第41話 幻術
本当に間に合わなくて申し訳ありませんm(_ _)m
薄暗い、壁の端に僅かにロウソクの火がともっている廊下。
しかもどことなく湿っていて居る気もないが正直何もなくても長くは居たくない環境である。
ビュオッ!!!
そんな廊下を風を切る音を出しながら俺は子狐モードで駆け抜ける。
風のように駆け抜けるというのはこういう感覚なのだろう。
………しっかし本当この廊下湿度が高いな………何か毛がべっとりして気持ち悪い。
今後この姿になるときはこういう周りの事も考慮に入れなきゃな……元に戻った時大変だ。
………え?それなら手っ取り早く人型に戻って走れば良いんじゃないか、だって?
何故人型に戻らないのかっていうのはもちろん白露がこの姿でいてくれと言ってきたから…………ではもちろんなく、まぁ、実際にあったが断った。
本当の理由はかなり単純な物でただこの子狐モードの方が足が速い、これに尽きる。
もしかして俺があの檻から抜ける為だけにこの姿になったとでも思ったかい?…さすがの俺でもあそこ出る為だけに白露の餌食になりそうなこんな姿にならんよ。
実はあの赤狐の空間をこの子狐モードで動き回った時に気がついたんだ……あれ?この姿の方が動き速くね?……と。
………偶然だった、本当に偶然だった。
あの空間に居て得た数少ない有用性のある発見………本当に数少ない。
今のこの言葉にはものすごい哀愁が漂っていたと自身でも確信出来る。
………まぁ、そんな理由で今は人型に戻らずこの姿で走ってるわけだ。
周りの景色があまり変わらないからどこまで進んだかいまいち分からないが体感ではかなり進んだと思う。
………本当は詳しい距離を知りたいなら白露に聞くのが一番てっとり早いのだが……。
俺は顔と目線を少し後ろ辺りに居る白露に気付かれない程度に軽く向けた。
そうして見るとそこには………………………………………ものすごく場違いでオーラが凄い白露の姿があった。
特徴を言うなら笑顔、さらにそれが俺にむいていている事。
具体的にはなんと言うか……仏の顔、つまり悟りを開いたかのような自然な笑顔。そのせいか地下にも関わらず白露の背後に後光らしき物が見える………幻視はさすがに……俺ももう限界なのか。
走りながらそんな事を思う俺に気付いたのか、はたまたただ俺に突発的に言おうとしたのかは分からないが白露が話しかけてきた。
《しかし……やはりハルはそのかわい……コホンッ…子狐状態の方が速いですね。もう私でも戦闘になれば目で追うのは難しいかもしれませんね、師匠として微笑まsゴホンッゴホンッ……誇らしい事です》
どうやら後者らしい。
………多分、現在の俺の評価をどことなく教えてくれてるんだろう……しかし、ありがたい事なのだが咳き込みが激しい所が色々台無しにしてる気がする。
それにしても………この子狐モードそんなに速いのか………さっきから景色が全く変わらないから全然距離感が掴めないのだが……しかも走ってる本人である俺は正直、今どのくらいの速度なのか分からない(風圧だけは感じるが)……白露の話ではとりあえず人が目で追える速度ではないらしい。
……それなら、
白露、少し速度を上げるよ。
一応どのくらいの速度まで加速出来るのか試す為に俺は白露から目線を外しつつそう告げてさらに速度を上げた。
幸いまだ余力はあるのでリンクを見つけて敵と戦闘になっても問題はない。
そう思った最中廊下のある一点を走り抜くとどことなく違和感を感じた。
…………なんだ?何か辺りが妙に冷えたか………しかもなんだろう、この静かすぎる感じは…。
地下なので静かなのは分かりきっているはずなのにそれにすら違和感を感じた俺はひとまず白露にこの違和感の事を聞くべく心の中で話しかけた。
白露、具体的には言えないんだけど何か辺りに違和感を感じるんだが……。
……
白露から返事はない。
油揚げ…。
……
……これで返事がないという事はもしかしたら白露もこの状態に気付いてまたヘブン状態になっているのかもしれない。
そうため息まじりに思いながら俺は再び視線を白露に合わせるべく後ろに顔を向ける……すると。
俺の足は止まった。
その速度ゆえか地面をガガガガガガガガッ!!!!と削りながら思わず止まってしまった。
本当ならここで自身の速度について感心する所だが………今はそれどころじゃない。
白露が居ない。
冗談とか霊体化をして姿が見えないとかそんなもんじゃない、本当に居ない。
冗談ならさっきからしている呼びかけにいい加減応じるだろう、霊体化しているなら何かしら繋がりを……つまり気配を感じる事が出来る……がそれも消えている。
何故気付かなかったのか…………さっきの違和感は白露がいなくなったから?
……しかしいきなり何故?まさか敵が白露と俺を分離させる特殊な術を罠として仕掛けていたのか?
……………いや、それは無理だろう。
術を発動した様子は確認出来なかったし、第一そんな特殊な術が万が一あったとしても白露が消える理由にはならない。
この体の異物はあくまで俺であって分離するやら消えるやらするなら俺のはずで……つまり白露がこの体に戻ってなければおかしい。
なら………………この異常はなんだろう?
