんなに重いものでもって事はよ。例えばこの学校を持ち上げたりとか出来んのか?」


「重さという意味でなら、問題なく持ち上げられるよ。ただし地面に固定されているから現実的には不可能だね」


「そうか。なかなかすげえ奴じゃねえか」


何の気なしに能力を褒め称えると、当然と言ったようににやりと微笑んだ。


「じゃあ、一緒に戦わせてくれるかな?」


「ああ、よろしくたのむ」


想像以上にあっさりと決まり、影で見ていた遥綺が飛び出した


「やー純平クン、お昼休みの時はどうも」


「ああ遥綺ちゃん。手紙、ありがとう」


「そのことなんだけどねぇ〜?お宅さんのおかげで僕お昼抜いたんだよ〜。……どう落とし前つけてくれるのさ」


遥綺が目元に影を落としながら南城を壁際に追いやる。


「えっ、そうなのかい?悪いことしたなぁ……」


「だからさぁ、誠意ってモンを見せて貰わないと困るなぁ〜。南城クン?」


顔を近づけ、喉をなぞった。


「分かったよ。じゃあご飯食べに行こうか?」


「それ奢り!?」


「もちろん。なにか食べたい物があれば言ってよ」


「やったー!ラーメン!ラーメン!」


「ラーメンだね。じゃあ行こうか。いいお店を知ってるんだ」


そう言って南城は振り返る。


「そうだ、良かったら康介君と……」


「薗田葵……です」


「葵君。同級生なんだから、敬語なんてやめてよ。仲良くやろう」


「あ……うん」


葵はそのカリスマ的オーラにすっかり圧倒されていた。にこやかに差し出された右を恐る恐る握ると、そのまま手を引かれ遥綺と南城、三人で並ぶ形になった。


「ついでだし俺にも奢ってみたらどうだ?」


「もちろんだよ康介君。あ、葵君にもごちそうするよ」


「え、ほんと?ありがとう!」


恐れおののいていた葵も、彼とはすぐに打ち解けられる気がした。


「僕ねー味噌ラーメンと餃子なんだよ」


遥綺の意味不明な自己紹介に康介は思わず吹き出した。


「よぉ味噌ラーメンと餃子。ニンニクの臭いがしてないぞ」


「そうじゃなくて!」


いかがでしたか?え?つまらなかった?ご安心を。次回はファイっ!やりますよ〜。だから是非読んでくださいね!え?読まない?そこをなんとかお願いしますよお兄さんお姉さん!そしておじいちゃんおばあちゃんちびっこのみんな!そんなわけで次回!早めに更新します!お楽しみにー(命令)

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