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不死の少女は王女様  作者: 未羊


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第48話 ディス遺跡へ

 ヌフ遺跡の調査結果をしたステラたちは、翌日はフイエから依頼を受けられる遺跡の中では最も遠い場所にあるディス遺跡の調査を受託する。

 他の遺跡は受注が満杯で受けられなかったので諦めるしかなかった。

 そんなわけで、ステラたちは徒歩でディス遺跡へと向かう。


「今度向かうディス遺跡って、どんなところなのでしょうかね」


 リューンが気になっているらしく、ステラたちに問い掛けている。


「さあ、私たちにも分かりませんね。分かっている事は、おそらくはエルミタージュ王国関連の何かだという事だけですよ」


「まあ、その見解で間違いないだろうね。500年少々前まではエルミタージュ王国しかなかった事と、ひとつ前に見つかったヌフ遺跡からそれほど離れていない事を踏まえるに、エルミタージュ王国の何かだろうという事は想像に難くないというものだ」


 リューンの疑問に、ステラとベルオムはさらさらと答えている。さすがは長生きしている二人は格が違うというものである。

 それにしても、ヌフ遺跡に向かう時は違い、街道には多くの人の姿があふれている。これを見るだけでディス遺跡の人気っぷりが分かるというものだった。


「組合で聞いた話によれば、ディス遺跡からは魔物が無限に湧き出ているらしい。そのせいで調査員よりも討伐目的の冒険者が多いそうだ。それこそがディス遺跡の人気に拍車をかけているのだろうね」


「まあ、地味な調査に比べれば、狩りは成功すれば気分爽快ですからね……」


 仮面越しからでも分かるステラの苦笑いである。

 それに対して、リューンはちょっと落ち込んだような顔をしている。というのもまだまだ未熟であるがゆえに、狩りができるかどうか分からないからだ。


「リューンよ、そんなに落ち込む事はないぞ。剣を扱う血筋なのだし、ちょっと見てみただけでも才能はあると感じたからな。とにかく日々の鍛錬あるのみだよ」


「は、はい!」


 ベルオムに言われて、元気よく返事をするリューンである。


 しばらく歩いていると、ようやくディス遺跡に到着した。さすがにヌフ遺跡に比べて倍くらいの距離があったので、すっかり日が暮れかかっていた。


「ふむ、どうやらこれは明日にせねばいけないようだね」


「そうですね。こんなに人がごちゃついていては、移動すらもままなりませんからね」


「人が多すぎますよ~……」


 ディス遺跡の入口にはものすごい人だかりができていた。これから入っていく者、探索を終えて出てくる者がひっきりなしである。

 よく見れば露店も出ており、遺跡はさながら一つの街の様相を呈していた。

 ひとまず休む場所を確保するべく、ベルオムがそこら辺の人間を捕まえて話を聞く事にした。


「すまない。今回初めて来たのだが、寝泊まりするにはどうしたらいいだろうか」


 ベルオムから声を掛けられた人間は、じろじろとステラやリューンの方を見ている。実に気持ち悪い視線だ。思わずリューンがステラの後ろに隠れてしまう。


「おいおい、にいちゃん。子ども連れとはいいご身分だな。遊びだったらとっとと帰っておくれ」


 飲んでるのか少し顔が赤いようである。

 しかし、さすがにコケにされて黙っているようなステラではなかった。


「ほう……。これでも遊びだというのですかね」


 双剣を片方だけ抜いて男に押し付けるステラ。そして、もう片方の手で自分の冒険者タグをちらつかせている。

 一瞬で剣を押し付けられた事もそうだが、視界に入るタグを見て、男は思わず震え上がってしまった。


「ひっ……、金級冒険者……だと?」


「ええ。ですから、お遊びなんかじゃありません。私たちの質問にさっさと答えなさい」


 無表情の仮面が、より男に恐怖を与えている。


「お、俺なんかよりそこの壁の裏にある兵士詰め所で聞いた方がいいぜ。コリーヌ帝国からわざわざ出向いてきてる連中で、ここの管理をしてるんだからな」


「ふむ、なるほど。そんな場所があるのでしたら、確かにその方がいいかもしれませんね」


 ステラは剣を引っ込めてしまう。男は安心したように首を擦っている。


「答えてくれてありがとう。私たちは行きますね」


 マントを翻して歩いていくステラ。リューンとベルオムはその後ろをついて行った。


「ひぃ、なんなんだよ、あのガキは……」


 恐怖が完全に去ると、男はそそくさとその場から立ち去っていった。


 ステラたちは詰所の兵士から案内された場所へとやって来た。

 寝泊まりする建物はなく、広場で適当にテントを張って寝泊まりをするような場所だった。


「遺跡に損害を与えるからだろうね、宿を建てなかったのは」


「そういう考え方もありですか。確かに、その方がいいかもしれませんね」


 その場の雰囲気を見るに、宿を建てても面倒なことになるのが明らかな状態だった。

 ごちゃついた中からどうにか場所を探し出すと、ステラたちはそこにテントを張る。それはベルオムがいつも持ち歩いているテントだった。


「師匠って意外と便利なものを持っていたのですね。私にも教えてくれればよかったですのに」


「私は人を見ますからね」


「……どういう意味ですか、師匠」


「ま、まあまあ。明日から遺跡の調査ですし、ケンカはやめましょうよ」


 険悪なムードになりかけたのを、リューンが止める。すると、二人は睨み合いを止めていた。


「しかし、ここまで出してこなかったのを、どうしてここで出したんですかね」


「まぁそれはいずれ分かるよ。さあ、明日に備えて休みますか」


 こうして、ステラたちはディス遺跡の調査に備えて早めに休むことになったのだった。

 はたして、ディス遺跡にはどんなものが眠っているのだろうか。

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