第8話 『友達』との約束は守るもの
第9話です。お気に入りに登録ありがとうございました。今回はストーリー自体はあまり進みません。それでは楽しんでもらえたら幸いです!
で、逃亡記って言うくらいになにから逃げてるんだい?
さっきの話を聞く限りでは、追って来てるのは赤狐だけではないようだ。
俺はてっきり赤狐の求婚がウザくて里から逃げてきたのかと思っていた。
だけどやっぱりとは言っては悪いが俺のような異世界人を呼ばなければならない程の状況に至には赤狐だけでは不足とも感じていた。
一人で撃退してたし、あいつ一人なら逃げ切れん事もないだろうからな。
でも実際のところは、もっと厄介なことらしい。とにかく情報が欲しい所だ。
「...非常に言いにくいのですが、正直に言いますと『なにから』というのは私もわからないのです。」
はいぃ?
分からないってなんで?
逃げてるんだからどこのやつかくらいは検討が付くものじゃないか?
「少し言葉に誤りがありましたね。正確に言うなら追っ手の数が多すぎて把握できないのです。」
え?
「簡単に説明しますと、私は嫁入りの為に、各国・各一族から選ばれた男達から婿を選ばねばならなかったのですが、私は嫌で里を逃げ出しました。」
え??
「おそらく当分は追って来れないでしょうが、とりあえず私はおそらく婚約するはずだった、かなりの婿候補に追われています。」
え???
「そ、それで、ですね。えぇーと、」
え????
「じ、実は私、狐族で...お姫様やってました!」
あ、そう
なんかもったいぶってたから何かと思ったよ
あ、そういえば今の俺の体ってなんか白いな、なんでだろ?なぁ、白露y...
「..............。」
.....え?
「って!なんでですか?!人が決死の覚悟で告白したのに、なんでそんなにいかにもどうでもいいって感じなんですか?!!」
いや、そりゃなんとなく察してたからです。
なんか仕草とかしゃべり方だとか婚約者のイケメン度合いとかで大体わかったよ
まぁ、さすがにお姫様ってのはわからなかったけど
これは本心だった。
ぶっちゃけ最初に赤狐にあった時点でその可能性を考えていた程だ。
「なんか全て台無しなんですけど、しかもイケメン度合いってなんですか?私の緊張返して下さい」
いや、だって赤狐って黙ってればイケメンじゃないか?
無茶言うなお姫様
「やめて下さいよ!」
ハッハッハッハ
からかうと面白いね。
「もう!」
白露はそう言ったあと何かに気付いたように顔が暗くなっていった。
「.......」
ん?今度はどうしたんだい?
沈んだ顔して?
「やはり、私が貴方を呼んでしまったせいで貴方にこれからご迷惑を多々おかけすると思うと......本当に申し訳ありませんでした」
......だからそれについてはさっき許したでしょうが。それに俺をこっちに直接呼んだのは君じゃないだろ?
悲しみを敷き詰めたかのような顔をこちらに向けている白露に向けて俺は言った。
「しかし発端は私の理由です。ですから責を受けるのも私であるべきです。」
俺の言葉を返し、そう言ってのけた白露の姿は、まさに上に立つものの風格を持っていた。
そして白露は地面に膝をついて手を前の地面に置いて頭を下げた。
所謂土下座である。
「本当に、いえ、真に申し訳ありませんでした。なんなりと罰をお与えください。」
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はっはは、
...本当に律儀な娘だねぇ。
どっかの世界には、普通に自分勝手な理由で異世界の人間呼び出しといて”勇者よ、魔王を倒すのだ”とかなんとか言って無駄に高い所でふんぞりかえってる王様とかもいるというのに。
まぁ、魅力的な事だとは思うよ?
だって目の前の美少女が、言い換えるなら”なんでもします”と言っている状況だよ?
普通の男なら結構喜ぶシチュエーションじゃないかな?
...でもなぁ、なんか俺には空虚な感じがするんだよなぁ
なんかこの状況に良く似た状況を知っているからかな?
あれは、確か夢の中で泣いてる小さな女の子にあった時だな。
まさにこの状況はあの時の再現のように感じる。
あんときの俺は、端から見たらロリコンの変質者だったかもしれんなぁ
だって他人から見たら幼女に覆い被さってる青年だぜ?
見られたら警察直行コースだわ
ん?.....あれ!良い事考えた!
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よし、そこまでいうなら言おうかな
「はい、なんなりと言って下さい」
それでは、
また同じ台詞を同じシチュエーションで繰り返す
『俺と友達になってよ』
「え?」
白露が呆然と言った感じで顔を上げ、こちらを見ている。
おそらく予想外過ぎる言葉にしばし硬直してしまったのだろう。
さっき白露に言った事だが俺はもう白露に怒ってはいない、むしろその姉達に今後会ったら説教を食らわすつもりだ。
まぁ、説教と言っても安易に俺みたいなのを増やさないように注意する程度のもんだが
ひょっとしたら感謝の言葉がでるかもしれない。
まだ会ってから10時間たってるかどうかすら分からないが、白露と居た時間はかなり楽しかったし人間時にたいした友人もおらず、親から勘当されていたため、ぶっちゃけると元居た世界に全く未練がない。だからここに呼んでくれた事に逆に感謝しているところがある。
しかもこんな美少女と会わせてくれちゃいましてもう万々歳ですよ。
俺がその美少女に憑依していなければ...
といった感じで、彼女が罪の意識を感じる理由は無いはずなのだが彼女は今土下座をしている。
だから『友達』になろうと言った。
こんなロリコン変質者と友達になる。
これほどの辛い罰があるだろうか。
いや、無いね!
と思っていたらやっと白露が覚醒した。
「え?とも、だち?ですか?」
うんそう
「あの、それは罰にはならないのでは...?」
何を言ってるんだ。これは紛れも無い一級の罰だよ。まずこの罰の最大の苦痛は俺というロリコン変質者のレッテルを張られたやつが友人になる事で隣に立つものは精神的なダメージを日常的に受ける事になる事だ。そして周りから俺と同じように疎外されていき最終的には...
「あ、もういいです」
なんか遠い目を向けられた。
しかしやっぱり止められるのな、まだあったのになぁ理由
「変わらず長いですね。もしやこれを聞く事こそ罰なのでは?」
なにやら酷い事を言っている白露、しかし顔を見てみるとさっきまでとは違いどこか楽しげだ。
「それで、この罰を選んだ本当の理由はなんですか?」
ん?さっきの説明聞いてなかったのかい?いいかい?この罰は...
「それはいいですから、真面目に答えて下さい」
.....はぁ、結構真面目にやってるんだけどなぁ、えーと、本当の理由ってほど大層なもんじゃないけど前になった友達が君と同じような状態だったから助けたいと思ったから...後は個人的に約束を守りたかったからかな
そういって白露を見てみると少し笑っていた。
なんだよ、どうせ笑うんならもっと笑いなさいや。
「いえ、貴方にそこまで思われているその人が少し羨ましくなります」
はい?何故に?
「ふふ、内緒です」
ふぅ、まぁいっか
で、君は友達になってくれるのかな?
「はい、喜んで。今日この日、貴方の友達になれた事、とても幸運に思います」
「これからよろしくお願いしますね、ハル」
あぁ、こちらこそよろしく。
この場面でその笑顔は反則だと思うがな...。
あと、いきなりの名前呼びはビックリしたよ
はぁ、ほんと、奇麗だねぇ
顔が少し赤みがかったかな?
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