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狐の嫁入り逃亡記  作者: カラネコ
第1章 赤からの逃亡
16/70

山賊との戦い? 村長編オマケ有り

今回は第一章の終わりです。今週の日曜は更新を休みます。これからも狐の嫁入り逃亡記をよろしくお願いします!



 side村長


「さて、どうしたものかのぅ」


 白露様と宿で別れてから、儂は村唯一の出入り口であるユデ門に向かった。

 門と言ってもどこかの国にある大層な門ではなく、最低限のもので作ってある木製のものだ。

 したがって山賊などの攻撃を受ければひとたまりも無いため、防壁にはなりえないのである。


『村の守備を固めておいて下さい』


 と白露様から言われているため儂はどうやったら一番効率的か考えていた。

 一応、木製ではあるが槍と木刀などの武器は村人と協力して作っていたので多少の抵抗は出来るつもりではあるがこちらはあくまで女子供と老人しかいないためどこまで抵抗出来るかはたかが知れている。

 だからさっきから悩んでいた。

 これは守備ではなく自殺しに行くようなものだ。

 せめて男どもがもっといれば話は別だったが、いないもんは今言っても仕方あるまいし...


「時間も無いし、せいぜい出来る事は山賊どもを少しの間放心させる事くらいかの」


 作戦は一応考えてあるが、これは完全な時間稼ぎだ。

 しかも無視されかねないこの策は非常に危険だ。出来れば使いたくはない

 そう思っていると村で数少ない若い青年が話しかけて来た。

 

「...村長大丈夫なのですか?」


「なにがじゃ?」


「この作戦の事です。というかこれは作戦と呼べるものなんですか?」


「...ふむ、言いたい事は分かる。じゃがこれは儂が知る策の中で実例もあり、かつ皆が無傷でいられる策よ。」


「...そうなんですか?こんな作戦がそんな大層なものには見えませんが...正直に言うとこれには馬鹿しか引っかからないと思います。」


「ふぉふぉ、確かにはたから見ればそうかも知れんのぅ。しかし人間なんぞここぞという時にはみんな馬鹿になるものよ」


 そう、この作戦は初めてみるものにはかなり馬鹿な作戦に見える。

 その分成功すれば無駄な血を流さずに済むそんな作戦だ。


「.....こんなのどこで知ったんですか?」


 おぅ、今日はよくしゃべるのぅ。

 う〜ん、そうだのぅ。

 これを知ったのは、そう儂が法廷士官だった時の事だったはず

 なにか珍しい書を見つけた、とその時の同僚にすすめられて所々ぬれていて読めなかったがかろうじて読める部分がありその一つに記してあったものが今のこれじゃった。


 名前も書いてあった、確か...



「空城の計、だったかのぅ?」





ーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーーーー

ーー



 

「何しやがんだこのジジイ!!」


「村長ぉぉぉぉぉぉ!?」


「あんたが一番手が早いよ!」


「作戦失敗するの早すぎるのよ!」




 やってしまった....







 結論を言うと、空城の計の作戦を実行した。


 ちなみに空城の計とは簡単にこの状況で言うなら、あえて村と門を空けて相手、ここで言う山賊に[これは罠なのでは?]と疑問に持たせ、村を攻めるのを躊躇わせあわよくば帰るように誘導する心理を利用した策である。


 なぜならすぐ実行出来るものがそれしかなく予想外の事が起きたからだ。

 それは山賊が予想よりかなり早くこちらに着いてしまった事だ。

 理由は山賊達が数を分断して速度を速めたかららしい。


 何故そんな事を知ってるのか、と聞かれると山賊達が自慢げに教えて来たからだ。

 もう分かるかも知れないが空城の計は失敗した。

 むしろラッキー!と言いながら山賊は村に普通に入って来た。

 この無能共が...少しは疑えや!

 

