第27話 2番は1番に勝てるのか
遅くなりました!
パチ
先まで戦いがあったとは思えない程静かになった部屋………だった所にある一つのベッド、そこに横たわっていた少女が目を覚ました。
そして少女は起き上がり辺りを見回すと一言。
「ここはどこじゃ?」
sideアミア
………………これは一体どういう状況なのでしょうか。
なにかまた気絶してしまっていたようで目が覚めた私はベッドから起きあがったのですが…。
…ここはどこなのでしょう?
どう見てもさっきまで居た部屋には…というかもうすでにここは部屋と言うカテゴリーにさえ入らない所ですから考えるだけ無駄ですね。
だって屋根も壁も無いですし。
………………しかしこのベッドと下の床にはかなり見覚えがあります、しかもここから見える景色はさっき窓から見ていたものと同じなような…。
考え込む私は、次にこの床だけになっている部屋?にいる自分以外の人達に目を向けた。
そして思う。
何故勇者は目の前の大穴が空いた床を見ながら固まっているんだろう?
リーファさんは何故ベッドに座ったまま気絶してるのでしょう?
何故ハルさんは……この状況で無傷なのでしょう?いえ、別に怪我をしてほしかったと言うわけでもないんですが…。
リンクさんは………呆然としてますね、置いときましょう。
そして…何故こんな状況にも関わらず、私のベッドだけ汚れ一つないのだろう…。
よくわからない状況に困惑するアミアなのでした。
sideアミアout
そんなよくわからない状況になった理由を知るには今から1時間程前に遡らなければならない。
それはちょうど勇者と白い男が戦いを始めた時だった。
〜1時間前の部屋〜
「……そういえばまだ自己紹介がまだだったね」
幾分か冷静になった白い男はふと気付いたようにそんなことを言った。
しかし未だに勇者の聖剣を凝視して勇者本人とは目を合わせていない。
「そうだな。……というかいい加減剣を見続けるのはやめてほしいんだが、そして姫を狙うのもやめてくれると多いに助かる。あまり無駄な戦いはしたくないんだよ」
白い男の言葉に返答する勇者。
そんな勇者の言葉に白い男はようやく剣から目線を外し最初と同じように笑みを浮かべながら勇者を見て言う。
「そうだね、失礼した。不測の事態とはいえここまで取り乱してしまい恥ずかしい限りだよ」
どうやら完全に冷静さを取り戻したように見える白い男。
「では改めて自己紹介をしよう。……ここは小生から名乗るのが筋と言うものだろう。小生の名はサルワ・エメリィ。女性のような名前だが正真正銘の男だよ。そちらは?」
そりゃあ、どう見ても男だよね。
と言いたげな顔の勇者も答えた。
「名乗られたら名乗り返したい所なのだが……悪いけど自身の誓いにより真の名前は言えない。仮名で申し訳ないんだが勇者と呼んでもらたい。」
勇者は申し訳なさそうに顔を歪めながら白い男ことサルワに言う。
対してサルワは特に気にした様子もなく、むしろ興味無さげな顔で言う。
「…ふむ、それは残念だ。その誓いとやらについて詳しく聞いてみたい所だが、今回はあまり時間はないのでね。手早く済ませよう、早くしないとこの国の民がここに集まってしまうからね」
「………」
サルワの言葉に何か引っかかったのか勇者は怪訝そうな顔になる。
しかしそんな勇者には気付かずサルワは左手を突き出した。
「まぁ、自己紹介も終わった事だし…………【眷属器生成】!!!」
サルワがそう言った瞬間、サルワの左手のひらがひかり光が止んだ時にはその左手には銀色に輝く鎚、所謂ハンマーが握られていた。
しかもそのハンマーは従来のものよりかなり巨大で先端には槍のようなものが付き、その下のハンマー本体と言える箇所は真四角で一目見ただけでかなりの重量感と圧力を感じる。
しかもちゃっかり装飾もしっかりしていて高級感も漂わせるハンマー。
そんなハンマーをこちらに向けながらサルワは言う。
「戦いを始めよう」
side勇者
「戦いを始めよう」
そういって僕とサルワの戦いは………始まらなかった。
