表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死の少女は王女様  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/135

第57話 今後の目的

 ディス遺跡からフイエまで戻ったステラたち。一応ディス遺跡の探索を行ったので、許可を受けた者の責務として報告を行うためである。

 本来なもっと探索をしていたかったのだが、あんなものを見てしまっては留まるのは危険と判断したのだ。

 フイエの宿に泊まりながら、部屋の魔法をかけた状態でステラたちは話し合っている。


「探索の期間は短いから、それほど報告できるものはなかったが……、あんなものを見てしまっては留まる気は起こらんな」


「同感ですね。私もあれは危険だと思いました」


 熟練者二人がこんな風に話をするものだから、まだまだ未熟なリューンは二人の決定に従うしかなかった。


「何をしているのかもっと知りたかったですけど、お二人がそう仰られるならそうするしかないですね」


「ブラックウルフをあそこまで簡単に倒せるような連中ですからね。それに相手の数を思えば、手を出さないのが正解です」


 とはいえまだ諦めきれないリューン。しかし、ステラが付け加えた言葉を聞いて、その判断をすっぱりと受け入れたのだった。

 リューンはまだまだ未熟な状態だ。それを自覚できているからこそ、ステラたちの意見を受け入れる事ができたのである。


「ひとまず、コリーヌ帝国が何かを企んでいる事が分かっただけでもよしとしようじゃないか。それに伴って魔物たちも追いやられているようだしな」


「まあそうですね。私に懸賞金を掛けた事も、それに関連した事なのでしょうか」


「そうかも知れないね。遺跡の類はエルミタージュ王国の痕跡ばかりだからね。ただ、そこに対してステラがどこまでかかわりがあるかと言われたら、まだ情報が足りなさすぎるな……」


 ベルオムは腕を組んで悩み始めた。


「何にしても、一度ボワ王国に戻って報告するしかないだろう。とはいえ、監視くらいしかできる事はないんだけどね。ブラックウルフを倒せる相手となれば、ボワ王国の軍事力では太刀打ちは無理だんだからな」


 結局それしか思いつかなくて、ベルオムは考えるのを放棄した。これにはステラも賛成である。


「では、これからはボワ王国に向けて移動……というわけですね」


「ああ、それが最善だろうな。それに……だ」


「それに?」


 悩んでいたかと思っていたベルオムが、悪そうな笑みをステラへと向けている。ステラは自分の腰のものに目が向いていると気が付くと、それをベルオムの視線から隠した。


「どうしたんですか、ステラさん」


「どうしたもこうしたも、この男、転移装置を使って遺跡の中に入るつもりですよ」


 ステラが不機嫌そうな声でいうものだから、リューンは慌ててステラからベルオムへと視線を移す。すると、ベルオムはにやりと笑みを浮かべていた。


「それはそうだろう。著名な魔道具師に会ったというではないか。魔道具に憧れてきた私だけがハブられたとあっては、この上ない屈辱ではないか」


 ベルオムが声を荒げている。自分だけグラン・エルミタージュに会えなかった事が相当に悔しいようなのだ。

 そういえばそうなのだ。ベルオムがこのエルミタージュ大陸にやって来た理由がそもそも魔道具なのである。

 ベルオムのこんな姿を見たことがないステラは、あまりの衝撃に言葉を失っていた。ここまで取り乱すとは思っていなかったのだ。


「分かりました。分かりましたから師匠、落ち着いて下さい」


 ステラが落ち着かせようとするも、ベルオムはまだ半狂乱である。リューンもドン引きしている。


「いくら結界魔法を展開しているからとはいっても、ここはまだコリーヌ帝国内です。下手に騒ぐのはやめて下さいってば、師匠」


 ステラも必死である。結界魔法で外に音が漏れない、外からも入ってこれないようにしてあるとはいっても、ここまで暴れられては床が抜ける危険性だってある。

 あまりベルオムに秘密にしていたくなかったとはいっても、話すのは早計だったかとステラは後悔していた。


「師匠、とにかく落ち着いて下さい」


 あまりに暴れるベルオムの脳天にチョップを叩き込むステラである。

 最終手段と考えていたようだが、確かにこの一撃でベルオムの動きが止まったのだった。


「師匠が悔しいのは分かりますが、今回手に入れた情報を整理しましょう。とにかく、私に関する情報は大きな収穫ですからね」


 ひときわ力強く場を仕切るステラである。


「軽く聞いただけだが、『ステラが伴侶を得て、エルミタージュ王城を再建する』というのが人間に戻る条件のようだね」


 すかさず落ち着きを取り戻したベルオムが要点をまとめていた。普通にしていればさすがは頼りになる師匠である。


「さすがステラさんの師匠ですね。簡単に分かりやすくしてくれました」


「だてに長くは生きていないからね。魔道具を扱うものは、このくらいに頭の回転がいいものなのだよ」


 リューンが感心していると、ベルオムは実に誇らしげにしている。

 すごい能力ではあるのだけど、いちいち偉そうにするのはちょっといただけないと思ったステラなのである。


「とりあえず現在の目的は次の2つかな。コリーヌ帝国の目的をはっきりさせることとエルミタージュ王城の跡地を見つけること」


「ひとまずはそうですかね。あんなものを作って何をするつもりなのでしょうかね……」


「分からんが、あの場から感じたことは何かよからぬ事を企んでいそうだという事くらいだ。私たち三人ではとても正規軍には立ち向かえないから、できる事は調査くらいなものだよ」


 ベルオムは大きくため息をついた。


「ひとまずはボワ王国まで戻って、国王に報告した後で考えるとしようか」


「そうですね」


 結論が出たステラたちは、結界を展開させたまま、その日は眠りについた。

 そして、翌日目覚めると、ボワ王国への帰路を急いだのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