 そして


「お前ら、銀狐はどこだ?」


 そんな事を聞いて来た。

 予想通りとはいえ、虫酸が走る。


「おーい、どこだって聞いてんのよ。さっさと言わねぇとてめえらも無事じゃすまねぇぜ?」


「聞いてどうするつもりじゃ...」


 もうわかりきっているが、もしかしたら違うかもしれない、という淡い期待を込めて儂は聞いた。


「そんなの決まってんだろ。取っ捕まえて奴隷として売るんだよ。銀狐なんてレアもの、普通の狐族なんて比じゃねえ額で売れるだろうよ!」


「わかったらさっさと、ぶっべらぶるぅえ!?」


 気がつくと殴っていた。片手で五連撃、人とは限界を容易く超えられるのじゃな。

 かなり我慢した方だと思うのじゃ、許してほしい。

 反射的にやってしまった、後悔はしている?反省はしない


 そして始めの冒頭に戻る。




「こっちが下手に出てりゃあ、調子に乗りやがって!!」


 さっき殴り飛ばした山賊がすぐ起き上がって怒鳴って来た。


 いつ下手に出たってんじゃ、というか回復早いのぅ、こいつ

 ...儂ってそんなに鈍ってるのかのぅ?こんな若造がすぐ起き上がってくるとは...また鍛え直さにゃあならんかな

 山賊の...長いから頭領じゃな。

 頭領はまた怒鳴りながら言う。


「今お前らの命を握ってんのはこの俺だ!てめぇみてぇな老いぼれなんてなぁ、俺が言う一言ですぐ死ぬんだよ!分をわきまえろや糞ジジイ!!!」


 ...一対一なら今すぐベコベコにしてやるぞ若造が

 しかし今儂がする事は個人の喧嘩ではなく、村人達を守る事

 白露様が来て下さるまでの辛抱じゃ

 というか今思ったのじゃが


「その糞ジジイにさっきぶっ飛ばされたのはどこのどなたじゃったのかのぅ」ボソッ


「んだと!?聞こえてんぞジジイ!!!」


 あ、しまった声に出ていたか?!

 特に後悔はしていないがタイミングが悪すぎた

 こりゃ、ヤバいかもしれぬ...しかも儂のせいで


 頭領はさっきよりでかい声で怒鳴った。


「そんなに死にたけりゃぁ、望み通りにしてやるよ!!野郎ども!!この村の連中をこr


 ドゴンッ!!!


 頭領が命令を部下に出そうとしたところで儂と頭領との間に何かが降って来た。

 土煙が上がってその姿は見えない。

 だがその正体はわかっている。

 それを待っていたのだから当然と言えば当然だろう。


 しかしタイミングが絶妙ですなぁ

 儂がまだ若かったら惚れていたかもしれませんじゃ

 というか登場がいつも空からなのはなぜなのじゃろうか?

 最初に村に来た時しかり、今現在降って来たのもそうだ。

 

 まぁ、ここからは儂や村人は脇役に徹しますじゃ

 儂らが並んで戦えば必ず邪魔になりますからな

 さて、お手並み拝見としますよ


 土煙がはれてきた


 

 白露s...................................だれ?


 てっきり白露様が来たと思ったらそこに現れたのは髪は銀髪で白露様といっしょだが肌は褐色で全身から炎のようなものを薄ら出している白露様と同じくらいの少女だった。


 あまりにも白露様と同じところが多い為とっさに聞いてしまった。


「あ、貴方様はどなたですじゃ?」


 そう聞くと少女は目線をこちらに向け何かに耐えているような顔で答えた。


「ハル..で....すが」


「ハル様ですか?」


 確認のためまた聞くと黙ってしまった。

 どうやら二度言うきはないらしい。

 それに名乗った名前からもやはり白露様とは別人らしいが親縁かなにかだろうか?

 容姿もそうだがなにかそんな感じがする、所謂勘である。


 ん?

 気付くと周りの視線全てがハル様に向けられていた。

 まぁ、突然空から銀狐が降って来たらこうなるのは必然じゃな。

 向けられている本人も困惑しているようだが。


 次に会話が始まったのは頭領がハル様に話しかけてからのことだった。

 それから相変わらず偉そうな上から目線で話しかける頭領に若干のいらだちを覚えたがそれより衝撃的な事を聞く事になった。

 

 上代一族


 それは世界レベルで知られている狐一族の序列1位。

 ただでさえ強い狐一族の中で頂点に君臨する大陸の一角を担う最強の一つだ。


 だが上代一族の集落はこの大陸には無く、南の大陸にあるとされている。

 だからこの少女が上代一族だと言ったら皆驚いたのだ。

 まず、ここには絶対いないであろうからだ。

 だから儂は最初は嘘だろうと思った。


 しかし村人や頭領以外の山賊は大体が今の話を信じているようじゃ

 山賊どもの中にはもう帰ろうと言うものもちょくちょく出始めておる

 確かに本物だった場合ここでみんなお陀仏、それくらい戦闘力が違う

 これでおとなしく帰ってくれるならそれほど今の状況では嬉しい事は無い


 とそんなことを思っていたが、頭領の突然の笑い声

 そこからの部下への鼓舞

 

 そこで儂は思った。

 こいつ、道踏み外さなければどこかの国で部隊を率いられそうじゃ無いか?と


 そして頭領と他の山賊はハル様に向かって突進していった。

 最初は声を上げた儂じゃったがあとでこれが要らぬ世話だったと気付かされた。


 もうここからの流れは


 頭領・山賊達が突撃した。     


 頭領が吹き飛んだ。


 山賊達が空を舞った。


 山賊掃除終了!


