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狐の嫁入り逃亡記  作者: カラネコ
第2章 聖からの脱出
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第26話 第2婚約者出現?


「……。」


 呆然。

 おそらくその言葉が一番似合う光景が部屋の中にあった。

 いや、部屋だったところというべきだろう。

 なぜなら天井は跡形も無く消え、右側にあった壁もほぼ破壊されているからだ。


 しかしそんな中、床だけはほぼ壊れずに残っているため少し不自然な状況を作っている。


 部屋に存在している人達のそれぞれの反応は、


 勇者、突然自身の剣から何者かが出てきた事に困惑。

 アミア、未だ就寝中。

 白露&ハル(の体)は、…少し焦げている。

 リーファ、飯綱を使った反動なのか体から蒸気のようなものを出して直立不動。

 リンク、飯綱発動前になんとか1階に避難。

 

 その他、白いスーツ服は床に片膝をつきながら息絶え絶えになって呻いている。




 side勇者



 いきなり何者かが僕の剣から出て来た。

 現在、僕はひたすら困惑していた。

 しかしそれは男が剣から出て来たという事実にではなく、自身・・の…勇者・・の剣から出て来たことに対してだ。

 もちろん剣から出てくるなんて非常識なことに驚きがないでもないが、それはおそらく転移魔法の……移送魔法の応用でなんとかなる、とにかく実現可能なことなのでそこまで驚きはしない。

 ……というかなんで移送魔法って名前なんだろう。

 召還されてそこそこ経ったとはいえ僕は現代人だ、アニメも好きだったし。

 そのせいかどうしても転移魔法と言うのがしっくりくる。

 このさい勇者という地位と名声を駆使して魔法名を変える事って出来ないかなぁ。


 ……まぁ、今考えても仕方ないか。

 魔法名に関しては姫が起きた後に相談してみよう。

 あの頃の姫と変わってないのならさぞ色々な本を読んでいるのだろう。


 ふと浮かぶ初めて会った時の魔道書を読む姫の活き活きとした姿。


 その時の事を思い出し自然と僕の顔に笑みがこぼれる。






 …………おっと、激しくトリップしてしまっていた。

 いけない、今は姫の安全を確実に確保しなければならない時、過去を思い返すのは後にしよう。


 さて、話を戻すと僕が困惑した原因はこの聖剣にある。

 僕が持ってるこの剣は勇者だからありきたりと思うのは仕様がないかもしれないが、ある意味定番の聖剣だ。

 名前はその伝説の分だけ存在するから決まった名前は無いが、とりあえず王宮の厳重な金庫からパクって来たものなので偽物ではない筈…。

 違っても実戦でも使えているし最高位の武器である事は間違いない。

 ……だから今回困惑してるんだけどね。


 この剣は腐っても聖剣なので所有者以外の魔法などは一定範囲干渉出来ない筈なのだけど、光で見えづらかったとはいえ例の何者かが現れたのは剣の刃の部分……。

 改めて考えても困惑するばかりだ…。

 

 …………それにしても、


 

 僕は手を顎にあてながら周りを見る。



 …あの謎の男のせいで【金剛剣舞】が完全には発動出来なかった。

 そのせいで部屋が半壊とは笑えないな。

 【金剛剣舞】は元々攻撃用の技ではなく防御用の技。

 名前は大層なものだが、効果はそのまま”金剛の守り”を意味している。

 本当ならもうちょっと破壊を抑え、外に衝撃を流せていた筈なんだが…。

 …終わった事を考えるのはよそう。


 しかし……危ないなぁ、姫に破片なんかが飛び散ったらどうするんだ。

 最悪あの何者かには僕の八つ当たりに協力してもらおうかな。

 と、心の中で愚痴ってみるものの、とうのリーファさんは蒸気出してクールダウンモードに入ってしまってるし。

 そういえばあの状態は寝てるのと変わらないって言ってな……起こすのは後にしよ。

 姫にも実害もなかったようだし。


 僕はチラリとベッドの方を見た。

 そこには相変わらずスースーと小さく寝息を立てる姫の姿があった。

 怪我はもちろんの事、ベッドに乱れも無い。完璧だ!


