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不死の少女は王女様  作者: 未羊


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第124話 師匠を超えろ

「こうなった全員始末してやる!」


 必死の形相を見せるベルオム。

 これから戦いが始まろうとした時、それを止めたのはアンペラトリスだった。


「待て!」


 その大きな声に、ベルオムを含めた全員が動きを止める。

 そして、アンペラトリスは前に乗せていたリューンを降ろし、自らも下馬してベルオムを睨み付ける。


「ベルオムと戦うのは、そこのステラリアと、このリューンの二人だけだ」


「ほへ?」


 肩を叩かれたリューンが面食らった表情で情けない声を出している。

 アンペラトリスに対して、ベルオムは警戒の姿勢を解いていない。ベルオムの姿を見てアンペラトリスは笑い始める。


「ここの全員を相手にして逃げ切れると思ったか?」


「ああ、私は見ての通りのエルフだ。魔法を駆使すれば、お前らごときなんてのは簡単に振り払える」


 ベルオムが強気に発言したその次の瞬間だった。

 ギラリと輝く剣がその首筋に当てられていた。ベルオムが答えている一瞬で、あっという間に間を詰めたアンペラトリスの剣だった。


「これでも、まだその口を叩くか?」


 ドスの利いた声に、ベルオムの額から冷や汗が流れ落ちる。

 絶対的な自信があったはずなのに、一瞬で詰め寄られてしまっていたのだ。なんともアンペラトリスが規格外すぎたのだ。


「くそっ、なんて素早さなんだ……」


 あれだけ離れていた距離を一瞬で詰められて、ベルオムは表情を歪ませていた。


「私には魔法はない。だが、そんな小細工がこの私に通じると思うな?」


「くそっ!」


 アンペラトリスがぎろりと睨みを聞かしたその瞬間、ベルオムは魔法を放つ。だが、アンペラトリスは涼しい顔でその魔法を躱していた。

 魔法を躱しながらも、その視線はベルオムから外れていない。アンペラトリスの強さは本物なのである。


「私が居る限り、貴様は逃れることができない。おとなしく私の提案を受け入れろ」


「くっ……」


 アンペラトリスの眼光が強まると、ベルオムはより一層表情を歪ませていた。

 悩むベルオムはちらりとステラを見る。一向に構えを崩さずに自分の事を睨み付けているその姿を見て、ベルオムは決断をする。


「分かった。その提案を受け入れよう。ステラとリューンの相手をすればいいのだな」


「ああ、その通りだ。二人と戦って勝てば、お前のことは見逃そう」


「分かった。それならば受け入れよう」


 ベルオムはアンペラトリスの提案を受け入れた。

 だが、ステラとリューンの二人にはまだ意思の確認をしていない。アンペラトリスは、二人の意思を確認するために近付いていく。


「これから二人にはベルオムと戦ってもらう。ステラリアは当事者だからあえて聞かないが、問題はリューンだな」


「僕?」


 アンペラトリスに顔を向けられて驚くリューン。確かに、まだリューンは詳しい事情をまったく知らないのだ。


「そうだ。ステラリアから細かく後で聞かせてもらうといいが、あの男との因縁はリューンにもあるのだよ」


「ベルオム先生……」


 アンペラトリスから話を聞かされて、思わずリューンはベルオムへと視線を向ける。

 ベルオムはリューンが見た事ないくらい不機嫌な表情で立っている。その鋭い視線が怖いくらいだった。


「まあ、そういう因縁は今は後回しにしておこう。そうだな、ベルオムの教えの卒業試験くらいに思ってもらえればいい」


「卒業試験……」


 リューンは硬い表情でベルオムを見つめている。


「そうですね。私も好きな魔道具の研究に没頭したいですからね。他人の面倒なんていうのは、まったくもって見たくもありませんよ」


 言葉遣いだけを普段通りに戻すベルオムだが、その表情はなんとも歪んだものだった。

 あまりにも醜いベルオムの対応を見て、リューンはきゅっと表情を引き締める。アンペラトリスの方へと視線を向けると、しっかりとその口からこう発言する。


「分かりました。その提案、お受けします」


「そうか……」


 はっきりとした答えに、アンペラトリスは安心した表情を見せていた。

 くるりとベルオムの方へと向き直ると、アンペラトリスは告げる。


「二人からの意思は確認が取れた。よって、ステラリアとリューンのペアと、ベルオムによる2対1の決闘を行うこととする」


 先程リューンに対して卒業試験と言っていたのに、ここでは決闘と宣言するアンペラトリスである。

 決闘という言葉に驚くリューン。しかし、ステラの方はまったく動じていなかった。ステラはもとよりそのつもりだったからだ。


「リューンくん、師匠は私たちにとって因縁の相手なのです。遠慮なく、全力で戦って下さい」


「は、はい……」


 ステラに言われて返事をするリューンだが、決闘という単語に完全に尻込みした様子である。


「いけませんよ、そんな事では。私たちにその気がなくても、今の師匠なら躊躇なく私たちを殺しに来るでしょう。精一杯相手をするというのが、恩返しになるはずです」


「ステラさん……」


 ステラから諭されて、リューンもようやく決意を固める。先程までの迷っていた表情は、今はどこにもなかった。

 二人の様子を見ていたベルオムも、満足そうに不敵に笑っている。


「準備はいいな?」


 アンペラトリスの問い掛けに、全員が大きく頷く。そして、高らかに宣言がなされる。


「決闘、始め!」

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