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狐の嫁入り逃亡記  作者: カラネコ
第2章 聖からの脱出
60/70

第35話 魔力

 sideアミア 


 ムジャパティ様もといヴァハ様と感動の再会?を果たし改めて友達になった私アミアなのですが………口調も昔のものに戻ってしまいました。

 ……あ、いえそうではなく、確かにそれもそうなのですが……それとは別に現在困っています。

 それは…


「行きましょうとは言いましたが敵がどこにいるのか分かりません」


 そう、宣言したのはよかったのですが私は辺りに敵の姿が見えないので途方にくれています。

 少し格好をつけながら言ったので今更ながら恥ずかしさで私の頬が少し赤くなる。

 そんな私の頭上から声が聞こえる。


『おそらく急に動きを止めたアミアを警戒して隠れたんじゃろう』


 今は赤い水晶の輪っかの姿ですがヴァハ様はやはり頼りになります。

 私の言葉に的確に応えてくれますし…仲間がいるだけでもここまで安心感が違うものなのですね。

 ……それにしてもなんだか懐かしい感覚です。

 ヴァハ様と話す事もそうなのですがなんだか自身の体内にある魔力が大きくなっているような気がします。

 体は軽く感じますし……言うなれば全能感に満ち満ちています。

 まぁ、そんなことでは調子には乗りませんが……しかしこれは一体…?


『今自身に宿っている膨大な魔力が疑問かの?』


 思考を読むかの如くヴァハ様が私に言った。

 いや、今まで一心同体だった訳だから精神的には繋がってるのかな?

 それだと…まさか私の個人的思考が筒抜けに!?


『言っておくが思考は読んでおらんぞ。まぁ、軽い感情の変化くらいなら感じ取れるがの。それより魔力、気になるんじゃろ?』


 その返し方だと思考を読んでいるようにしか聞こえませんよヴァハ様。

 タイミングが良すぎます。

 このように色々ツッコミたい所はあったが私は魔力の事が気になったのでとりあえず首をコクンと縦に振った。


『まぁ、そうじゃろうな。しかしそれに関しては安心せい、その魔力は元々アミアが持っていたものじゃ。それが元に戻っただけじゃよ』

「私の、魔力ですか?」


 実感が湧きませんが小さい頃の私というのはここまで大きな魔力を持っていたんですね。

 さっきまでの私も人間にしては魔力はかなり高い方だと思っていたのですが元々がそれ以上とは驚きです。

 しかし……そもそも私はなんでこの魔力を封印したんでしょう?契約の代償でしょうか…?

 ……この辺り(おそらく契約時)の記憶が未だ曖昧なのは何故なんでしょう。

 私自身が幼かったせいでしょうか?


 そんな事を次々と疑問に思う私に補足と言わんばかりにヴァハ様が言う。


『そうじゃ、妾の記憶とともにお主の中にはお主の魔力さえ封印されておったのじゃ。一度封印が綻んで魔力が漏れた時、一時はどうなるかと思ったわい』

「魔力が漏れたとき……?…………あ」


 思い出すのは黒鎧と戦った時に起きた魔力の増加。

 てっきり精霊様の、もといヴァハ様の力なのかと思っていましたが……。


『…気付いておらんかもしれんが妾が咄嗟に【ハイメテオ・ブレイク】を発動しなければお主最悪死んでおったぞ』


 …………………………え?


『そりゃあ、まだ妾という容量をとるものが中に居ったわけじゃからなぁ。どこかの世界で言うオーバーヒートというもんが起こりそうになっておったんじゃよ』

「……察するに魔力を受け止めきる器がなかったせいで漏れた膨大な魔力にさっきまでの私の器では耐えきれなかったんですね」


 オーバーヒートとと言う言葉の意味は分かりかねますがこの状況を考えると似たような意味の文献を読んだ事があります。

 確かに私があのとき使おうとした魔法【アースボール】とヴァハ様の【ハイメテオ・ブレイク】では使う魔力量が桁違いでした。

 あの時の私は増大した魔力のせいでその減りように全く気付きませんでしたが…………って。

 という事はさっきあの爆弾男に撃とうとした【ハイメテオ・ブレイク】は、………ある意味気絶させてもらえてよかったです。もう少しで自爆する所でした。


『ふむ、まぁそんな感じじゃ。自爆せんでよかったのぉ。敵とは言えあのアイアンって男に感謝するんじゃな』

「アイアン?」


 あの爆発男の名前ですよね?

 しかし何故ヴァハ様は知ってるんでしょう?

 私が意識を失っている時に名乗り出もしたんでしょうか?私気絶してましたけど。


『む、自身の名を聞いて少し反応したか。アミアよ、楽しい談笑の時間は終わりのようじゃ』


 そう言うとヴァハ様は今は私に生えている赤い水晶で出来た2枚の羽を操作し折って盾のように私の目の前に配置した。


 キンッ!キンッ!!ピンっ!!!


