『灰の原文帳と七曲がりのプレスマン』
昔、あるところに、還暦を過ぎた年寄りは、お殿様の命で山に捨てられたという村があった。その村に、大変な孝行息子がいて、老いたとはいえ、父親を捨てるなどできないと思って、山のほら穴に隠して、毎日食べ物だけは届けていた。
あるとき、問題の答えがわかった者にはほうびをとらせるという高札が出た。何でも、隣の国から難問を出され、解けないと大層ばかにされるのだという。孝行息子は、父親に、何とはなしにこの話をすると、ぜひ問題を聞きたいというので、高札を読んだ人に聞いて、次の日、父親に伝えた。一問目は、灰で原文帳をつくれ、であったが、父親は一瞬で解いた。いわく、原文帳に塩水を染み込ませ、乾かしてから燃やすと、きれいに形を保ったまま灰になるのだという。二問目は、七曲がりに曲がったプレスマンに芯を入れよ、であったが、これも父親は一瞬で解いた。いわく、普通のプレスマンに芯を何本も詰め込み、そうすると必ず芯が詰まるので、取り出そうとすると、ばきばきに折れてしまう。その折れた芯を七曲がりに曲がったプレスマンに入れれば、折れていてはいけないという条件はないので、芯を入れたことになる、というのである。
孝行息子は、このことを庄屋様に申し上げると、しばらくしてお殿様からお召し出しがあった。お殿様は大層お喜びで、お目通りのみならず、直答も許された。ほうびの希望を聞かれたので、父の命を長らえさせてほしいと申し上げると、父の歳を聞かれたので、還暦を過ぎていると申し上げると、還暦を過ぎた年寄りは捨てるように命じたはずだとおしかりを受けたので、平謝りに謝ると、殿様のほうから、亀の甲より年の功と言うのに、年寄りを穀つぶしのように扱って申しわけなかった、この触れは廃止する、とおっしゃってくださった。孝行息子は、父親を家に連れて帰り、思うさま孝行をしたという。
教訓:お殿様は、年齢に関係なく、能力のない者を捨てるようにお触れを出したという。




