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狐の嫁入り逃亡記  作者: カラネコ
第2章 聖からの脱出
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第34話 謝罪

 side勇者


「………」


 今、僕は猛烈に頭が痛い。

 頭が痛いと言っても物理的なものだけ(・・)では無く目の前の現状にだ。


「ん〜、しかしここにも旦那様はいらっしゃらないのね。まぁ、ゆっくり探して行きましょう。運命はわたくしとあの方を巡り会わせるから」


 今2番目に会いたくない人物。


「てか勇者、これどういう状況だよ。なんで門が壊れてんだ?傭兵魔族も結構倒れてるし【エレメントフォース】使った形跡もあるしと………つか国の中で使うなってあれほど、」


 なんでここに来るんだよ。と、猛烈に思わせる仲間のKY剣士。


「なんだ……こいつ…ら、勇者…の……仲間…なの、か?」


 状況についていけない僕の現在の敵。


 頭が痛いよ、ホント。

 何故こんな状況になってしまったのだろうか?




 少し時は遡る。

 それは聖剣を解放した少し後。




「!…………この魔力は………やはり、姫のものだったか…とっ!?」


 突如感じた南門側から来る魔力の変わりように驚いた。

 僕は黒鎧の黒刀を弾きながら再度南門から来る魔力をさっきより集中して感知した。


 南門の方向から感じる魔力が段々と安定していってるのを感じる。

 正確には混ざっていたものが水と油のように別々の状態になった感じだ。

 さっきは確証の持てなかった魔力の感覚が今でははっきりと姫と断定出来ている。

 しかも感知した限りでは姫の魔力が段違いに上がっているようだ。

 これは大幅な成長………といっていいかもしれないが、僕の個人的な直感は姫に元々あったが今まで抑えていた魔力が姫の器に返ってきたようなイメージである。


 なにわともあれとりあえず姫の安否は一時的とはいえ確認出来た。

 そろそろこの戦いを終わらせて姫の元に早急に向かわなければ…。

 ……それに姫の隣にさらに大きな魔力の塊が感知出来る。

 姫の魔力に変化はなし、ということは姫に敵意が無いという事。

 しかし万が一という事もあるし………急がなければならない!

 …本当ならさっきの【エレメントフォース】で終わるはずだったんだけど。


【エレメントフォース】

 ある一定の構えで聖剣に魔力を流し、流した魔力を循環・増幅しそれを放出する。


 説明はここまで簡単な技である、しかしこの技に使う魔力はランクで言うならAAの魔力が最低でも必要になってくる。

 さらにそこから割り増しした魔力分だけ威力は上がるが聖剣を使う所持者の魔力が足りなければ極度の魔力不足になってミイラ化する。

 ……とりあえず言いたい事はこの技を僕のような奴が使えば大半は力ずくで押し切れる。


 …の、だが。

 ………………何故、技を撃つ瞬間腕が逸れたのか。

 僕は魔力が聖剣に溜まるのを確認するとすぐに聖剣の力を解放し振り下ろした。

 そう、振り下ろした…の、だが。何故か振り下ろした腕が自然と右に大きく逸れたのだ。

 そのせいで右にあった住居はほぼ壊滅、黒鎧に与えたダメージは左腕に【エレメントフォース】の余波を受けた事での火傷のみ。

 傷つけられた本人は忌々しげに怪我をした腕をさすりながらこちらを見てる。


 強制的な力で腕を逸らされたのならまだ納得がいく、だが今回は感じなかった。むしろ直線に振り下ろした時とほぼ同じ感覚だった。

 いったいどういうことだ?


「思考……剥奪、カスタムソード【クロックシャドウ】」


 !?

 考えをしている一瞬の隙をつかれ黒鎧からの素早い突きが僕に襲いかかる。


 ザシュッ


「…………………ちっ」


「…防ぎきれないとは、速いな」 


 黒鎧の攻撃に僕は肩に少し深い傷を負った。

 油断したとはいえ、咄嗟のガードが間に合わなかった…。

 しかし妙だ。

 どうやったのか間合いを一気につめられた。

 考え事をしてはいたが敵の一挙一動を見逃す程気は抜けていない。

 だからこそ疑問が膨らむ、まるで瞬間移動でもしたかのように黒鎧は僕の目の前に現れた。

 まぁ、さすがに何の動きも魔方陣も無く瞬間移動をするなんて不可能だから身体能力の強化か高速移動の魔法か何かだろうけど。

 …それにしても、


「思考…剥奪、カスタムソード【クロックシャドウ】伍連」


「……【氷欄剣舞・仕武舞しぶまい】!!!!」


 少しはまともに考えさせてくれぇぇぇぇぇ!!!!!


 実は僕の思考中、ずっと休まず攻撃して来ていた黒鎧。

 しかもさっきからどんどん攻撃の手数が多くなって来てる。

 そのせいで僕たちが動くたびに周りの地面や建物に刀傷と氷が広がっている。

 まったく………これでは姫に怒られるでは、

 

 パァッッン!!!!!!


