第30話 南門へ
遅くなりました!
sideアミア
あれから南門に向かって全力で飛んでいってはいるもののまだ門が見えない。
森を通るしか最速で南門に行く手段が無いため仕方ないといえば仕方ないですが。
…本当ならもっと高く飛びたいのですが高度を上げるにしても万が一敵が門の所にいた場合見つかる可能性が高くなります。
一応感知されないよう出来る限り出力を抑え、魔力も意識して出来る限りの速度を維持し全力で飛ばしていますじゃ。
……あまり上等とは言えませんが出来れば敵がいた場合不意打ちで倒せる事が好ましい。
今の私の力ではまともな訓練、戦闘を経験した事のある者ならなす術も無く負けるでしょう。
魔法が多少使えても当たらなければ、発動しなければ意味がありません。
知識がいくらあろうが実戦とは違う、そしてその知識をその場で応用出来なければこれも意味が無い。
私の今の現状……私に出来る事は少ない。
ならばここは卑怯と言われようとも敵がいた場合、背後から攻撃を仕掛ける。
……出来る事なら私は敵も殺したくない。
これは戦いにおいて甘えであると、そしてそれが許されるのは強者だけであると私は理解しているつもりではありました。
しかしやはり知識と現実は違う。
感情が理解しようとする知識を否定してしまう。
そういえば昔リサに戦い方を聞こうとした時も言われましたね。
「姫様は私がお守りしますから必要ありません、それに姫様には戦闘に向いていません」
今思えばその通りです。
…リサは今、元気でいるのか、あれだけ優秀なメイドですからクビにはなってないはず。
自分の影響で何かあったかもと思うと胸が痛くなります。
…………そういえば私の口調が頭の中で考える時だけですが何やら昔に戻ってきていますね。
まだ完全とは言わないまでも……というかなんで私、頭の中まで敬語なんだろう?
敬語は外してみよう。
この調子ならもうすぐ門にたどり着けそうじゃな。
ものの数分、ここから先は静かに進んだ方がいいかもしれん。
私は飛行速度を落とし闇にまぎれるように影や木を利用して進んでいく。
そうしてついに南門が見える位置まで来ると私はその場で一旦止まり飛行魔法を解除する。
そして出来る限り木の陰に隠れながら移動しさらに門にもっとも近い草影に身を隠し辺りを見回した。
自身に冷静にと言い聞かせて落ち着かせ観察する。
見た所敵の気配はなし。
門の破壊、目算60%近く破損。
近くに人影、負傷者なし。
地面にいくつかの小さな爆発跡有り。
…門の破壊をした犯人はもう違う門に行ってしまったのじゃろうか?
それとも隠れてこの騒ぎを聞きつけた者を待ち伏せておるのか?
……それにしても静か過ぎるし、だからと言って不意打ち狙いの私は情報が無いからうかつには近づけない。
……あれ?そういえば我が国の兵達はどこに、
「あ〜〜〜〜れ?もしかしてそこにいらっしゃるのは真の第5王女であるアミア姫じゃねぇですかい?」
思考する中、後ろから声がした。
私は何故か振り向く事はせず咄嗟に両手のひらを地面に押し付けた。
「explosion LV1」
そんな直後に起こるひと一人を吹き飛ばすには十分な爆発が起きた。
そんな中おそらく男だろう人物の声が静かな森に響く。
「悪いけど、見つけちゃったし君を連れていかないといけない。あっしもボスの命令だし、ま、運が悪かったって事で一つ………おんやぁ?」
「…【アースシールド】」
男が驚いたような声をあげる。
爆発で発生した煙が晴れると男はさっき私が見えていた場所に壁が出来ている事に気がついた。
その壁がピシピシと砕けていき男に私が見えるようになると私は小さく魔法名を呟き、続けてこう言った。
「そう簡単には……負けられぬ!」
「侮ってたよ……まさか、あんたみたいなお姫様があっしの一撃を曲がりなりにも止めるとはね」
そんな私の言葉に、男はなにやら感心したように言った。
私はすぐに後ろを振り向き、男を見据え戦闘態勢に入る。
…見つかってしまった以上戦うしかない。
確実に相手は格上、しかもあの門の破壊跡から察するに次にもっと威力のある爆発を起こされると私では防ぎようがない…。
……そういえばこれが私一人の初めての実戦。前は白露様もいたし。
……………今は考えまい。
とにかくこの男に撃てるか分からないが現在私が発動出来る中で最大級の魔法【ハイメテオ・ブレイク】を当てる!これが勝つ最低条件にして高速詠唱も必要になるが……ミスは許されない。
最初の一撃が勝負!!!
