第24話 第2の婚約者候補出現注意報
遅くなりました!
side白露
ハルが修行に励んでいる中私は考える。
何を考えてるかと言うと修行の始めにハルの言った言葉である。
”今回の修行は厳しく頼む”
ハルは何かを吹っ切る目で白露を見てそう言った。
しかし白露は思う。
厳しく、と言われても修行は前から厳しくしているつもりなのでどうすれば…、と。
(さて、この場合本当にどうすれば良いのでしょうか…?)
新しい術の修得は必須ですから厳しくというのなら術を完璧に使いこなすまで修行を……いえ、それをするには時間がなさ過ぎます。
いくらこの空間が時間を少し延ばす事が出来るとはいえ外にはアミアさんや勇者さん、リンクさんと…リーファさんも待たせている事ですしそこまで時間は取れませんね。
体術にしても同じ、一朝一夕に身に付くものでもありませんしハルの習っていたという格闘術は私の知っているものとは基礎から違うようです。…一度ハルの世界でその格闘術をならってみたいものです。
(ハルはかじった程度としか言いませんでしたが、本当にかじった程度と言うならぜひハルの師匠にご指導を、…って。)
話が脱線してしまいましたがこの短い時間でどうやってハルに厳しい修行を課せば良いのでしょうか。
優先的に教えるのは新しい妖術ですが体術も鍛えておきたい所。
う〜ん、悩みますね。
そうして私はハルの方をチラ見する。
現在ハルは妖力制御の修行をしています。
先日の日護様の戦いと城を脱出した後のハルの様子を見て私がそこまで気にしていなかった妖力制御の重要さに気付きました。
制御が完璧なら日護様のときは負けたでしょうが渡り合うくらいは出来たでしょう。
城を脱出する時なんかは怪我を負う事もなかったかもしれません。
これからもハルは私の面倒事に関わってしまうでしょうから最低限赤壁の制御、すなわち妖力の制御を普通の狐族レベルくらいにはしておかないと不安です。
さらに言うならハルがした赤壁の完全覚醒…あれはそう何回も使えるものではありませんし術者も傷を負う諸刃の剣。
ですがその諸刃の剣も妖力を制御する事が出来たなら、おそらくかなりの武器になるはずです。
……もう、あそこまで傷つくハルは見たくありませんからね。
思い浮かぶのはそれぞれハルが傷つき倒れてる光景。
日護様の時。
城を脱出した時。
「………。」
しかし今は過去より現在を考えるべき時、結局修行はどうすれば…。
……………あ、そうです、あれがありました。あれをしましょう。
あれなら敵が来た時に役に立ちますし、実戦にも使えます。難易度的にもいいはずです。
ですが…あれをするとなると妖力制御はますます必要になってきますね。
そうすると妖力制御を完全にするには今回の修行の大半の時間をつぎ込まねばなりません。
本来の今回の修行の目的は最低限の妖力制御と新しい術の習得。
しかし新たな課題を私は思いついてしまいました……新しい術も教えたい所なのですが時間がない。
仕方ありません、今回教える予定だった術は骨組みだけ教えてまたの機会にしましょう。
でも…もしかしたらですがハル自身があの術を自然と使えるかもしれません。
何故ならあれは本来人間の術だったのですから。
…まぁ、その前に。
「ハル、そこはそうではなく川に水が流れるようなイメージで妖力を一定に保ちつつ量を増やして行くのです。」
私がハルにそう言うとハルから頭に響くように声が返って来た。
”分かってはいるんだけど…、量を増やすとどうも上手く行かなくてな。”
「…そうですか。なら私がもう一度妖力を流しますので感覚を覚えて下さい。」
そう、ハルは妖力の制御がものすごく下手なのだ。
元が人間だっただけに妖に分類される私のように妖力が当たり前のようには認識出来ていない。
人族には場所によって魔力と言う概念があるがハルにはそれも無い様子…。
まぁ、コツを掴んでもらおうと何度か私が妖力を流したかいがあり、なんとか普段の赤壁の妖力制御は出来るようになりましたが……それはハルが赤壁を発動した時、私の手助けが必要なくなっただけです。
完全覚醒の制御には到達出来ていません。
……これは時間が足りますかね?
そう私が思案していると、
グオォォォォォオォォォン・・・・・・
黒い空間が波打つように揺らいだ。
しかしそれも一瞬でそこから先は特に異常はなかった。
私は突然の事に驚いたが、私やハルに異常がなさそうなのですぐ冷静になれた。
…今のはおそらく私の体の近くで大きな力の解放があったのでしょう。
ここからではわずかにしか感じられませんが、これは……勇者の魔力ですか。
…何をやってるんですか勇者は、と呆れられたらよかったのですがアミアさんの近くでここまで魔力を解放するという事は敵が現れた可能性が高いですね。
ん?……この感じ、どこかで。敵は私が知っている人物と言う事でしょうか?
”おーい、白露。さっきの揺れは、ってどうした難しい顔して?”
いつのまにかハル…の精神体が私の横に立っていた。
今更ながらで我が術ながら、何故ハルの姿はこの空間では反映されないのでしょう?
妖力とか見るのには便利なのですが…隣に立たれると顔が無いのでなんかこうぉ。
…慣れて行きましょう。
「いえ、何か私の知り合いがいる感じがしたのですが…気のせいですね。ここに居るわけはありませんし。」
”そうか……早く修行を終わらせて地上行こうかね。”
「…ふふ、多分今の進行状況では少なくとも夜まではかかってしまいますよ。」
ハルの細かな優しさを察して私は少し笑いながら言う。
”マジですか!?…なら、ペースをあげて行くまで!!”
何かやる気の出しているハルを見ると微笑ましくなってしまいますね。
別に馬鹿にしているとかではありませんよ。
なんだかさっきまで気になっていた事がどうでも良くなってきました。
だって現実には勇者さんがいますし…リーファさんもかなり強いはずです。
見て居た限り動きに無駄がありませんでした。
聞いた話でもそうですがおそらく彼女は勇者さんのパーティーの一人なのでしょう。
あの二人なら並の敵に遅れを取ったりはしないでしょう。
……よく考えたら不安になる要素があまりないですね。
うん、ここは現実を勇者さん達に任せて私はこちらに集中しましょう。
「ではビシバシ行きますよ!付いて来て下さいよ、ハル!!」
”いいともー!!!”
何かニュアンスが違うような?
さて、そんな白露達に対し現実のアミアの眠る宿の部屋は現在。
「なんなんだい?その剣、眷属が小生に反応しないなんて!忌まわしい…!!」
「貴方が誰なのか何の事を言ってるのかは知らないが姫に、そして姫の仲間に傷をつける事は許さない…!!」
「…なんであたしがアミアを守らなきゃいけないのよぉ。」
「……私ってなんでここにいるんでしょう?場違いにも程があるような。」
部屋は現在半壊、上の天井と部屋の窓があった方の右壁全てが壊れていた。
そして存在する人物は6人。
眠り姫アミア、そしてそのアミアに背を向け守るように敵と対時している勇者。
敵として存在し現在怒り心頭の顔をしている白スーツで髪は金髪オールバックの男。
瞑想している狐娘、白露andハル。
あ、あとアミアのベッドに結界を張って守ってる魔法使いリーファ…とリンク。
はてさて、何故こうなってしまったのか…。




