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不死の少女は王女様  作者: 未羊


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第96話 秘術と心

 目の前に浮かび上がる両親の幻。しかも、ディス遺跡のグランと同じように会話ができそうな雰囲気があった。


「お父様、お母様、お久しゅうございます。ステラリアは戻って参りました……」


 跪いて首を垂れるステラ。それは今にも泣きそうになっている顔を隠すためでもある。

 目の前にいるのは間違いなく自分の両親なのだ。様々な感情が入り混じって、とてもじゃないがステラは平静を保つ事ができないのである。


『どうしたんだい、ステラリア』


『その顔をよく見せておくれ』


 ステラの屈み込むような仕草に、ステラの両親は慌てている。これは間違いなくそこに存在しているものの反応だった。


「……驚いたな。魔法による投影かと思ったが、ステラリアの反応に対して的確に言葉を発している。……エルミタージュ王国の有していた技術、実に興味深いというものだ」


 ステラたちのやり取りを見て、ついつい口をついて感想が出てきてしまうアンペラトリスである。

 すると、その声が耳に聞こえてしまったのか、ステラの両親がアンペラトリスの方へと視線を向けた。


『そなた、何者かな?』


 ステラの父親が、アンペラトリスに問い掛ける。それに対して、アンペラトリスは実に堂々とした態度で答える。


「コリーヌ帝国の現皇帝、エンペラとリス・コリーヌと申す者。現在この地は我が帝国の領土内であり、本日は調査のためにやって来た」


 聞かれてもいない事情もぺらぺらと話すアンペラトリス。だが、続けて質問をされるのを先回りして答えたに過ぎなかった。


『……そうか。既に侵略者の手に落ちているというわけか……』


 顔をしかめているステラの父親。

 ところが、ステラの母親は違った反応を見せている。


『あら、不思議な魔力を感じるわね。でも、エルミタージュの血筋はあの襲撃でほぼ途絶えてしまったはず……』


 どうやらステラの母親は、アンペラトリスの中に違和感を感じているのだ。


『なんだと? だが、確かに妙な魔力を感じるな。一体どういう事だ?』


 首を捻るステラの父親。

 だが、いくら考えてみたところで何か分かるわけではない。ステラの両親は考えるのをやめたのだった。


『ともかくだ。ステラリアがここに戻ってきたということは、王国の再興ができるということだな』


『そうですね、あなた。私たちの命を賭して、ステラリアに祝福を掛けた努力が、今報われるというわけですね』


「うん、祝福だと?」


 ステラの両親の言葉に、アンペラトリスの眉がぴくりと動く。


「どういうことだ、ステラリア。お前がその姿で生き続けている事と、何か関係があるというのか?」


 ステラに向かってものすごい剣幕で突っ掛かっていくアンペラトリス。その勢いに、ついステラは後退ってしまった。


『なんだ、ステラリアから話を聞いていないのか』


「ステラリアは私を信用していないのだから、話してくれるわけがなかろう。だが、私の方も無理に聞くつもりもないがな」


 ステラの父親の言葉に、そのように答えるアンペラトリス。


「最初はこの大陸を支配するためにステラリアを利用しようと考えていた。だが、実際に会ってみて考えが変わった。なぜ変わったのかは、私にも分からぬがな」


 ぺらぺらと自分の心の内を話すアンペラトリスである。


「なんというのだろうかな……。ステラは不思議と庇護欲を呼び覚ますのかも知れないな」


 最後には一人で勝手に納得して頷くアンペラトリスだった。


『ふむ……。おそらくはエルミタージュ王家に伝わる秘術の影響かもな』


『そうですね。この秘術には掛けられた者を守ろうとする力がありますからね。王家の血筋を絶やさないための、不思議な効果があるんですよ』


「ええ……、どんだけ強力な魔法なのよ……」


 さすがに掛けられた本人であるステラがドン引きしていた。


「エルミタージュの国王と王妃よ、ぜひとも詳しく聞かせて頂きたい。エルミタージュはなぜ滅ぶに至ったのか、ステラリアに掛けられたその秘術とやらは何なのか。話次第では、私がエルミタージュの遺志を継ぎましょうぞ」


 ステラの両親に対して真剣な表情をしながら跪くアンペラトリス。

 この意外な姿まで見せられて、ステラはさっきからずっと驚きっぱなしになっていた。何がここまでアンペラトリスを変えたのだろうか。

 アンペラトリスから強い意思を感じたステラの両親は、顔を見合わせながらどうしたものかと悩んでいるようだった。

 とはいえ、ここまでたどり着いた人物である。なにより、アンペラトリスから感じる不思議な魔力に親近感のようなものを抱いてしまう。こうなってくると、他人のように思えないステラの両親は、こくりと決意を固めたのだった。


『いいだろう。おぬしの心意気を尊重して、我々の口からエルミタージュ王家について少しばかり語らせてもらおう』


『とは申しましても、私たちも受け継いだ部分が多くありませんから、そこまで期待しないで下さいね』


「それなら構わない。エルミタージュの人間から直に話を聞けるだけでも、我々としては大きな成果なのだからな」


 アンペラトリスは真っすぐな瞳をステラの両親に向けている。そのあまりの真っすぐさに感心したところで、ステラの両親は自分たちが知る限りのエルミタージュの話を始めたのだった。

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