第5話 勇者の笑顔は時に不気味!
第8話です!内容的には全然進んでません...。2話連続でアミアと勇者に関してです。side勇者もぼちぼち書いていきたいと思います。
「さて、説明をお願いしてよろしいでしょうか?」
あれから俺達はひとまず研究所に戻り、そして今は三人で話し合っている。
黒こげになった勇者(仮)も研究所に運んだが念のために白露の言霊(だったかな?)を使って動けないよう植物で縛り付けた。
...言霊使った時、研究所の床を植物が貫通してきたのは驚いなぁ。
しかも白露はなにやら縛っている植物に付与効果を追加しているし。
赤狐くらい警戒してるな...。
「え、えぇっと、説明と言われましてもこの青年が我が国の勇者としかいいようが...。」
「...勇者ですか。」
《...この方が。》
目線を下に向けて雁字搦めにされている青年を見ると何故かまだ満面の笑みを浮かべながら気絶している。
さっき俺と白露がとっさに反応したのは、赤狐がきたと思ったからだ。
叫び声を聞いた瞬間、直感的に変態がこちらに近づいていると感じ行動を起こしたが実際に被害にあったのは赤狐ではなくこの勇者と呼ばれる青年だ。
普通ならここで申し訳ないという気持ちを持つべきなんだろうが何故だろう、こんな顔されてると微妙な心境になる。
しかも俺と白露が...俺はともかく長年?赤狐に追われていた白露が反応するということは、この男は赤狐なみの変態か変人な気がする。
「それで何故こんなに笑顔なのでしょう?正直なところ少し不気味なのですが...。」
《えぇ、まったく。何か赤狐さんを思い出させる笑顔ですね。》
そう言う俺の質問にアミアは真剣に考える様子を見せたが、すぐに分からないという顔になり言った。
「...さぁ、私にも分かりかねますじゃ。この方とは昔一度会っただけですので。」
どうやら面識はあったらしい、まぁ、勇者と姫なら会った事があるのは当たり前なのかな?
アミアの詳しい事は知らないからなんとも言えないが、勇者を見た彼女の表情に嫌悪感はなくどことなく安心しているようにも見える。
アミアは勇者の目の前でしゃがむと勇者の顔を見ながら少し微笑んで小声で言った。
「...よかったのぅ。元気そうで安心したわい。」
...まぁ、小声で言っても狐族の聴覚じゃ普通に聞き取れてしまうわけですが。
ふむ、友達かと思ったけど違うみたいだな。
さっきの安心したっていうのもどうやら勇者が来た事からではなくあの青年の存在自体からきたもののようだ。
過去になにかあったのかな?
《なにか友達や恋人というより兄妹のような感じがしますね。》
そうだなぁ。確かにそれが一番しっくりくるかな。
そう思っていると、
一言いったアミアは勇者の頭を一回軽く叩くように撫でると、立ち上がって俺達に言った。
「説明は移動しながらしますじゃ、ひとまずはここを離れて町の方へ向かいましょう。」
あれ?ここを離れる事に異議はないけど、アミアって確か今追われてなかったっけ?
町なんかに行ったらやばいんじゃないだろうか?
そう思い俺はアミアに聞いてみる。
「町へ行ってはアミアが危ないのではないのですか?城のものから追われているのでしょう?」
「いえ、それは大丈夫です。城のものは私を町内ではおおっぴらに捕まえる事はできないのです。その理由も移動しながら話しますじゃ。」
了解、なんか急いでるようだし行きましょうか。
「わかりました。行きましょう。」
《久方ぶりのツウェルペトールの町、この状況ながら楽しみですね。》
実は俺も少しわくわくしてたり。
いざゆかん!まだ見ぬツウェルペトールの町へ!!
・小話 勇者との出会い sideアミア
*まだアミアは婆様と会っていません。
私がいつものように城の中を誰にも見つからないように散策していたある日の早朝。
「ん?」
私が今日の散策を大体終え城の中を歩いていると、窓際から何か小声が聞こえた。
確かここは図書室だな。こんな朝から誰かいるのかな?
