閑話 銀狐の追憶 1,追放か...え?婿取れ?!
第10話です。今回は白露の過去を少し書きました。楽しんで頂けたら幸いです!
私に友達ですか...ふふ、前までの私なら考えられませんね。
思えば、ここに来るまでが大変な旅でした。
確か始まりは.....
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「貴方には嫁入りしてもらう事にしました。」
「はい?」
突然部屋に来て告げられた母の言葉に私は呆然となった。
え?嫁入り?
「相手の方くらいは、貴方に選ばせてあげます。この書類の中から一人選びなさい。あぁ、なんなら会っても構いませんよ。」
私の心情など知った事かと母は、さらに言葉を重ね、一束の書類の束を渡してきた。
見てみるとそこには違う種族や国の様々な男の写真と趣味などのプロフィールが紙にびっしり書かれていた。
しかし私の頭の中は、何故?という疑問が渦巻いていた。
「え!?あ、あの!なんでですか?」
「何がです?」
「嫁入りなんて、...何故、こんな急に?」
そう、急すぎるのだ。
確かに私は、立場上将来的には嫁ぐ話をするかもしれないが今の私には早過ぎる。
まだ、姉達が嫁いでもいないのに順序的にもおかしな話だ。
「...それは貴方が一番理解しているのではないですか?」
「......」
冷めた口調で母はそう言った。
...確かに、私にはすぐにこの家、この里からでなければならない理由がある。
それの検討にために最近は部屋での軟禁状態が続いていた。
しかしそれは、一族から追放される、というかたちで終決すると思っていた。
私自身もそれを望んでいた傾向があるため、この嫁入り話にはかなり驚いた。
「...それなら、なおのこと。何故、嫁ぐ事になるのですか?私のアレ(・・)は、あなた方にとって嫌悪する対象でしょう?一族の恥を振りまく行為にしかならないと思いますよ。」
私がこの里を抜けなければならない理由はその”アレ”にあります。。
本来なら一族の象徴とも言えるものなのですが、私の場合はある理由で恐れと嫌悪の対象になっています。
「......それでも、貴方に流れる血は我が上代一族の中でも高位のもの。それをみすみす腐らす事は先祖に対する侮辱です。我々一族は使命を全うしなければなりません。」
母は苦渋を噛み締めた顔で言った。
我が一族の使命は2つある。
一つは、血を絶やさぬ事。
二つ目は、里の中心にあるほこらを守ることだ。
なるほど、血を絶やさぬ為に私を他の場所の誰かと結婚させて、なにかあった時のためのスペアにするつもりですか...
政略結婚というやつですかね。
......冗談ではない!!!
私がそんな一族の使命とか他人の決めた事に従う道理などないはずです。
それに政略結婚の道具になどなってたまるもんですか!
私には私の目標があるんです。
正直この里に思い入れなどありませんし、嫌な事の方が圧倒的の多かったです。
ここにいてよかったと思う事など数えるほどのことしかありません。
だから母にはっきりと言った。
「この話、お断りさせて頂きます。」
そう言うと同時に、術で書類を燃やした。
「...貴方に拒否権があるとでも?」
「えぇ、ないでしょうね。立場的には」
「なら何故こんな無駄な事を?まさかここから逃げられると思っているのですか?」
母は、一流の術者だ。真っ向勝負では勝ち目は薄い。
さっきの書類を燃やすという挑発が効いたようで、冷めていた声がさらに底冷えするような殺気をおびている。
まぁ、そうなってもらわなければ困る訳ですが...
だからもっと挑発する。
「思っています。」
「.....ほぅ」
殺気がさらに増した気がした。
そして母が言った。
「ならば、試してあげましょう。」
そう言った瞬間母は、こちらに右腕を向けて指をパチンッと鳴らした。
それだけで、突然炎が発生して私を襲った。
「あ......っ!?」
私が苦痛の声を上げると母は、反省したか?と言わんばかりの笑みを浮かべていた。
それを見て私は.....ものすごい爽やかな笑みを返しました。
母は、目を見開いて怪訝そうな顔をしていましたが、充電完了です!
話の最初から指先に貯めていた妖力がようやく術を使えるレベルになったのです。
さすがに母も気付いたのか追撃態勢に入ってますがもう遅いです!狐火・変換系!!
『蛍火』!!!
パチンッとまた音がした瞬間、部屋は光に包まれた。
・ ・ ・
私は今、里を出入りするためには必ず通る、銀とデカデカと書いてある門が見える50mくらい離れた家の隅にいます。
あの光が止んだ後、目の前には悶えながら目を抑えている母がいた。
なまじ視力の良い狐族だからかなりきいたであろうことは見たら分かる。
しかも妖力を込めてあるから、多分半日は目を開けられないであろう仕様だ。
さて、何故そこまでやった私が、ある意味門の目の前で立ち止まってるのかと言うと
...なんかすでに追っ手がかかってるようなんです。
いや、実際は別に追っ手がいることに驚いているのではなく、門の前にいる人物に問題があるのですよ
「何故、貴方がここにいるのですかねぇ..........................赤狐」
横目で見て聞こえないように呟いた。
はぁ、なんか名前が思い出せない...
でも見た感じだが、こっちに気付いてない!これはチャンス!!
「ふぅぅーーー」
体に妖力を通して、イメージする。
「こぉぉーーー」
妖力は油である。と、想像し体全体に循環させる。
そして
「はぁ!!!」
油に一気に火をつけ、燃え上がらせる!!
これぞ狐火・活性系
『赤壁』!!!
この術の能力は、肉体活性。
今の私の容姿は肌は褐色で体中からうっすら炎が蒸気のように出ている。
「ふぅ、よし!行きましょうか!!」
足に力を込め、全力で、飛んだ!!!
ヒュオっ!!!
そんな音が聞こえる程のスピードで飛んでいると
「あ!マイスイー、げぶらっ!?」
何かに当たったかも...気のせいですね!
そして今度は壁に直撃......しませんでした。
さっき母と曲がりなりにも戦った理由はこれです。
通行証の木札をくすねておいたのです。
この木札があれば、持ち主の縁者は一度だけ門の壁を素通り出来るのです!
そして素通りする直前に
「さようなら」
と呟いた。
こうして私は里を抜けました。
さて、じゃ、行きますかね!
私の初恋の人を探す旅に
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