第6話 自分の世界に入ったら独り言って言いません?
第7話です!少し時間がなく最後のside村長は今日中に仕上げて投稿します。引き続き狐の嫁入り逃亡記をよろしくお願いします!
山賊撃退?後、俺達《正確には私が》は村の人達から盛大な歓迎を受けた、...多分。
果たして油揚げを村中から投げるようにもらうのは歓迎されたと言えるのだろうか?
むしろ嫌がらせじゃないか?
ちなみに俺はうれしくない、身体中ベタベタにされてうれしいわけがない
今は宿に案内されて一応は奇麗になったがさすがにこれで全面的に喜ぶ人はいないだろう...
《ヤッホウィ!!ハルさん、見て下さいよ!こんなに油揚げがぁぁ、夢のようですぅ!!!》じゅる
あぁ、確かに人ではなかった。
なんか奇声を上げてる人外ならここにいた。
というか白露よ。ヤッホウィって.....キャラが崩れてるぞ。
そんなに目を輝かせて涎が出るほど好きなのかい?油揚げ
《はい!大好物です!!これ一枚さえあれば三食いりません!!!》
量より質の極限みたいな娘だな。
この娘の将来がものすごく心配になるよ、本当に
まぁ、俺が今体の所有権持ってるから、俺が食はないと始まらないんだけどね。
《そうです!さぁ!!じゃんじゃん食べて行きましょう!!!》
え?あぁ、あとでね。その前にこの近辺の情報を村人に聞かないとな。
《そんなぁ?!殺生な事言わないで少しで良いので食べましょうよぉ!》
だから後で食べるから少し待ってなさい。
《いや!耐えられません!せめて一切れだけでも!!お願いします!!それでなんとか耐えますからぁ!!!》
...食べ物だけでここまで人格って変わるものなのかねぇ。
なんか頭の中で土下座する勢いで懇願して来るとは、...大丈夫かな?この娘
はぁ、まぁ一枚くらい良いか
とりあえずこの部屋に山のようにある油揚げを処理するのも必要だしな
...というかこの量の油揚げをどこから出しているのか激しく気になるところであるが。
《さぁ!速く早く!!いっちゃいましょう!!!》
「はいはい、分かりましたよ。」
油揚げの山の中から一枚すくって口の中に運んだ。
「いただきます」
ッパク
もぐもぐ
《あぁ、幸せですぅ、この旨味、この舌触り、どれをとっても最高ですぅ//》
そんなにうまいかねぇ?これ
俺の意思とは裏腹に白露の意思が反映されているのか顔が満面の笑みに変わっていく
「失礼します。狐様、この部屋はいかがで、...え?」
ちょうどそんな時に村長らしき人と付き人の村人二人が部屋に入ってきた。
なぜかこちらを見て呆然としている。なんか顔も赤いし、酒でも飲んだのかな?
「あの?どうかなさいましたか?」
「え?...ああ!いえいえ。失礼いたしました。儂はこの村の村長をしているものです。さっきはあまりにお奇麗だったもので年甲斐も無く見惚れてしまいました。」
おやおや、社交辞令がうまいことで
「ふふ、それはありがとうございます。そういえば油揚げをこんなにたくさんくださってありがとうございました。とても美味しいです。」
主に白露がだが
「それはよかった。気に入って頂けたなら何よりですじゃ。村の皆も喜びます。」
「しかしこんなにもらっては悪いでしょうしある程度は村の皆さんに返した方が良いのでは?」
《な、何を言うんですか!?そんなもったいない事しなくて良いじゃありませんか!!?》
そんなに食いたいんかい、君は。
案外意地汚い、というかケチだな。
《大好物が目の前にあったら我慢出来ないのはとうぜんでしょう?!》
いや、当然じゃないわ。我慢を覚えなさい、我慢を
《いいじゃないですかー!》
駄目だ。我慢しなさい!