その前にサルワが僕の目の前から消えたからだ。
消えたと言うのは別にサルワがいきなり撤退したわけではなく、本当に僕の目の前から消えたのだ。
この部屋の残っていた屋根や壁と一緒に…。
残ったのは【金剛剣舞】で防御力を強化してあった床だけだ。
ここは2階に位置しているからもうここが屋根といえるかもしれない。
……一応壁にも不完全とはいえ、【金剛剣舞】は発動していたはずなのだが。
やはり不完全な状態がいけなかったのか…。
ちなみに何故こんな事になっているのか詳しく説明すると………いや、別に詳しく説明する程の事は実際無かった。
ただリーファさんがこの部屋を破壊する前に窓のあった方向から赤い閃光とも言える何かがサルワごと壁と屋根を吹き飛ばしていっただけの事だった。
後に残ったのはサルワが持っていたハンマーだけだった。
しかし驚いた、一瞬の事ですぐには反応出来なかった上に横から来る凄まじい突風でその場に留まる事で精一杯だった。
姫はリーファさんが障壁を張って守ってくれているので安心だが…。
その間心配だった現在何の防御も出来ないハルさんについては………あの突風にも関わらずそのままの状態で微動だにしていなかった。
それを見て一瞬顔が強ばったがよく見てみるとハルさんの所だけ何も壊れた所が見られない。
「なんでハルさんのところだけ?」
「当然です、私がマイスイートハートの体に傷をつけるわけがないでしょう!」
僕が疑問に思っていると後ろから……いや後ろからなのだがなんか甲高い声が上から聞こえるような?
そして後ろを振り向いて見ると…現在、カルネが相手をしている筈のあの赤い男が空から降りてくる光景がそこにはあった。
「なにやら不快な感じがしたのでこちらに来てみたのですが……さて、誰でしょうか?”フィアンセ”という単語を使ったゴm……いえ不燃ゴミはどこでしょうか?」
ゴミは変わらないんですね。
と反射的に思ってしまった。
ていうか確かフィアンセって言ったのは…、
「それなら今貴方が吹き飛ばしましたけど…」
って、言ってもまともに聞いてはくれないか…。
「む、あの程度で吹き飛ぶなんて軟弱ですね。まぁ、またここに現れるでしょうから待ちましょうか。情報ありがとうございます」
まともに聞いてくれただとぉぉぉぉぉぉ!?
あの時はいくら呼びかけても反応しなかったくせに!!!
ちゃんと返答出来たのか?!
過去に類を見ない驚きが僕を襲う。
初めて赤い男とまともなコンタクトが取れた瞬間であった。
勇者は気付く筈も無いが、勇者は今稀にしかいない赤狐とまともにコンタクトを取る事の出来た極珍しい人物である。
というか今なったのである。
♦勇者
称号【精霊姫の騎士】
【愛の話し手】new!
勇者は新しい称号を手に入れた。
(なんか今、ものすごくありがたくない称号を得た気がする)
後でステータスの確認しよう。
まぁ、とりあえずここはどうするべきなのか。
あれだけ勢いよく吹き飛ばされたのだからすぐには戻ってこないだろうし、その間この男と一緒にいるというのはかなり辛い。
…………そういえばなんでこんな派手な事が起こってるのに警備兵はこないんだろう?
さっきリーファさんが使った飯綱は電撃自体はそこまで被害はないだろうけど、音波はかなりの範囲に広がってる筈。
あの音波を間接的に食らった人がいるのなら三半規管が麻痺して平衡感覚が保てない筈だ…騒ぎになってもおかしいどころか当然なはず。
……そういえばさっきサルワが言ってた事も何かおかしい。
普通ここで集まってくると言うのなら民ではなく兵のはずだ。
これではまるで兵が来ないと言っているような感じもする。
となると、
「おや?帰って来たようですよ。不燃ゴミ」
赤い男がそういうと目の前にあるハンマーが光った。
そういえばさっき僕の聖剣から出てきた時も光ったな…。
…どういう能力なんだ?
そう考えていると光が治まりサルワがハンマーの横にまた膝をつきながら存在していた。
……本当にどういう能力なんだ?
