第12話 勇者とはなんぞや?
第16話です!今回はアミア視点と勇者視点です!!勇者の方は文章ばかりですが…
sideアミア
…ここはどこだろう?
目を開けて最初に思った事はこの一言だ。
なにやら夢の中にいるような感覚、頭もボーっとして考えがまとまらない。
周りを茫然としながら見回すと、どうやらここはどこかの村の中らしい。
それも私がいる中心から村の端がすぐ見えるような小さな村。
左右にはここの村人が住んでいるであろう家がならび、村の中心には小さいが噴水のようなものがある。
【いやー、まさかあの上代一族の者が来るとはの〜。】
!?
声のする方、私の目の前を見てみると噴水の上に座っている女性がいた。
私は注視して見ていた訳ではないがさっきまで噴水を見ていた時には女性はいなかったはずだ。
ということは目の前の女性は突然現れたことになる。
しかし魔方陣やそれに属するような変化は確認出来なかった。
どうやって目の前に突然現れた?私が気がつかなかっただけ?
【おやおや、色々考えておるようじゃが今のお主では答えは出ぬよ。】
…顔に出ていたのだろうか?
この人は…人かな?とりあえず誰だろう?
【む?妾の事も覚えておらんかの?】
相手の口ぶりから察するとどこかで会った事があるらしいが記憶に無い。
私は会った事が無いと思う。だってここまで見て分かりやすい人物を忘れるとは思えない。
目の前にいる女性には私的にかなり記憶に残るであろう特徴が3つある。
一つは肌と髪の色。
肌は濃くもなく薄くもなく、とてもちょうどいい感じの赤色で髪は肌より少し濃い感じだ。
もう一つは布の少ない服。
ぶっちゃけ白い布を胸と下半身の最低限のところに巻いてるだけです。ヘソは出ていますし、足も太ももから見えていて…破廉恥です。
最後は…これが決定的なのですが、背中に翼のようなものがあるのです。
何故、翼のようなものと私が言ったのかと言うとその翼の材質がクリスタルのように見えたからだ。
形は翼なのに薄く赤い透明なゴツゴツしたフォルム、どうみても普通の翼には見えない。
異常の事、あ、間違えた。
以上の事から私が目の前の女性を忘れる事は無いと思うのです。
あと付け加えるなら顔が美人なことくらいでしょうか…胸がもう少しあれば完璧
そう考えていると女性が、
【ふーむ、妾のことも覚えておらんか。…少しいじり過ぎたかのぅ?】
そんなに印象的な出会いだったのだろうか?さっきは会った事が無いと思ったが、私が忘れているのなら早急に思い出さねば。…というかいじったって何を?
今は一応記憶を呼び起こす意味でも情報が欲しいですね。
「貴方は誰なんですか?」
【開口一番がそれか。…まぁ、仕方ないか。妾は…、】
…?
何故途中で言うのをやめたのだろう?
【…あー、そういう制約だったのぅ。分かった、分かったのじゃ。だからそう五月蝿く言うな。】
虚空になにか言いだしましたね。
そういえば本にこういう独り言を言う人はかなり追いつめられた状況にいる、と書いてあったような…。
…早く思い出して安心させたあげなければ!
私がそう考えてる中、女性は言った。
【というわけで、お主には妾の事を教えてやる事は出来ぬ。】
……え?何がという訳なんでしょう?主語をつけて下さい、主語を。
と私は言いたいのだが咄嗟には言葉が出ない。
【ま、思い出したらまた来るがよい。】
へ?
そう言ったあと女性は噴水から私の目の前にいつの間にか移動していた。
そして手をこちらに伸ばし私の額に、
【これは餞別じゃ。】
デコピンをくらわせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「痛ぁ!?」
バサッと何か自分に被さっていたものを取り払って反射的に飛び起きた。
「な、なにする……あれ?」
いきなりのデコピンに文句を言おうと思ったら目の前にはもう女性はおらず、そればかりかさっきまでとかなり周りの風景が違う。
さっきはどこかの町の中だったが、ここは森のなかのようだ。
ふと、さっきは気がつかなかったが今の私の膝のうえにはマントのような布がかけてある。
横から声が聞こえた。
「アミア起きましたか!…大丈夫ですか?」
「ハルさん。」
そこには手に大きな葉っぱを持ち、その中に水らしき液体を入れてこちらに小走りで来るハルさんの姿があった。
見ればいつも着ているマントが無い、おそらくこのかけてあるものはハルさんのマントだろう。
…私は気を失っていたのですね。
前後の記憶がハッキリしませんがとりあえず言える事は。
私は現実に帰ってきたようです。
*とある変態とストーカーを任された人の話
どうも、僕は通称・勇者、称号も勇者です。
名前はなんですかって?