「………ぁぁ、まったく始めからとんだ災難に遭うものだねぇ。」


 僕が姫を見ていると後ろから知らない男の声が聞こえた。

 振り返ってみるとそこにはさっきまで膝をついて呻いていた白い男の姿があった。


「眷属器を媒介にここに移動したというのにこれはなかなか厳しい洗礼だ。」


 厳しいと言いながらも男は笑みを浮かべながらこちらに語りかけてくる。

 言ってる意味はよくわからないが僕は頭の中で、


 ……この男、変だな。

 

 単純にそう思った。

 なぜなら男はさっきまで呻いていたにもかかわらず服は焦げてもいない上に汚れてもいない。

 そして顔もあれだけの電撃と音波を食らってここまで無傷なのはおかしい。

 ……僕も人の事は言えないけども。

 

「しかし君はなかなか良い眷属を持っているじゃないか。ついでにそれももらっていこうかな。」


 僕の疑問になど気付きもせず白い男は言った。


 この男、なんで当たり前のように僕の剣を”もらっていこうかな”なんて言ってやがるのか。

 そもそも僕が譲る筈無いからあり得ないんだけどね。

 それにしても…この男、なんだろう?

 なんというか………直感的にこの男とは仲良く出来無い気がする。

 なんでだろ?あの赤い男ですらある一部のことならお互い熱く語れそうな気がしたのに。

 何故?


「おやぁ?そぉんなところにこの度のターゲットが……んん?」

「……これは運が良いぃ、まさか小生のフィアンセにこんなに早く会えるとは…。」


 こちらを向いていた白い男は突然顔を横に向けてハルさんにそう言った。


 ……フィアンセって。

 ハルさん、言ってはなんだけど趣味が悪過ぎるよ。

 もしかして脅迫でもされたのか?

 それとも家の決まりみたいな感じのやつだったり?

 …後で聞いてみよう。


 と、僕が考えていると


 ゾワァアァァァァァァァアッァァァァァァァ


 突然氷付けにされたような感覚に襲われた。

 …これは、殺気?

 

「…なんだ今のは?」


 僕はその殺気の発信源がいるであろう方向を見るため目線を動かした。

 そして方向を見た瞬間、


 一瞬で目をそらした。


 瞬間に一瞬という表現はどうかとも思うかもしれないがまさに僕はその表現が正しいと思う。

 瞬間的すぎて首が痛い程だ。

 直感だがあの方向に今視線を向けるのは危険だ、最悪何かに殺されそうな気がする。

 ………あの方向って確か、少し離れてはいるけどカルネ達がいる場所じゃないか?

 …カルネ大丈夫だろうか?


 僕がそう考えていると白い男から何か言って来た。


「はい?…あぁ、どうやって君の眷属器……いや、武器から出て来たのか疑問に思っているんだね?」

「それはね、………おっと、ここで自身の事なんてしゃべったらただの馬鹿だね。君も誘導が上手いじゃないか、褒めてあげるよ。」


 何か言い出しましたよこの男。

 しかも何勘違いしてるんだか。

 今そんな事どうでも良いんですよ。

 今の優先事項は、1に姫の安全確保、2に先の殺気に対する防衛策の思案だ。

 確かに聖剣からいきなり出て来たことには驚いし気になりもするが今はどうでも良い。

 というか誘導なんかしてないよ、貴方がただバラしてるだけだ。


「我がフィアンセとも会え、良い眷属器にも巡り会えた…今の小生は気分がいいから教えてあげても良いのだけれど、しかし今回の訪問はお使いでね。教えるのはまた今度にしよう。」


 まだ話しかけてくる。

 …お使い、ね。

 あの様子だとハルさんに用ってわけでもなさそうだし……もしかして僕(勇者)にかな?

 ならこの男は王宮から来たのかも…。

 まぁ、王宮にもお抱えの強者はかなりいるからどうせ勇者を連れ戻して来いとでも言われて来たんだろ。

 ……出来れば話し合いで済ませたいなぁ。

 最終的に金を積めば何とかなるかなるだろうけど…姫の為に集めた金だしあんまり使いたくはない。

 とりあえず相手の言い分を聞くか……さて、どんな内容なのか。


「とりあえず君、」


 やっぱり僕か。

 当然と言えば当然か。

 依頼したのはあの国王か?それとも騎士団長?

