第18話 剣士との出会い
「そういえばハルさんは何故あんなところから落ちて来たんですか?」
教会を出てから俺は歩きながらリンクと変わらず廊下談義に花を咲かせていたのだが、途中リンクが思いついたようにそんな事を聞いて来た。
…この場合どう答えればいいのだろうか?
何故かと言われるとアミアの魔法が暴発したとしか言えないが…さすがにここで言うのはなぁ。
何か教会って国と繋がってそうなんだよなぁ。
リンクは口止めすれば黙っといてくれるだろうけどどこから情報が漏れるか分からんし。
それにやっぱりなんか視線を感じるな…アミアの事は言わない方が良さそうだ。
んじゃ、リンクにする返答は。
「…魔法を暴発してしまいましてそれで。」
「あぁ、なるほど。ハルさんは外から来た人なんですね、観光ですか?」
え?今ので察するんですか?
この国は魔法都市って言われるくらい魔法が盛んな筈だからこの国の人間と勘違いされると思ってたのに。
「まぁ、そんな感じです。しかしよく私が外から来たと分かりましたね。」
「それはそうですよ。この国では城の付近で魔法を使うのは通常禁止されてますから、それを知らないという事はここに居た事が無いひとだけです。」
なるほど、そういえばアミアがあのとき言おうとした”ルール”というのはこういった事の話をしようとしてたのかも。
こういう点では白露とアミアが一緒かもしれないというのは安心出来るな。
白露が独りでに町を歩いたらパニックに……ならないか、ここ魔法都市だし。
俺の安心が杞憂に変わった瞬間だった。
「それで、観光はなさいましたか?魔法が暴発して飛ばされたのならこの近くでしょうから…もう広場には行かれたでしょうね。」
「…えぇ、まぁ、多分。」
行ったと言えば行った。
リンクがどこの広場をさしているのか知らないが行った事は行った。
リンクの間違いを正すなら俺が飛ばされた距離はそんなに短くない。むしろかなりの距離を飛び越えてしまった。
だからリンクの言った広場と俺の思ってる広場は違うと思うが訂正はしない、面倒だから。
「この城を出た後なら私がこの近くの名所をご案内しますよ。信者達があの様子では教会でする事は特にないでしょうし。」
おぉ!それは助かるな!!
これで白露達を探しやすくなるな。
名所なら人が多い、人が居れば噂が生まれ広まる。白露とかアミアみたいな特徴のある奴らならすぐ噂が立ってるはずだ。
ん?そういえば城?
俺は今教会からでてるんじゃないのか?
「ありがとうございます、それではお言葉に甘えて御願いしますね。ところで今更なのですがここはどこなのでしょう?」
「ここは城内ですよ。あ、細かい位置は詳しくはわかりませんけど、ここ無駄に広いですから。」
リンクの説明はやや俺の求めていたものとは違っていたが驚く事にここは城の中らしい。
アミア、俺と一緒に飛ばされなくてよかったな。
しかしここに来たんならアミアの言っていた豚王を一目見てみたいもんだが。
あの結構器の広そうなアミアが平然と悪口を言う人物には興味があるのだが。
ま、今はいいか。王様なら見る機会くらいいくらでもあるだろう。
「そうなんですか、それにしてもどこもかしこも無駄な造りが多いですね。まさか城全体がこんな金の無駄遣いの塊なのですか?」
俺は周りの装飾を見て、なんかゲッソリしながら言う。
さっきから廊下を歩いているけど、窓一つない上に道の先が見えない。
しかも装飾がさっき教会を出た直後の廊下ほどではないにしろかなり酷い。
酔って気分が悪くなるわ…。
「…これは私が言ったとは言わないで欲しいのですが、正直そうですね。三年程前に私が所属する教会の司教であるバロカス様が神のお告げとか言いながら無理矢理このような装飾を組み込んだのです。」
なんか笑顔が怖いぞリンク。
…三年前にねぇ、ここまで城を改造出来るという事はバロカスと言う司教はかなりの権力を持ってるんだろうな。教会以外の権力を。
