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師匠と弟子  作者: 麻川
1/8

引き篭もり

眼の前に在るのは一枚の扉。



厭、実際にドアノブとか出窓とか周囲の壁と区切る為の溝がついている訳ではないので、寧ろ一枚の果てしない壁とか岩壁とか言った方が正しいのだと思うが、そこを取っ掛かりとして中に押し入るしかないならば、やはりそれは扉と言った方が正しいだろう。そう。俺は別に扉自体ではなく、その中に居る奴に用があるんだから。独りではどうしても完遂出来ない依頼なのだ。何が何でももう一人分、手が要る。

…白状しよう。それはお前でなくちゃならないという指定は特に受けてなかったよ、だからお前が良いというのは俺のエゴだよこれで良いかこの野郎!! あァ!? 未だ言わせる気か! クソ。良、い、か、ら、開け、ろ、っつー、の! こんな業とらしく引き篭るならもっと入り易くしろよ!! せめて取っ手位着けろ! 厭、扉の絵だけじゃなくちゃんとした入り口をさァ! あああ面倒臭ェな、時間がないんだよ遅刻したら違反金払わなきゃなんないだろうが! ……クソ、こんな事で力使わせやがって! 『命ずる、我の前に開かぬ扉は許さない、開けろ』クソ莫迦! よし入るぞ首洗って用意しとけよ、ってンだこりゃ!! てめえ巫山戯やがって何でまた扉だよ御丁寧に今度は取っ手着きか! こんなトコで要求訊くなら、寧ろ眼の前に来いよ! 『命ずるぞ、開け』! ~~何だよ花瓶なんかどーしろッつーんだ!?? 『消えろ』! ぐあーッ、ヒヨコ? 全然和まねェよ、同じ黄色なら寧ろお前が出てくるべきだろ!??

…。


結局散々恥ずかしい台詞を言わされしかもそれを訊いてないという羞恥プレイを施された挙げ句に当の腹立たしい黄色頭は依頼人の処へ時間に余裕を持って現れていて見事依頼を終らせ、終った後も俺の慌てた様子を眺めて悦に入っていたというのは、もう思い出したくもない過去として記憶の底へ重石を着けて沈めてやりたい。

 

 

「ねー、出て来てよーぅ」

「…」

「あなたが遅刻しそうになってまで僕と一緒に行きたい、ってそんな可愛い事言ってくれるから、もっと言って欲しかっただけだってばー!」

「…」

「お願いしますー! 顔見たい声聞きたい触りたい抱きつきたいーッ! 何ならまた猫になっても良いから僕から君を取らないでー! 禁断症状が出、」

「待て止めろ今出るから!!」

 

 

終劇 (040922)(080326改定)。



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