 ……まぁ、聞けばわk


「の後ろにいる娘に用があるんだ。そこをどけてくれないか?」


 …。


「君いると邪魔でね。その娘とどういう関係かは知らないが……君がいると攫えない、君も運が良い。小生の機嫌がいいばかりに殺されず、話し合いで、」


「おい。」


「…ん?何かな?」


 自身の話を途中で切られたのが気に入らないのか眉間にしわを寄せながら聞き返して来た。

 しかし、そんなことはどうでもいいんだ。


「一つ聞きたい。きさ……貴方はひm……この美しい女性を攫ったとし、てどうするのですか?」


 いかん、姫の事を考えると口調が……抑えなければ……!


「…?いや、小生は攫ってこいと言われただけだが。まぁ、安心すると良い。酷い事にはならない筈だ、丁重に扱えと言われてるのでね。」


 抑えろ、抑えるんだ。

 こいつはただ依頼されてここにいるだけだ。

 なら金でも積めば帰るか最低でも期間を延ばすくらいは出来る筈。

 話し合いでどうにか、


「しかしこの娘が美しいかい?色々未成熟過ぎて小生にはただの貧相なガキにしか、」


 無理ぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!


「見えnいぶらっ!!!!!????」


 気がついたら右手が前に。

 反省もしていないし後悔もしていない!


 白い男は殴られた反動で吹っ飛んだ。


 まったく、姫の魅力に気付かないばかりか挙げ句に貧相なガキだと!

 まぁ、剣から出て来た事から多分魔法使いタイプだろう。

 魔法使いタイプならさっきの一撃で気絶する筈、今回はそれで勘弁してやろう。


「ふぅぅぅぅぅぅ………まったくハルさんも何故こんなやつを婚約者に…。」


 少し言葉が荒くなっているがさっきよりは落ち着いた。

 本当なんでこんなのの婚約者に……。

 …いや、これならハルさんが嫌々でやってる方の可能性が高いな。

 …………よし、さっさとあの男を外に放り投げてしまおう。

 また起きてこられると不快だ。


 思うが早いか視線を飛んでいったであろう白い男に向けようとすると目の前から声がする。


「………この攻撃の威力、どこの誰かは知らないが君がただ者では無い事は分かった。君を小生の敵として認めよう。」


 さっき殴り飛ばした筈の男がさっきと寸分変わらない場所に上を見上げながら立っていた。

 さっきとは雰囲気もまるで違う。

 例えるなら洗礼された戦士のそれだ。


 ……ここで僕がするべき事は。


「リーファ!!!!」


 僕は大声でリーファさんに話しかける。


「……はっ?!あたしは一体何を!?ていうか勇者、今あたしの名前を、」


 呆然としていたリーファさんもさすがに気付いたのか僕の方に何か言おうとしているが遮って言う。


「今はそんなことより頼みがある。」


「え?…うん!何?今なら何でも出来そうな気がする!!」

 

 何かさっきと違って気合いが入ってるリーファさんを疑問に思いながら僕は言う。


「姫の警護を頼みたい。このメンバーで頼れるのは現在貴方だけだ、頼む。」


 少し申し訳ない気がするがこのメンバーの中で守れる力があるのはリーファさんだけだ。

 僕がこの男と戦ってる間に姫が何かに襲われないとも限らないし。

 頼れそうなハルさんや精霊さんは今瞑想中で…おそらく術で意識の底に潜ってるだろうから頼れない。

 リンクは……論外だ。

 で、残るはリーファさんだけ。


「えぇ………わ、わかったわよぉ。」


 リーファさんも了承してくれた。


 バンッ!!


「勇者様!ハルさん!!大丈夫ですか?!」


 リンクがドアをそこそこ大きな音を立てて入って来たが無視。



「しかし…、」


 そして白い男はまた話しだす。

 しかしさっきの戦士の顔つきと違い何か怒っているような顔になり言う。


「なんなんだい?その剣、眷属が小生に反応しないなんて!忌まわしい…!!」


 言葉の意味は分からないがだがこの男はそこら辺の敵なんかより強そうだ。

 敵に対して僕はあんまり関心を抱かないんだけどね。

 でもここまで正々堂々ものを言ってくる敵も珍しい。

 敬意を持って応じよう。


「貴方が誰なのか何の事を言ってるのかは知らないが姫に、そして姫の仲間に傷をつける事は許さない…!!」


 そしていつかの文章まで戻る。



 

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