「地の精よ、我が力に共鳴し、調和し、天を貫け。契約は従い、一度眠り、二度騙し、三度終わりを告げた。始まりはなくただ原初の炎を灯せよ」
私が高速で詠唱をすると男は少し驚いた顔になり手をこちらに動かしたが魔法発動には十分時間がある。
よし!いける……これなら!!
「【ハイメテオ・ブレ、」
私の魔法詠唱はそこで止まった、止められてしまった。
何故なら背後から激しい衝撃が私を襲ったからだ。
同時に一瞬私の世界から音が消えた。
「やっぱり……私は………、」
わけも分からぬまま私は悔しいという気持ちを抱きながら意識を闇へと落としその場で倒れた。
sideアミアout
アミアが倒れたあと、男は言う。
アミアが気絶したのも知らずに。
「今のって影の旦那が食らった魔法?悪いねぇ、あっしはあんな大火傷負いたくないのよ」
「しかも影の旦那であぁな魔法をあっしみたいなのがくらったらお陀仏、ま、今回はあっしに追撃爆発を発動させただけすごいと胸張るが良い……これは姫さんの護衛に向けて使う筈だったんッスけど結果オーライでさぁ………………ん?」
あ、っと悠長に話すのをいったん止め男は気がついたように言う。
「一応名乗っておくとあっしは爆撃のアイアンって名……………ってあら?聞こえてないっすね」
今頃、男・アイアンはアミアが気絶している事に気がついた。
取り残された人達(東門付近)
「…どうしたもんか」
勇者に赤狐達を押し付けられたカルネはげんなりとした声で言う。
いつも元気がある印象の彼にしては珍しい事だ。
しかしそれにはその様子に見合うだけの理由があった。
その理由とは一言で言うなら赤狐、ここでは赤い男がどこかへ行ってしまった事。
…いや、正確には違う。
正直な所、カルネにとって赤い男がどこかへ行ってしまった事はありがたいことだった。
元々カルネがここに来たのは勇者を捜すため、今の現状はそのついで二の次の事。
赤い男に関しては自然破壊さえしなければ別にどこに行っても構わない。むしろ二人のうち一人が町に行ったのだ、観光でもしててくれと思うくらいだ。
しかし赤い男が町に向かう際、カルネはプライドの一部を傷つけられた。
赤い男は突然町の方を見てさらに殺気を瞬間的に発した。
そしてしばらく町の一点を凝視し、次には爆発的な妖気を感じさせ……現状を作った。
(だが、まさか俺の攻撃をあんな簡単に……実力の差か、自信なくすぜ…)
そう、赤い男が妖力を発した際カルネは反射的に危険を感じ取り赤い男にかなりの本気の攻撃をした。
しかしその攻撃を軽くいなされたうえに相殺までされ、まんまと逃がしてしまった。
それは祖国では最強の一人とうたわれたカルネのプライドの一部を傷つけるには十分な事だった。
(というか俺はいつまでこの女の相手をすりゃあいいんだ?)
赤い男がどこかへ行ってしまった結果、この場に残ったのはカルネと緑髪の女・日護涼華だけ。
そして残った日護涼華は現在は特に戦うでもなくずっと赤い男が飛んでいった方向をうっとりとした顔で見ている。
今では、
「……ふふ、まったく恥ずかしがり屋さんなんだからぁ。あんなに必死になって逃げてしまわれるなんて………良いわぁ、あのお顔が私の為に歪まれるなんて。……歪むなんて表現は旦那様に失礼ね、訂正しましょう」
こんな事も言っている始末である。
そんな中カルネは考える、今自分が出来る事を。
(…この女だけなら捕縛出来るか?どこの者かも分からん存在は無闇には殺せない……しかし捕縛も簡単じゃなさそうだな。この女、俺に意識を向けていないというのに全く隙がない、面倒な…)
そんな思考の結果、とりあえず話し合いで解決出来ないかと話かけてみると。
「あら?貴方いつの間にそこにいたのかしら?私に気付かせないなんてなかなかのものね」
(やってらんないわもう)
懸命に止めていたにもかかわらず、気付いてすらもらえてなかったカルネなのでした。




