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9 大団円

 王宮に連行されたコンラートは、外患誘致陰謀等の罪に問われたが、父である公爵の嘆願により、正常な判断が出来ない精神状態だったとして、死罪を免れた。


 コンラートは廃嫡の上、公爵領の僻地で()()することとなり、王国の表舞台から消えていった。


 ソフィーとコンラートの騒動の噂は、あっという間に王国中に広まった。


 ソフィーがコンラートとの政略結婚を断り、コンラートを思いっきりビンタしたという噂を聞いた王国の人々は「さすが南方騎士団長のご令嬢だ」と言って喝采するとともに畏敬した。


 そして、コンラートの傭兵達と果敢に戦い、主君の娘であるソフィーを命懸けで守ったウィルは、その功績から、一代限りの騎士身分に取り立てられることになった。何でも、黒杖総監の強い推薦が決め手になったということだった。



 † † †



「汝を騎士に叙する。『ケトリィ』の姓を与える」


 騒動から半年後の秋分の日。ケトラル家の館の広間において、国王の勅使による叙勲の儀式が執り行われた。


 ウィルに与えられた姓「ケトリィ」は、王国の古語で「ケトラルを守る者」という意味だった。


「おめでとう、ウィル・ケトリィ!」


 儀式の後、ケトラル家の館の庭先に集まったソフィーの両親や領民を代表して、ソフィーがウィルに笑顔で言った。


「ありがとうございます。お嬢」


 ウィルが恥ずかしそうに答えた。それを聞いたソフィーが笑いながら言った。


「もう、ウィルったら、『お嬢』じゃないでしょ?」


「あ、すみません。お嬢様」


 慌ててウィルが訂正すると、ソフィーが悪戯(いたずら)っぽい顔で言った。


「うーん、それも何かしっくりこないわね」


「え?」


 驚くウィルに、ソフィーが腕組みをしながら呟いた。


「ソフィー・ケトリィかあ。音の響きはそんなに悪くないわね」


「お、お嬢? お嬢様??」


 何のことか分からないウィルに、ソフィーが話し始めた。


「あのね、この前手紙で黒杖総監様に聞いてみたの。一代限りの貴族と私が結婚して、男の子が生まれた場合、爵位の継承はどうなるのかって」


「は、はぁ……」


「そうしたらね、黒杖総監様によると、その男の子は南方騎士団長の身分を継承できるんだって。もし、私のすぐ身近に、この領地や領民、そして私のことを大切に考えてくれる一代限りの貴族がいたら、結婚相手として最高じゃない?」


「え、えっ?!」


 まだ状況がよく飲み込めないウィルに、周りから「鈍いぞ、ウィル!」「お嬢にこれ以上恥をかかすなよ!」といったヤジが笑い声とともに聞こえてきた。


 ソフィーがウィルの目を見つめ、ニッコリ笑って言った。


「ウィル、南方騎士団長の領地のため、領民のため、そして私のために、私と結婚してくれない?」


 それを聞いた周りから、「キャー、言っちゃった!」「お嬢、おめでとう!」「ウィル、分かってるよな?」という声が次々と聞こえた。


 唯一、ソフィーの父が驚いた様子で隣に立つソフィーの母に言った。


「え?? 最高の政略結婚の相手が見つかったっていうのは、ウィルのことだったのか?!」


 それを聞いたソフィーの母が驚いた様子で笑った。


「まあ、あなた、分かってなかったの? 領地・領民、そして何よりソフィーのことを愛して大切にしてくれる一代限りの貴族なんて、ウィル以外にいないでしょ?」


「え? 愛して? ウィルとソフィーはもうそんな仲なのか?!」


 顔を青くするソフィーの父に、ソフィーの母がクスクス笑った。


「あの真面目なウィルとお転婆なソフィーがそんな訳ないでしょ? 純愛よ、純愛」


 ソフィーの両親が話している間、ソフィーとウィルを囲んだ領民たちは「ウィルの返事を早く聞きたいな!」などと囃し立てていた。


 顔を真っ赤にしたウィルが、ソフィーの両肩に手を置いた。


「お、お嬢。お嬢様……いや、そ、そ、ソフィー。私は貴女を生涯愛します。結婚してください!!」


 そう言うと、ウィルはソフィーを力強く抱き締めた。


 周りの大喝采の中、正午を知らせる教会の鐘が、2人を祝福するように鳴り響いた。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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