「こんな事をしてこの国の王族なんかは動かないのですか?」
「その疑問はもっともなのですが、動かないのではなく最初から動く気がないのですよ。司教バロカスはこの国の第2王子でもありますから。」
……もうちょっと深いところを想像していたが想定よりかなり浅いな。
なるほどねぇ、第2王子ならこのくらいの事自身の父親にでも頼めば出来ない事は無いか。
なんかミステリーのようなもんがあるんじゃないかと期待していたのに…。
そう思っている俺にリンクは言葉を続けながら言う。
「まったく迷惑な話です、目が痛いのですよこの装飾。…バロカス様、どこかで山賊にでも襲われませんかね?見ても助けませんが。」
おーい、本音がかなり漏れてるぞー。
リンクって結構腹黒いよね。俺のようなピュアな心を持たなきゃだめだぜ。
ん?助けると言えば。
「そういえばどうしてリンクは私を助けようと思ったのですか?」
そう、なんだか忘れていたが最初リンクは俺を助けるどころか逃げようとした。
ということはあの時点ではまだ俺を助ける気はなかったということ。
しかしその後にいきなり俺を助ける行動を起こした。
まぁ、助けてもらう側だから無理にとは思わないが何故俺を助ける結果になったのかその経緯は気になるね。
「あぁ、それは」「ん?珍しい時間に会うなリンク、今は祈りの時間じゃなかったのか?」
リンクが答えようとすると横から男のものと思われる声が聞こえた。
そちらの方に俺が顔を向けると同時にリンクは顔を向けながら言う。
「剣士様ですか…あれ?今日は勇者様は一緒ではないのですか?あと祈りは諸事情によりサボりました。」
勇者ぇ?!
リンクの口からかなり意外な単語が聞こえた。
おそらく今は…まだ戦ってるかもしれない男の名前。
まてよ…あれが勇者で、目に前の人の名称が剣士ということは=勇者パーティー?
というか何かリンクの雰囲気が変わったような…。
まぁ、確かに歴戦の戦士みたいに鍛えられた筋肉がものすごく印象的だな。
しかしなんでこの人目に光が無いんだ?見えない訳ではなさそうだが。
髪の色は茶髪で、それをスポーツ刈りで短くした髪型だ。ここだけなら俺の世界にもかなり居るな、見た目。
服装は、青を基調とした着物みたいなものを着ている。
しかしそれにマントがついているから違和感が半端ない。
最後に一番目を引くのが腰にかけてある剣だ、これだけはさまになっているから何とも言えない。
そこだけはまさに剣士って感じだな。
「あぁ、その勇者を捜してるんだが…っとリンクこの女性は?」
俺の方に気付いたようだ。
それにしても精神が男なだけに女性と言われると力抜けますね、どうも。
リンクが俺の紹介をしようとしてるから手で制して、自ら前にでて自己紹介をした。
自分の紹介くらい自分でするさ。
「初めまして、ハルと申します。以後お見知りおきを、リンクは私が道で迷ったところを見かねて声をかけてくれたのです。親切にもこの周りの案内もしてくれるというので甘えています。」
「これは丁寧に。俺はカルネ・バルローチ、皆からは剣士と呼ばれています。それにしてもリンク、あの怠け者が良い事するじゃねぇか。」
カルネさんが笑顔でリンクに言う。
普段怠け者なのな、リンクって。
「女性が助けを求めているなら助けるのが男の役目でしょう?剣士様。」
そうリンクが返すとなにかカルネさんはなんか微妙な顔をした。
?なんかあったのかな?
ま、俺には関係ないか、どうせだから勇者の仲間かどうかも聞いとくかな。
「勇者様御一行のかたなのですか?」
「えぇ……つかぬ事をお聞きしたいのだがここらで勇者を見かけなかったか?探しているんだ。」
あ、この人敬語慣れてないんだね。
どんどん崩れて行ってる。
でもやっぱり勇者の仲間か…苦労してそう。
ん〜、しかしここもどう答えるべきかな?