「いえいえ、山賊を撃退してくれたお礼ですのでおきになさらず」
《ほら!村長さんもそういってることですし!!》
っち!今回は了承があったから引いてやるわ。
《では、さっそくまた食べましょう!》
気が早い上に村長達の存在を忘れるな!
まだ聞きたい事はあるんだよ。
「そうですか、ならありがたく頂戴します。ところであのような山賊は頻繁に出て来るものなんですか?」
「いえ、あのような事が頻繁に起これば村は維持出来ません。今回は狐様に助けて頂けて本当に助かりました」
頻繁にはなかったということはあの山賊達がここをターゲットにし始めたのはここ最近ということになる。そして今日は村を襲う準備の為の偵察。
「あの、狐様?」
《それなら、おそらくですが明日か明後日辺りにまた襲撃がくるでしょう。戦力を増加させて》
...いきなり正常に戻るなよ。ビックリするだろうが
で、そのこころは?
《私はいつも正常です。理由は時間をおくといくら村人とはいえ何らかの対抗策を立てられてしまう恐れがあるためです。短期間で勝負をかけにくるでしょう。》
「......」
そうだね。俺の場合は明後日かな。相手にも準備があるし、十分な休息をとって挑んで来ると思うんだよね。まぁ、戦闘なんてやった事無いから素人の考えだが
《そんなことはありません。意見を言う事は大切なことです。ところで聞きたいのですがハルさんは、山賊を倒そうとしていますね?》
「....白露」
なんで、いやそうだけどわざわざ聞かなくても察してほしかった。
結構恥ずかしいんだよ。なんか決意を他の人に言われると
《いえいえ、確認ですよ。そういうことなら私も全力で取り組みましょう!ここの人達は油揚げをくれる良い人達ですから!!》
判断基準やっぱそこ!?
さっき正常って言ったけど取り消すよ、まったく最初の油揚げの時となんも変わってないわい
まぁ、白露が力をかしてくれるなら楽に終わりそうだな。
《えへへへ、そうでしょうそうでしょう》
一つ今日分かった事がある、俺の今現在の体の顔の表情は白露の感情に大きく左右されるようだ。
今だって俺が必死に抑えて照れてる顔をなんとか小さい笑みに繕っている。
これからがかなり心配である。
とりあえず山賊を潰すのは明後日だな。
その間、山賊がどんな動きをするのかにもよるが明後日に向けて作戦でも練るかな。
なんか台詞を言うなら
えー、山賊共覚悟は良いか、
「...聖戦の始まりだ」
な〜んて、気分は騎士みたいな......。
《......》
...言ってて超恥ずかしい、死にたい。
あ、村長さん達放置しちゃってごめんなさい。
オマケ
〈side村長〉
儂の名はフルジ・ルーツ・アバナ、このアゲ村でしがない村長をやっとるものじゃ。
今儂は村で一番大きい宿の廊下をお供二人と歩いておる。
理由は山賊に村が襲われそうになった時に突如として空から現れ、我らを救って下さった銀色の髪をした狐族の方の様子を見に行く為じゃ。
そしてあともう少しでその方の部屋のドアが見えるところで油揚げの重いにおいが香った。
「...うっ」
お供の一人がこの臭いに呻いた。
我が村は他の村と比べ狐族との交流があるため油揚げが常備されている。
今回はその油揚げをお礼代わりに狐様に差し上げている。
しかしさすがに部屋の一角に積まれる程の量の油揚げは迷惑だったかもしれんな。
ここまで臭いが漂って来るとは…
速く部屋に行ってお詫びしなければ
「少し急ぐぞ」
お供二人にそういい、早足で部屋に向かった。
部屋の前に着くと声が聞こえた。
『いただきます。』
どうやら油揚げを食べていらっしゃるようだ
それなら少し失礼じゃが、ちゃんとした挨拶をさせていただこうかの。
でもまずは部屋の事を聞いておこうかのぅ、無礼があったらいかんし
では、とドアを開けた。
「失礼します。狐様、この部屋はいかがで、...え?」
儂は固まった。お供二人も同じようだ。
部屋に入ったらすぐに話しかけようと思っていたのにそんな事はすぐ頭の中から消えてしまった。
なぜなら部屋に入って見た狐族の娘は......美しかったからだ。
ただ美しい満面の、極上の笑み。部屋の光が反射して一層奇麗に見える銀髪と合わせれば神々しささえある。
反則じゃろ、これ。
儂らはまさに見惚れてしまっていた。そんなときその見惚れている対象から声がかかった。
「あの?どうかなさいましたか?」
はっ!?