 羽で目の前は見えないが水晶と何かが弾け合う音は聞こえた。


『…どうやら威力重視ではなく銃のように小さく速く確実な方を選択したようじゃな。しかしさっきまでのアミアならいざ知らず、今の妾が付いたアミアにそんな水鉄砲みたいな爆発が通じるものか』


 翼を開きながらそういうヴァハ様。

 ………一応翼は私に生えているので感覚はあるのですが、何でしょう?この背中に新たな腕がついたような感覚は。

 試しに腕を動かす感覚で少し動かしてみると……少し動かそうとするだけでかなり力が要りました。

 ………私が制御するにはまだ時間がかかりそうですね。

 そんなふうにヴァハ様の邪魔をしない程度に翼を動かす練習をする私に次の瞬間ヴァハ様の予想外な一言が襲う。


『さて、早々に逃げるかのぉ。』

「…………え!?逃げるんですか?!」


 私は驚いて顔を上に向け頭上の水晶の輪っかを見つめる。

 正直ここであのアイアンという男を捕らえると思っていた私は驚きで目を見開く。

 そんな私を確認するとヴァハ様は少し呆れたように説明を始めた。


『よいか?爆発魔法の利点はその威力もさることながら特に目立つ事にある。まぁ、これはアミアも知っていようが詰まる所爆発魔法は敵を翻弄する良いパフォーマンスになると同時に味方に自身はここにいるという事を教える目印にもなる。……もう言わんでも分かるだろうがつまりここにいればいずれあのアイアンという男の仲間が来る可能性が高いのじゃ。それでも…ここで戦うかの?』


 気迫のこもった声色で私に問うヴァハ様。

 ……ヴァハ様は私の事を心配して逃げるといってくれていたのですね。

 確かにここに居ればどんどん強力になっているアイアンの爆発を不審に思って仲間が来てしまうかもしれません。……いくらパワーアップしたとは言えヴァハ様はともかく私は前と同じ経験不足も良い所、このままでは足手まといでしかありません。

 ……でも私は、


「explosion LV10」


 私がヴァハ様の言葉に付いて考え結論を出そうとした瞬間、突然目の前から声がしたと思ったら不意に私の視界は光で埋め尽くされた。




 sideoutアミア








 南門の前の森の一角では激しい煙となぎ倒され焦げた木々が散らばっている。

 地面は黒く焼けこげ、中心にはまだ治まりそうにない煙が朦朦と立ち籠め半径50mくらいにはまともに立っている木が一つもない状況。

 そんな惨状の中心めがけて歩いてる男の姿が一つ。


「ふぅ、今度こそ仕留められやしたかね?かなり魔力を練った爆発魔法だったから……………やべ、ここまでしたらボスに怒られやすかねぇ…………どう言い訳しようかな」


 男はやる気のなさそうに、疲れきったように怠そうに現状を見ながらゆっくりと煙が立っている惨状の中心へ歩いている。


「さて、出来ればこれでくたばるなり重傷を負うなりしてくれてるとあっしとしては助かるんだけどねぇお姫様」


 怠そうな男アイアンは独り言にしては流暢に、まるで目の前の煙の中に誰かがいるかの如くその方向をずっと見ながら語りかける。

 そうすると煙の中心から煙を割るようににして突風が発生した。

 それにより煙は八方に霧散し煙のあった所にはまるで天使のような姿をした少女が立っていた。

 しかしシルエットは天使といっても良い少女だが実際は大多数のイメージする天使とはかなり異なった姿だ。

 光の輪っかの代わりに赤い水晶の輪っか。純白の羽の代わりに赤い水晶で出来た羽。金色………人それぞれだが赤い瞳、天使にしてはかなり強烈な色合い、赤一色だ。

 それを見てアイアンは冷や汗を流す。


(やっぱ生きてやしたか、見た感じ外傷もほとんど無し。やばいッスね、どういうわけかさっきとは違って完璧に自身をコントロールしてなさるようだ…。さっきの獣みたいなのだったら今ので終わってたんッスけど……一応あの羽の射程圏外にいる事はいやすが……もう任務自体は終わってるようなもんだし………逃げ……………逃げられやすかね?あっしが)


 もう既に逃げ腰のアイアンはふと天使の少女アミアの方から何かを呟いているのが聞こえた。


「ヴァハ様、さっきの返答ですが…、」


(ヴァハ?人名か?………というかなんかどっかで聞いた事があるような……そうそう、確かボスとハルトマンが二人で話してたのを聞いた時に何かそんな名前を言ってたような気が………する?)


 なかなか古い記憶だったのか、それとも元々言っていなかったのか定かではないがとりあえずアイアンが思うのは何故そんなことを今言うのかということだ。

 見た所ここにいるのはアイアンとアミアのみのはず。

 ここに第三者はおらず、感知しても確認出来ない………アイアンは疑問を解消出来ないでいる。

 そんな中、アミアは顔に笑みを浮かべながらこう言った。


「はい、戦います」


 一見宣戦布告ともとれる発言をしたアミアはその後しばし何かをその場で呟きゆっくり手をアイアンに向けた。

 アイアンは戦闘態勢に入りいつでも反撃・逃走が出来るよう魔法を組み立て終えていた。

 予想としては翼の攻撃かハイメテオ・ブレイクのような魔法が来るだろうと身構えていたアイアンだったがふと不可解な事に気付いた。

 アミアの目がアイアンを見ていないのだ。

 むしろアミアとアイアンの中間点を見ているかのようだ。

 

 しかしアイアンのそんな疑問は解せず、アミアが一言。


「explosion LV1」


 アイアンの魔法を呟きながらアミアは中指と人差し指をピンッと弾いた。


 次の瞬間、さっきアミアが見ていたであろう中間点の空間が歪んだ。

 しかしそれを見たアイアンが次に五感で感じたものは世界を覆いそうな光と鼓膜が破れそうな音、そして、抵抗すら許されない程の衝撃。

 轟音が鳴り響く。


 辺りは核の炎に包まれた。


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