 そう思っていたら平手で頰を叩いた音を大きくしたような音が辺りに響いた。

 その音と同時に黒鎧が見えないに何かに……というか空気の壁に当たったかのように横に吹き飛んだ。

 呻き声一つ聞こえなかった。


 ……。


 なんだろう、敵がいなくなって都合が良いはずなのに感じるこの不安は。

 何故だろう、横を向いたら後悔する気がする。

 なんでだろう、横を向いたら災厄と僅かな助けが来て姫の元に向かう時間がさらに遅くなる気がする。

  

 結論。


 横を向くな!!!!!!!!!!

 そう決意した僕は目を閉じ逃げるため、もとい姫を助けに向かうために魔力を練る。

 しかし現実は非情だった。


「あら?なんだ筋肉じゃなかったわ。黒色だったからてっきり……ごめんなさいね〜」

「あんた………まぁ、いいや敵っぽいし。それよりおい勇者、てめぇ………って何してやがる?」


 上から聞こえる男女の声。

 おそらく屋根の上にいるのだろう。

 だがそんな事は関係ない、もうあの黒鎧も屋根上にいる連中に押し付けて僕は姫の元に行く。

 さらばだ!


 ガッ


 と、華麗に去ろうとした僕の肩を後ろから誰かが掴んだ。

 というかそっちの肩怪我してるから掴まないでほしいのだけども。

 そして後ろから聞こえる聞き覚えのある男女の声。


「まぁ、待てや。お前にはさっき何故逃げたのか気かなきゃならねぇから……逃がさねぇぜ」

「確かあの筋肉の所にいた優男じゃない……なんだか腹が立って来たから殴らせなさい」


 いつ降りて来たんだよ!!

 まったく音も気配もしなかったよ!!!暗殺者かなんかですか二人とも。

 とりあえずカルネ、その話なら事が終わった後で何時間でも聞くから今は肩を放してくれないかな。

 今まさにお前の隣から僕に対して理不尽な暴力が振るわれようとしてるんだ。


 そんな僕の右側からガラッと瓦礫が崩れる音が聞こえる。

 

「き…さま…ら、ふざける…な」


 見てみると黒鎧が激突した住居から這い出ていた。

 分かる通りこちらを殺気を込めながら睨みつけている。

 …いや、黒鎧君。今回は僕全く関係ないよ?むしろこの女性を退けるためなら僕は君に協力するよ全力で。

 内心そんな事を思っていると僕には見えていないが多分笑いながら当事者の女性が言う。


「あらあら、なかなか丈夫なのね。でもさっきはホントにごめんなさいねぇ、お詫びに…」


 何故か女性の言葉が区切られるとカルネが触ってないもう片方の肩を掴まれた。

 気にせいかものすごく肩が……、


「え?」

「ちょ〜とのぉ『風等賦ふらふ』」



 音は聞こえなかった。

 ただ分かったのは背中に大きな衝撃を受けた事。

 そして少し離れた壁に激突した事。

 あと…激突した後に見た女性の顔がものすごくスッキリした顔だった事。

 あ、それと、


「私も満足貴方も満足、一石二鳥。これで許してちょうだいね?」


 なんて事も言っていた。


 

 ここから冒頭の場面に戻る。



 さて、僕の頭が痛い理由を分かって頂けたでしょうか?

 どう思うでしょうか、女性の方は諦めていますがカルネなんて僕が吹き飛ばされているのを見ていたにもかかわらず未だ説教を言い続けています。

 ……もう僕の味方は貴方だけだ、黒鎧君。

 今は敵同士だがこの戦いが済んだら一緒に酒でも飲もう。僕の驕りで愚痴り合おうじゃないか。

 ………この状況で気絶出来ないこの勇者の体が憎い。

 だが、姫のため…戦わないという選択肢は無い。


 すいません姫、貴方を助けに参上するには大きな壁を最低でも2枚は突破しなければならなさそうです。

 まだ時間がかかりそうで………どうか………………御無事で。







 sideリーファ


 あ、なんか勇者の心が折れそうになってる気がする。


 ふとあたしはそんな事を思った。

 これは正直魔力とか魔法使いのスキルとか関係なく、ただの女の勘だ。

 この勘が合っているかは分からないが今のあたしの精神状態と勇者の精神状態が一緒かと思うとなかなか嬉しいものだ。


 今、あたしは姉に絶賛説教され中なのである。

 私生活から恋の事まで根掘り葉掘り聞かれた挙げ句にアドバイスから今の説教まで色々お世話になって……………………心が折れそう。

 これは愛ある説教の範疇を越えている気がするんだけど…。

 本当に……姉のこの説教はいつまで続くんだろう?


「………姫様、覚醒されましたか」


 ん?姉が何か言ったようなぁ。


「おや?聞いているのですか、リーファ?聞こえてないなら【雑音撃サウンドショック】を」

「あんな壁が崩れるようなものは勘弁して下さい」

 

 やはり気のせいだったみたいね。

 この拷問、いったいあと何時間続くんだろう……。

 ……一応心の中でだけでも謝っとこうかな。

 アミア、助けには行けそうにないわ………………………………………ごめんなさい。


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