目が覚めた感覚だった。まるで夢の世界にいたかのような...
しかし儂も村を預かる身なのでなんとかとっさに返答した。
「え?...ああ!いえいえ。失礼いたしました。儂はこの村の村長をしているものです。さっきはあまりにお奇麗だったもので年甲斐も無く見惚れてしまいました。」
これは紛れも無い本心だ。
「ふふ、それはありがとうございます。そういえば油揚げをこんなにたくさんくださってありがとうございました。とても美味しいです。」
簡単に流されてしまった...。おそらく自分の美しさには無頓着なのだろう。
しかし油揚げは迷惑でなかったようで一安心じゃな...
しかもお礼まで、最近ではなかなかみない礼儀正しい方じゃな。
そこから話したかぎり予想よりかなり礼儀正しく謙虚なかたじゃった。うちの孫の嫁に、いやむしろ儂の...
...何故じゃろう?ものすごい寒気がするのは
まぁ、さすがに冗談じゃが。ん?寒気が引いた、なんじゃったんじゃ?
しかし、狐様はどうされたんじゃ?山賊の事を儂に聞いてからなにか考え込んでるようじゃが
そういえばこの方の名前をまだ聞いてなかったな
でも今はなにか考えているようじゃし聞かない方が...
「....白露」
!?
もしや今のは名前じゃろうか?ならばまさか儂が考えている事を察して!?
そうだとしたらこの方は高位の位置にいる方なのかも知れぬ
こうみえても儂はこの村に来る前は少し法術をかじっていた、そのためにそんじょそこらの人外に己の心情を察せられる事は無い。
まぁ、この法術、人間相手にはまったく効果がないのが難点じゃがな...
ん?白露?...確か狐の一族の姫君の中にそんな名前を持っているものがいたような...?
いや、無いのぅ、確か姫君は嫁入りしたと言っていたしこんな所にいるはずが無い。
おそらくは儂の記憶違いじゃろ
しかし今回の山賊の件は、どうするべきか
おそらくまた近いうちにこの村を襲いに来るじゃろうし...
だからといってこの方をわざわざ危険に巻き込む訳にはいかんから滞在を頼む訳にもいかぬし
...仕方ない、いざという時は儂も奥の手を使う事になるかな
そう思った。
だが、他の村人は大丈夫だろうか?とも思ってしまう。奥の手を使って勝っても何人かその前に死んでしまうのではないか?そんな思考が回ってきてしまう。
なら、そんな未来が起きないよう儂が村長としてする選択は、最良の選択は、この方にいてもらう事ではないのか?
狐族一体がいるだけで普通の人間の30倍の勢力にはなる、ならば!
...なんて事を考えてしまう。
ふふ、儂もかなり疲れているのかもしれんな。
そう儂が自嘲気味に考えているとある声が、救いの声が聞こえてきた。
「聖戦の始まりだ」
...あぁ、この方は儂の考えなど最初から読んでなさってたんじゃな
その自信に満ちた笑み、年甲斐も無く熱いものがこみ上げてきそうじゃわい
しかし何故このような少女がここまでの読みを出来るのか...複雑な事情があるのかもしれんな
じゃが、儂もどうかしたかのぅ?
この少女のためにこの命、使うのも面白いかも知れんな
なんて考えてしまうのは...
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