僕は赤い男も気になるだろうと思い率先して聞いてみた。
「あなt「君が私のマイスイートハートにフィアンセなどと言った不燃ゴミかい?」
興味は無いらしい。
というかものすごい殺気を感じる。
顔は全くの無表情だし、敬語口調でもなくなってる。
赤い男の言葉にサルワはハルさんの方を見て言う。
「…ふふ、貴方はその方を知ってらっしゃるのですね。ということは小生と同じ婚約者候補か。いきなり横から不意打ちとはまた躾がなってないねぇ」
「そんなことはどうでも良いんですよ、さっさと質問に答えて下さいゴミ」
いるのかどうか分からないが”不燃”すら消えた。
しかもさっきとは違ってあからさまに苛ついてらっしゃる、般若だ。
「短気だねぇ、しかし安心しなよ。今回は白露様に会いに来たんじゃなくてそこの…勇者の後ろにいる姫様に用があって来たんだ。」
「勇者の敵意を見る限りその用と言うのもまともな事ではないのでしょうね。一つ良い事を教えてあげましょう。この寝ているお嬢さんはマイスイートハートの友人です。」
「それがなんなんだい?小生はそのフィアンセとの将来のためこうして働いているんだ、多少の犠牲は仕方ないと思わないかい?」
「……」
サルワが言い終わると同時に赤い男は無言でサルワから視線を外しハルさんのところへ歩いていった。
と言っても一つの部屋の距離などたかが知れてるので数歩でハルさんの元に着いた。
そういえばさっきこの二人(正確にはサルワだけ)、ハルさんの事を白露様って呼んでたな。
ハルさんの名前は偽名ってことかな?
考えていると横から赤い光が。
今回光関係多いな、なんて思いながらその光の方向を見てみるとその赤い光の中心にはハルさんが居た。
「え?!なんでハルさんが、」
ドゴォォォォォォッ!!!!!!!!!
僕がハルさんの事を口にしようとした瞬間目の前を赤い閃光が通り過ぎた。
床に大穴が空いてしまっている。
僕が衝撃から固まっていると、
「………そこから動かないで下さい」
赤い男がそう言って来た。
おそらく動いたら最低半殺しなめにあうビジョンが見えたので絶対動けない。
リーファさんなんか気絶してるし。
僕も今は姫の為にも死ねない。
…よく見たら赤い光を出しているのはハルさんではなく赤い男の方だった。
そして光が唐突に消える。
(何したんだろう?かなりあっさりとした終わり方だけど。…ってすごいな)
光が消えて、中心に居たハルさんが見えるようになると変化に気付いた。
ハルさんは奇麗になっていた。
いや、奇麗って言うのは美しいの奇麗ではないよ。
服の汚れや顔の怪我などが奇麗さっぱり消えていると言う意味だ。
おそらく赤い男の力………というかあのスキルだろう。
………………………勝てる気がしない。
「私はちょっとマイスイートハート…愛しの君を、そして貴方の友人を馬鹿にしたあの男に仕置きをせねばなりません。その間は任せましたよ」
何をと言われればハルさんの事なんだろうけど、僕は姫を守ると言う役目があるのだが。
そして案外この男紳士なのかもしれない。
「………なんだ、小生にその娘を譲ってくれるわけではないのか。まぁ、それなら戦うしか無いわけだが…いささかここでは窮屈だ」
サルワは少しめどくさそうに胸元から宝石、おそらくダイヤモンドを取り出し地面に置いた。
人差し指をそのダイヤモンドにおいて言う。
「場所を変えさせてもらうよ。【プリズン・ゲート】」
その呟きが終えるとダイヤモンドを中心に魔方陣が展開される。
その魔方陣の中にさらに小さな正円があり、その円にはサルワと赤い男が立っていた。
突然の魔方陣に慌てた様子も無く赤い男は言う。
「では、お願いしましたよ。あ、万一手を出したら、」
中途半端に言葉を遮って二人は消えた。
……その先は何!?
ここから30分程、勇者は赤い男の言葉の続きを考え続けるのだった。