…僕はこの世界にきて様々な事を学びました。そしてって、え?そんな誤摩化しはいいからさっさと名前を言えって?
まぁ、少し聞いて下さい。
僕はこの世界に来て様々な事を学びました。そして僕は自分自身にある一つの誓いをたてたのです。
僕は自分の名前を姫から聞くまで、他の者には絶対に自身の名を明かさない、と。
そういえばこの誓いを他の者に言ったらなんか名前を言ってあげましょうとか言ってくる気違いなお姫様が増えたな。どう気が狂ったら僕の姫が貴方達みたいなアバズレになるのかといつも疑問に思ってたけど。
え?前半の文いらないじゃないかって?
そんなことはありませんよ。事実僕はこの世界に来て様々な事を学んだよ。
魔法とか剣術、仲間の大切さ、人の醜さとか、偏見・差別、物事の矛盾。本当に色々な事を学んだ。
最初この世界に召還された時の王達の仕打ちも今ではいい経験だったと思ってるよ。ハハ
でもね、この世界に召還されてもっとも感謝している事は本当の意味で美しいと思える、そんな人と出会わせてくれたことだ。
僕はあの時あの場所で姫と会っていなければ、自身が全てを破壊する魔王になっていたんじゃないかと思う。
勇者として差別され、どんなにボロボロになっても勇者だから大丈夫。出来ない事があれば勇者なのに何故こんな事も出来ない。など勝手に先入観だけの思い込みで僕自身のことなど考えてもいない。時々近づいてくる者も金や名声が欲しいと、媚ばかり売ってくる連中ばかり。
あの時は人に絶望していた。
だがそんな時だったんだよ、姫と出会ったのは。
あれは僕が憎悪に飲まれそうになっていた時期だった。
その時の僕はもう魔王などよりこの国にどう復讐してやろうかと考え、図書室に隠り本から知識を吸収していた。
いつも独り言で王やら騎士団長の悪口をっていたと思う。
そんな事をしているとき突然ドアが開いたと思ったら姫が”魔道書!”と叫んでこちらに早足で近づいた時は驚きから茫然としていたっけかな。
そして聞いてみるとそのとき僕が持っていた魔道書を読みたかったそうな。
貸したあげた時の姫の笑顔は今でも鮮明に覚えている。可愛かった!
…本が手元から突然消えたのには驚いたけど。
姫が本を読みふけっている間に魔法使いとの訓練の時間になった。
僕がここに帰ってくる頃ににはもういないだろうなと残念に思ったよ。
その時の僕は何故残念に思ったのか分からなかった、何か心が軽くなった気がしたのであの娘と会えてよかったと思う程度の認識だった。
だから帰ってきた時、姫がまだいたことに驚愕と歓喜が同時に発現したのは自然だったのかもしれない。
この限られた空間の中で癒しを得られる存在なんて彼女しかいなかったから。
しかも帰って来た僕に気付くとまず僕の心配をしてくれた。
そりゃあ、元の世界とかならこれだけボロボロの人がいれば心配をするのが当たり前だったがこの世界ではまともに心配してもらったのは初めてのことだった。
だから反射的に”勇者だから”と自分の忌み嫌う一言を言ってしまった。
今思うなら僕はその時の自身に大規模魔法をくらわせたい。
しかし彼女はそんなことは関係ないと言ってくれた。
僕がこの世界に召還されてもっとも言って欲しかった言葉を、彼女は当り前のように言ってくれたのだ。
その時は嬉しさと困惑のあまりかなりの時間呆然と固まってしまった……僕の馬鹿野郎!