中を見てみると全体的にかなりボロボロの少年が本を大量に積み上げてなにやら小言を言いながら読んでいた。どうやらさっき聞こえた小声は彼のものだったらしい。
しかしあの子大丈夫かな?なにやら目が血走っているようにも見えるけど...。
うん、ちょっと失礼だけど少し興味があるしなんて言ってるのか聞いてみようかな。
と思い耳を澄まして漏れた声を聞いてみると
「絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対帰ってやるぅぅ!僕はここにいるべきじゃないのに!!僕はここにいないはずだったのにぃ!!あのクソ王がぁぁぁぁ!!魔王を倒せだぁ!?しかも倒せなきゃ帰さないぃ!!??自分の国の話だろうが!!!あの騎士団長って奴も”それでも勇者か?”とか言いながらボコボコにしやがって!!なんだよあの目は!?人の事をゴミみたいに見やがって!!!そんなんならお前が魔王を倒しに行けば良いじゃないか!!!!あいつも...... 」
...聞かなきゃよかった。
ものすごく耳を塞ぎたくなるような内容だった。
どうやら私の父は彼にとんでもない理不尽を押し付けてしまっていたらしい。
まだ途中までしか私は知らないのだがこの国には勇者召還という儀式がある。その儀式の内容は確か魔王と言われる強大な力を持った魔物を倒すため異世界から勇者と呼ばれる人族の人間を召還し、力を貸してもらうというものだったはず。
その証拠に過去の文献にも勇者と呼ばれる人はその時代々に一人は存在している。
...しかし今回は、力を貸してもらうどころか無理矢理従わせているようなもののようだ。
さらに現在の国王、私の父の性格は傲慢であり無駄にプライドが高く、その周りも似たような人達を囲っている。
おそらく話に出て来た騎士団長もその部類の人だったのだろう。
私はそんな彼に同情の気持ちがわいた、助けたあげたいとも思った。
....だが、私に何が出来るというのか。人の目を気にしてなければ部屋の外にも出る事の出来ない私に。
人を慰めるすべなど知らないし、ここで出て行っても私がこの場で誰かに見つかれば彼にも迷惑がかかるだろう。
おとなしく部屋に帰るのが最善か...。
私はそう思い部屋に帰ろうと目線を彼から廊下に移動しようとしたら
ん!?
向けようとした目線を彼ではなく、彼の横にある本に向けた。
いや、反射的に向かった。
そして、
ガラッ!
ドアを勢いよく開けて
「魔道書!」
そう叫んでしまっていた。
「!?」
少年は突然の来訪者に戸惑いを隠せず呆然としている。
しかし私の勢いは止まらず、少年の方にズカズカと早足で近づいて言う。
「あ、貴方、そのまど、本をど、どこで見つけたの?」
「え?...あ、あぁなんかクソお、いや国王が魔法も覚えとけばなんとか言って渡してきたんだけど..。」
少年はまだかなり戸惑っている様子だ。かく言う私もリサ以外と話した事がなかったためこの時はかなりどもってしまった。
しかし、私は言葉を続けた。
「そ、その魔道書!少し見せてもらっちゃだ、駄目かな?!」
「え?」
そう私は魔道書がずっと読みたかったのだ、リサから存在は聞いていたが魔道書は高価なうえに現存する数もそう多くないそうで、あの部屋にいるだけでは絶対に見れない・読めないものだった。
だが!
その魔道書が!
まさに!
目の前にぃぃぃ!!
この本を読む為なら前に本で読んだドゲザというものをする覚悟!
「お願いします!見せて下さい少しでいいので!!ほんのちょt」
「い、いや別に駄目って訳ではないからね、ただ驚いただけで...どうぞ。」
少年は積み上がっていた本の中から一冊、私に差し出してきた。
魔道書である。
パァァァっと私の顔は笑顔になる。
「あ、ありがとうございます!」
シュッ
「え?あれ?」
差し出された魔道書を高速で受け取った。
早すぎて少年には突然消えたようにみえたのか混乱しているようだ。
でも、今そんな事はどうでもいい!さぁ、読書の世界へ!!
ゴーンゴーン
っは!?
しまった!昼の鐘がなってる?!
そろそろ戻らないと、リサにまた説教されるぅ!?
魔道書はまだ3分の1しか読めていないのに...。
...しかし、私が数時間かけても読みきれないなんてなんという情報量!
これからが楽しみです!
あ、これからって大丈夫かな?
少年にちゃんと聞いとこう...あれ?少年どこ行った?
ガラッ
「...あれ?まだいたの?」
背後からドアを置ける音と同時に少年の声が聞こえた。
おぉ、そっちにいたんだ。
さっさと少年に魔道書の事を聞いて部屋に、ってなんでさっきよりボロボロ?!
振り返った先には最初見たときよりボロボロの少年がいた。
「だ、大丈夫ですか?というか何故そんなにボロボロなの?!」
「はは、魔法使いの女の子に魔法撃たれまくってね...大丈夫だよ、勇者だしこのくらい....。」
そんな沈んだ声で言われても説得力ないよ。
「いえ、勇者だとか関係ありませんよ!こっち来て下さい、ちょうど包帯と水持ってますから!」
「え?...い、いやいいよ。こんな傷ならすぐに...、」
「いいから来なさい!」
まったく、何を遠慮しているのか。
それにしても部屋から抜け出る為の道具として持っていた包帯と水がこんなところで役に立つとは思わなかったな。
...というかまだ来ない、そんなにいやなのかな?
...はぁ、仕方ない。
私は一向に来る気配がなくドアの前で固まっている少年に痺れをきらして、自分から歩み寄っていった。
これで嫌がろうが知った事か、と何故かいつまでも呆然とした状態から回復しない少年を放っておいて、私の知る限りの処置を少年の体に勝手にやっておいた。
途中何回も話しかけたのだが返答はまったく返ってこなかった。
処置が終わった私はそのままドアに向かって行きドアを開けて出る直前に振り返り、
「....がんばってね。」
と言って部屋に戻る為の帰路にたった。
そのあと後ろから何かが倒れるような音が聞こえた気がした。
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