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不死の少女は王女様  作者: 未羊


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第34話 スーシュ国王

「ベルオム、久しぶりだな」


「お久しぶりでございます、国王陛下」


 ベルオムが頭を下げて挨拶をしている。

 少し恰幅のよさそうな優しい表情の男性。そして、身に着けている豪奢な服装。いかにも一国の主たる国王といった感じである。


「そちらのお連れの方々は初めてだな。私はこのボワ国の国王スーシュだ。歓迎するぞ」


 しっかりとしたつぶらな瞳が、瞬きで時々見えなくなる。


「仮面を着けたままで失礼致します、国王陛下。お初にお目にかかります。私、現在隣国バナルで冒険者をしておりますステラと申します。こちらは弟子のリューンと申します」


 ステラが挨拶をすると、リューンはぺこりと大きく頭を下げていた。

 そのしっかりとしたステラの挨拶に、スーシュは感心したように顎を触っていた。


「ふむ、冒険者という割にはしっかりとした育ちの良さを感じるな」


 その言葉を聞いて、思わずドキッとしてしまうステラだった。

 長年の習慣で染みついていた仕草の数々がゆえに、そう簡単に崩す事もできずにいたのだ。


「うん? どうしたのだ、ベルオム」


「いえ、なんでもございません」


 ステラへの指摘を目の前で見て、ベルオムが笑いを必死にこらえていたのだ。

 仮面越しながらも、キッとベルオムを睨みつけるステラ。相手が自分の師匠だからといっても遠慮はしなかった。


「時にステラよ」


「なんでございましょうか、陛下」


 スーシュの呼び掛けに、返事をするステラ。


「仮面を取ってもらっても構わぬかな? さすがに素顔を隠したままでは、信用はできぬからな」


「……申し訳ございませんが、そればかりはいくら陛下のお願いとて聞き入れられません。どうか、このままでいる事をお許し下さい」


 国王からの申し入れを、誠心誠意に断るステラ。その態度と声の調子から、スーシュも何かを感じ取ったようだ。


「そうか。事情がありそうだな。……分かった、そのままで構わぬ」


 スーシュの寛大な措置に、スカートの裾をつまみながら深々と頭を下げるステラである。さすがは元王女とだけあって、所作の美しさがあちこちに満ちていた。

 ステラの様子を見たスーシュだが、それよりも久しぶりにベルオムがやって来た方が気になっていた。


「それにしてもベルオム。おぬしがやって来るとは珍しい。何の用事があって来たのかな?」


 ちらりとベルオムに視線を向けながら話し掛ける。

 それに対して、ベルオムは表情をまったく変える事なく、国王へと言葉を返す。


「実は、そちらのステラからの話なのですが、プレヌ王国との国境付近でブラックウルフが出没したそうなのです」


「な、なんと、ブラックウルフがだと?!」


 スーシュが大声で驚いている。どうやら、スーシュもブラックウルフの恐ろしさが分かっているようだった。

 さすがに黙って真剣に悩み始めるスーシュなのである。

 その様子を見ていたベルオムは、にこりと笑ってスーシュに進言する。


「そこで国王陛下」


「なんだね、ベルオム」


 あまりに気持ち悪い笑顔を見せてくるものだから、スーシュは顔を歪ませている。どうもベルオムの思惑が分かってしまったようである。


「言いたい事は分かった。ブラックウルフの調査に行きたいのだろう? 確かに我が国内でもちらほらと目撃情報が上がってきている。対策も調査も早急にすべきだろうからな」


「お話が早くて助かります。つきましては、私たち三人にそのための許可証のようなものを出して頂きたいのです」


 ベルオムの頼みに、スーシュは腕を組んで悩み始める。

 かなり背中を反りながら悩んだ結果、スーシュは結論を出した。


「分かった。すぐに許可証を出そう。ブラックウルフの話はこちらとしても困っている。しっかりと原因を究明してくれ」


「はい、畏まりました」


 ベルオムはそういうと、ステラとリューンに近付いていく。


「では、待っている間は客室でこの二人とお話しております。頼みましたぞ、陛下」


 ベルオムはステラとリューンの肩を持つと、そのまま引き連れて国王の部屋を出ていったのだった。


 しばらく客室で待っていると、国王が兵士を連れてやって来た。その隣からは、ひょこっと大臣が顔を見せる。

 そして、国王と大臣が無言でこくりと頷き合うと、兵士が何やら紙を持ってベルオムたちに近付いてきた。


「ベルオムよ。許可証を渡してので、ブラックウルフの調査の件、しかと頼んだぞ」


「もちろんでありますとも、国王陛下」


 兵士から許可証を受け取ったベルオムは、にやりと笑っていた。


「せっかく弟子が面白そうな情報を持ってきましたからね。退屈しのぎにはちょうどいい話です」


「ん? 弟子?」


 ベルオムが漏らした言葉に、国王たちが首を傾げていた。


「ははは、こちらの話ですよ。では、お任せ下さいませ、国王陛下」


 国王へと返事をしたベルオム、ステラとリューンの背中を叩く。


「それでは、早速連れて出るとしましょう。討伐をするのは簡単ですが、やはり原因を突き止めて解決しませんとね」


 言葉は真剣だが、顔はとても楽しそうなベルオムである。その顔を見たステラは、仮面の下で口をあんぐりとさせていた。


 こうして、ステラはリューンに加えて、ベルオムを仲間に加えた。しかし、どういうわけか不安ばかりが先立ってしまうステラなのであった。

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