知ってると言えば知ってるのだが、ここで俺がそれを教えるとこの人も戦闘に巻き込まれそうな気がする。
ここは黙っとくのが良い気がするのだが…でもそれじゃあこの人が困るよなぁ。
どうしよう、とそう思っているとリンクが。
「ハルさんは勇者様の存在は知っているのですか?」
あー、そういえば俺って今観光客みたいな扱いだっけ。
まだこの世界に来て日が経ってないから勇者の話がどこまで広がってるのか知らない
ここは当たり障りのない設定にしとこう。
「…噂程度ですが少しなら。」
仕方ない、勇者がまだいるかは分からないが一応カルネさんに場所は教えとこうかな。
えぇーと、方向はっと。
ん?さっきまで気付かなかったけど周りがさっきまでの廊下とかなり違うな。
窓から指している太陽の光が目に痛い、装飾もあまりないしなんで気付かなかったのだろう?
まぁ、なにはともあれ外が見れるのなら助かった。
そうして俺は窓の外を見てみると目を見開いた。
窓から見える景色はさっきまでいた活気ある町を全て見渡せる程高かったから。
ここが城であると言うことを再確認される光景だった。
気を取り直して研究所がある森を探してみると、案外速く見つかった。
しかし同時に勇者が今どの辺に居るのかも分かってしまった。
何故勇者が居る場所が分かったかというと、森の方を見ていると不自然に倒れている木が見えたからだ。
白露の目で微妙に見えるレベルだから一般人には見えないだろうけど。
で、あれが何故勇者の場所に繋がるかというと…多分あれは赤狐と日護さんの仕業だろう。
だが、あの二人が森の被害何か考えるとは思えない。
で、あの二人の攻撃を受け流せる近くに居た人物は勇者、というのが答えだ。
「おい、どうしたんだあの娘。いきなり窓の外をまじまじと見てるが。」
「多分建物が珍しいのでは?外から来たそうですからおかしくはないでしょう。」
小声でリンクとカルネさんがしゃべっている。
良く聞こえないが…まぁいいか。
「カルネさん。」
俺はカルネさんに声をかけた。
カルネさんは、窓の外を見ていた俺が突然話しかけたから驚いているようだ。
「ん?!…うん、なんだいハルさん。」
「勇者様ならおそらくあそこにいらしゃるかと、あの木が倒れている所を辿って行けば会えると思います。」
俺は、さっきまで見ていた所を指差して言った。
「そうなのか?勇者のやつ…ってなに自然破壊してんだあいつ。」
窓の外を見てものすごくため息を吐きながらカルネさんは言う。
そして俺の方に向き直って、
「ありがとうハルさん、ようやくあいつの手がかりを見つけたよ。なんか昨日いきなり姫の魔力がどうたら言ってどっか行ってしまってね、助かったよ。」
そういうとカルネさんはリンクに、
「おい、リンク。ハルさんをちゃんとご案内しろよ。」
と言い、それにリンクは。
「わかってますよ。剣士様も勇者様をちゃんと見つけるんですよ。」
と返した。
カルネさんはそれにはいよ、とさらに返し俺に向き直るとまた機会があれば会いましょうと言って窓から飛んで行った。
窓の外を見てみると、すでに町の半分辺りを走っているカルネさんの姿が確認出来た。
速過ぎるだろう…。
俺がそう思っているとなんかカルネさんが行って安心したのか体の力を抜いたリンクが軽い口調で言う。
「いやー、さすがに帝都最強の一人はいつ見ても恐縮してしまいますね。」
「帝都最強?」
「あ、知りませんでしたか。剣士様は帝都に6人しか居ない【ノルン】と呼ばれるそれぞれの能力の頂点の一人ですよ。」
まず帝都がどこか知らないのだが…。
というか君の姿は恐縮してると言うより…いや、何かあったのかもなカルネさんと。
「ちなみに戦力で言うなら一人でこの国を滅ぼせます。」
そこからなにやらリンクの剣士様談義が始まった。
こいつ実はカルネさん大好きなんじゃないか?と思う程だった。
だから少しでも話題をそらすため俺はこういった。
「……ちなみに勇者様はどのくらい強いのでしょう?」
ちゃっかり勇者の実力を聞いておく俺。
「勇者様は剣士様と同じくらいの実力だと聞いています。で、さっきの話の続きなのですが…、」
また剣士様談義が始まったが俺はそれを左から右に聞き流し考えた。
勇者一行ってもしかして全員一人で国を破壊出来る戦力なのだろうか?と。
俺はリンクの話を聞きながらずっとこう思うのだった。
勇者パーティーパネェっす…。
剣士様はいつも強いポジション!