 と、かなり一方的に終わってしまった。



 そして今は唯一意識がある頭領とハル様は何か話している。

 そうしたらさっき山賊が入って来たところから三人の男が走ってきた。

 頭領達を救いに来たのかと身構えたがどうやら様子が違うらしい。


 気になったので失礼ながら少し盗み聞きをした。


『ーーーー70人ーーーーーー全滅ー!?』


『––赤ー狐–男』


 どうやらかなり深刻な事らしい。

 70人全滅ってなにがあったって言うんじゃ

 ところどころ聞きとれ無かったところがあったが...最後の赤狐とはハル様の狐族の仲間かの?


 と思った瞬間、ハル様が白露様になった。

 意味が分からないと思うが儂もまったく分からないのじゃよ

 だから思わず


「は、白露様??!!!!」


 と言ってしまった。

 白露様はこちらに一度目線を送ったあと、ものすごいスピードで門とは逆方向の森のなかに消えて行った。


 なるほどのぅ、理解しましたじゃ。

 

 儂はさっきの目線の意味をすぐ理解した。

 あれは”今のことは気にするな。それよりこれからここにくる赤狐を相手をしろ、少し時間を稼ぐだけで構わない”と言う意味だったのだろう。


 まさか儂が昔、法廷士官であった事を見抜いていたとは思わなかったわい

 しかし良い仕事を残して行って下さる

 血を流す訳でもなく、命を奪わなくても良い、時間稼ぎとはやりようによってはそれが出来る役目だ。

 儂はもう生きるために必要な最低限の命以外は奪いたくないのじゃ


 だから儂はこのような形での恩返しの機会をくれた白露様に感謝する!


 む、いかんいかん

 まずやる事があるのぅ


「皆のものはもう各自の家に帰っていなさい」



 まずは村長としての責務を果たしますかいの













 side赤狐


 どうも!マイスイートハートが大好きな赤狐です!

 もちろん私も大好き、いえ愛しています!!

 これが相思相愛を超えた先にあるものなのですね。

 

 その行き着く先は結婚からの夫婦生活...うふふ、そして隠居して静かな生活そこから...うぅ(泣)

 彼女が寿命とはいえ亡くなるなんて考えるだけで涙がぁうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


 グスッ、いけませんね、先過ぎる未来を考えるのはよしましょう。

 たとえその時が来ても私は彼女の顔を最後まで見ながら、手を握って愛してると伝えるのです。

 その瞬間に到る為に伝えるのです!私は貴方を


「ごはぁ!!!!?」 


 ...私の未来の決心を汚い声が汚しましたね。

 まったくこの汚物どもはどうしましょうか。


 そういう赤狐の周りには60人を超える人間がうめきをあげながら横たわっていた。


 さすがに殺すと私と彼女の明るい未来に傷がつくかもしれませんし。

 まぁ、そんなことでは傷など本当はつきませんけどね!

 私たちの愛の前に汚物は浄化されるのですから!!

 それに彼女は優しい、殺す事は彼女の、私の婚約者の名誉を傷つける行為です。

 絶対にしません!


 そういえばこの汚物にさっき聞いたところアゲ村にマイスイートハートがいるかもしれないという情報が手に入ったのです!

 やはり運命と言う糸は私たちを導いているのですね!

 もしやこの汚物達もその糸を私に導く為の大事なパーツだったのかもしれませんね。

 それなら汚物と言う呼び名は酷すぎますね!石ころにしてあげましょう!!

 


 さて、彼女の害になりそうな石ころはあらかた片付きましたね!


 すぐにアゲ村に行きましょう!!!

 待っていて下さい!マイスイートハートィィィィィィィィィィ!!





 



「着きました!」


 ふぅ、確かにここなら彼女がいるかもしれませんね!

 この村からはなかなか香ばしい油揚げの匂いがします。

 彼女なら食べに来るであろうところですね!


「で、貴方はだれですか?」


 私が村にこれ以上進めない、結界ですか...


「儂はこの村の村長ですじゃ」


「白露様より貴方をしばらく止めてくれと申し使っておりますので、お相手つかまつる」


 なるほど、法廷士官ですか

 よくわかりました。マイスイートハート、これも貴方が私に課す試練なのですね!

 記憶喪失で周りが見えず、本心では私と会いたいと思っているのに心を未だに開けずにいる。

 そしてこれは私がその心を開くに値するかをはかる為の試練!!


「いいでしょう!謹んでお受けする!!」


「では、いざ参る!」



 戦いの幕が上がる。




 そして勘違いは加速する












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