何か変化してないかと周りを見回しても景色は変わらず地下の左右にある壁と長い廊下が広がっているだけだ。
……………もしかして違う空間に取り込まれでもしたかな。
白露や赤狐、それに……黒結晶お姉さん、それぞれのあの空間には個々に独特の雰囲気があった。
今のこの場にはそれに似ているけどやはり違うそんな感じがする。
……違う所と言えばその空間の主が目の前に居ないって所。
俺は再度周りを見ながらそう観察する。
ーーーーーーーーーール
………………これはどう考えても、ってうん?
ーーーーーーーーaル
この声って………まさか白露!?
今聞こえたのは確実とは言えないまでも7割がた間違いなく白露の声だ。
しかしどうやって、もし俺の予想が合っているなら………どうやってこの空間に干渉を、グパハッ?!
ーーーハル!
思考の途中、だがしかしさっきまでどこかかけて聞こえていた声がやっとはっきり聞こえたと思ったら顔の下、顎に激しい痛みを感じさらに衝撃で現在小さいが故に体が浮いた。
………感触と衝撃を受けた場所からしてアッパーであろうことが予想出来るが……一体どこから来た攻撃だ?!
正面からの攻撃なんて……動揺していたとは言えさすがにそこまで警戒は解いてない。
しかも俺が意識がありこんな事を思考する暇があるという事は敵だとしてもそこまで強くないという事、いったいどうやっ…………………あれ?
そんな感じで思考を拡大していた俺に攻撃してきた敵の姿を見ようと目線を下げた結果、まだ子狐モードで空中に浮いている俺の目に映ってきたのは見た事もない敵の姿ではなく腕をアッパーをした形で振り抜いている白露の姿だった。
〜ところ変わって城のどこか〜
コツ コツ コツ
「…………………ん」
そこには煌びやかに輝きすぎる廊下を何故かボロボロになっている男を担ぎながら歩く少女の姿があった。
しかし少女は何かに気付いたかのように歩くのを一旦止め、後ろを軽く見ながらどこか遠くを見つめている。
何秒かその状態でいると少女は少し笑ってなんだか嬉しそうに呟く。
「ha……………………………破られちゃった」
そう言うと少女は視線を元に戻し何事もなかったかのように歩を進めた。
しかし少女本人も気付いていないが少女の歩く速度がほんの少し上がっていた。
《まったく、突然止まった上にボーっとして私の話を聞かないのでどうしたのかと思ったら敵の攻撃を受けてたんですね》
改めて白露の話を聞いてみると俺が白露が居なくなった事に困惑していた時、白露サイドでは俺がいきなり止まって、白露が俺にアッパーを浴びせるまでまったく動かなかったとのこと。
………敵の空間に取り込まれてたからか?
白露、もしかすると俺がそんな状態になったのは修行をする時白露が造る空間みたいな物に取り込まれたからって可能性はないかい?
俺は敵が罠を仕掛けていてあの空間に精神だけ取り込まれたと考えて白露に聞いてみた。
やはりこういうのは空間を制作した事のあるのある奴に聞くべきだろう。
《………いえ、私が鉄拳、もとい介入出来たという事は空間製作の術ではないでしょう。…考えられるのは幻術、でしょうね。おそらく廊下のどこかにきっかけとなる魔方陣などの仕掛けがしてあったのでしょう、その点を言えばハルの予想は合っていると言えます》
………あれが幻術か。
アニメとか漫画では良く聞くけど実際に掛かってみるとまったく気付かんかったな。
…………今度の修行ではもっとこういう系の耐性をつけるようにするか。
《しかし、まいりましたね》
白露が少し声を低くして廊下の先を見ながら言う。
しかし俺は白露のそんな様子には気付かず反射的に言った。
ん?何が?
《この類いの仕掛けをする幻術の使い手は大抵感知系のトラップも同時に仕掛けます。………つまりここを通った事はもう敵に知られている可能性が高いのです》
という事は?
《すぐにここを出発しつつ速度を上げなければリンクさんが危険でs、》
白露の話の途中、俺は瞬間的にとにかく凄い反応で走った。
すると目の前の廊下の先には一筋の光が指しているのを確認出来た。
………さっきは幻術のせいでまだまだ距離があるかと思っていたため拍子抜け、とは違うが体の力が抜ける気持ちになるな。
俺がそう思っていると置いてきてしまっていた白露が霊体化しながら俺の横に追いついた。
………目で追えないとかってもしかして嘘じゃないだろうか?
《…………あと一文字くらい聞いてくれても良いではありませんか。まぁ、リンクさんが危ないのですから急ぐのは否定はしませんけど》
白露がむくれながらそう言うが一応納得はしてくれたようだ。
とりあえず、
そう言ってくれるとありがたいね。
俺はそう言いながら速度を上げる、白露が追いつけないくらいを目指して。
………………それで何故
「ふぅ〜、んん?何であるか、この生き物は?」
こうなってしまったのか?