気付いた時には、怪我をしていた部分の処置がほぼ終わっていた。
姫はもうドアのところに移動していて僕の目線はとっさに姫を追った。
最後に姫は、
「…がんばってね。」
と言って去っていった。
その一言だけだがその姿は純粋に美しいと思った、僕は赤面して天使とか女神など、そんな単語を思いうかべながら本が大量に積み重なった机に倒れてしまったけど。
その時には僕の中にあった憎悪などの感情は消えていた。もはやどうでもよくなったからだ。
その日以来彼女と会う事は無くなったが僕はそのことに安心した。
もっと強くなって彼女の隣に立つに相応しい存在になる。それが僕の今現在までの目標。
そう決めてからの僕の成長は早かった。
騎士団長には、次の日の摸擬戦で圧勝した。なんか震えながら見事ですとか言ってたけど、面倒なので笑顔でそうだねとだけ言っておいた。顔が涙と鼻水だらけでキモかった。
魔法使いには、魔道書一冊を2日で覚えて魔法の物量戦で圧勝。その時から顔を赤らめて僕に突っかかってくる事が多くなった。よほど負けたのが悔しかったのだろう。
そんな僕の急激な成長から予定より早く魔王討伐に行く事になった。
もはや城に僕の相手が出来る者がいないからだ。
だから僕は旅に出る前に王にこう言ったのだ、
「僕が魔王を討伐した暁にはある娘を僕の嫁に下さい。」
さっきから姫と呼んではいたがこの時の僕は図書室であった女の子が誰か知らず名前すら聞いていなかった。顔立ちや髪の色から王族に属する娘だと思っていたがこの城の姫のリストにあの娘はいなかった。
だからこの約束は僕が帰って来て彼女を見つけた時、王に邪魔されない為の保険だ。
そう思っていると王はなにやらニヤケ顔で
「よかろう、よかろう。で?どの姫じゃ?」
何かこの豚キモ王は勘違いをしているようだ。
誰があんな化粧ばかりのアバズレ共に心が動くものか。マシなのは第5王女くらいだろう。
「違います。あんなアバz…姫達では無く。この城にいるはずの少女です。」
危ない危ない、もうちょっとで本音が漏れるところだった。
「なにぃ?!姫達では無いと申すか!?」
「はい。」
「何故!、……いや、で?そのものの名は?」
「分かりません。」
正直に答えた。
しかしそこからは名前も知らないものなどどうでも良かろう、だから姫の中からとかそんな内容の事ばかり話してくる始末。
もう少しでキレそうな僕がその女の子の特徴を言うと何か知ってるのか王は突如話すのをやめた。
だが、知っているのならと騎士団長から聞いた王の趣味を軽く披露して脅してみた。
そうするとぽろぽろと話しだしたので、その話に僕は耳を傾けた。
そこでようやくあの少女がこの王族の姫であると分かったのだ。
そして少女の名はアミアというところまで聞き出したが、何故アミア姫の事を国民などに明かさないのかなどの肝心な事はどんなに脅しても口を割らなかった。
とりあえずは姫との婚約を許すという言葉は聞けたので、もうここに用はないとすぐ魔王討伐の旅に向かおうとするが最後に、
「あぁ、そういえばアミア姫には僕の事を伝えておいてください。あと、僕がいない間に姫になにかしたら貴方達を…殺しますから。」
と言った。言葉の最後はかなりドスの効いた声色で。
そうして王達の方を振り向くことなくそのまま城を出た。
で、そのままなんやかんやあって帰って来てみれば王が人の約束を守ろうとしなかったり、姫が行方不明になったりと…。
まぁ、姫に遠目だが会えたからいいや。
それで…何故僕がこんな事になってるのだろう?
崎守と言われていた赤い髪をした狐族の男と涼華と呼ばれている緑の髪をしたこれまた狐族の女。
その二人が戦って、戦ってんのかな?あれは。
「ふむ、涼華をあやすのには苦労しますね。マイスイートハートはどこに行ったのでしょう?お手洗い?…あぁ!私の為に身だしなみを整えに!そんなことをしなくても貴方は美しいのに!!」
「崎守様ァァァァァァァァァァァ!!!そんな美しいだナンテェェェェェェ!!!!ア・イ・ガ・ア・フ・レ・ルゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
なんてやりとりをさっきからずっとしているのだが…。
なんかさっきまでいた精霊のような狐族も僕の肩に手をおいて消えてしまったし。
直感だが最後に”ここは頼みましたよ”って言ってた気がする。
まぁ、それはどうでもいいとして。
さっきから僕は目の前にいる二人が起こす衝撃波に似た何かを斬っては消し、斬っては流しという作業をずっとしている。
何故そんな事をしてるかって?何故姫を追わないのかだって?
そりゃあ、
「こんな二人を町にでも行かそうもんなら姫が危ないからに決まってんだろうがぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ということである。
あぁ、姫に会いたい。
結果的には勇者らしいことをしている勇者です!
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