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不死の少女は王女様  作者: 未羊


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第119話 トレイズ遺跡への二度目の旅立ち

 ディス遺跡の地下から戻ってきたステラたちは、早速メティスにベルオムの似顔絵を描いてもらうことにした。

 いきなりそんな事をステラから頼まれたメティスは戸惑ったものの、ステラの頼みならばと、仕方なく引き受けていた。

 メティスは何度か目にしたベルオムの姿を思い出しながら描き上げていた。ステラからの情報提供なしである。


「メイドなら当然でございます。どのような方が相手でも失礼がないように、その顔、容姿、お名前を完璧に覚えること、それがメイドの特技なのです」


 ステラが様子を見守る中、あっという間に描き上がった絵をステラに見せるメスティだった。


「すごい、確かに師匠のお姿です」


 その描き上がった絵の素晴らしさに、つい言葉を失ってしまうステラ。なにせベルオムそのものだったのだから。


「相変わらず素晴らしいな、メスティ。どうだ、これならご両親に見せられそうか?」


「はい、そのものすぎますのでまったく問題ございません。問題は、これをどうやってお父様とお母様のところまで運ぶかですね」


 出来ばえに唸るステラは、最大の問題点を挙げていた。

 エルミタージュ王城の跡地であるトレイズ遺跡まではかなりの移動距離がある。描かれた絵を入れる箱もそこそこ大きさが必要だし、雨などで濡れてしまっては滲むなどの問題がある。

 するとアンペラトリスはすぐに対処をする。


「他人の目に触れぬように私の部屋に運んでおけ。いいか、絶対に知られるでないぞ」


「畏まりました」


 アンペラトリスは自分の専属侍女を呼んで、メティスとともに自分の部屋へと似顔絵を運ばせていた。

 口の堅い侍女に加えて皇帝の私室。他人がおいそれと同行できるものではないので、これ以上の安全はないというものだった。

 さっきまでグランと話していたこともあって、アンペラトリスはベルオムに対してかなり警戒を強めている。なので、これくらいはしないと必ず彼の耳に入ると踏んでいるようなのだ。


「これで絵の方は大丈夫だろう。あとはうまくトレイズ遺跡へ向かう日程を調整すればいいだろう」


 アンペラトリスがこう言うので、ステラはこくりと頷く。


「あと、その時にはステラリアだけで向かってもらうことになる。絵はその腰……、いや、それがベルオムの作ったものであるなら危険だな。改めて収納機能を持った鞄を作ってそこに入れておこう」


 ステラいつも身に着けている鞄を使おうと提案しかけて、ふと思い留まるアンペラトリスである。


「リューンの事は私に任せておけ。ベルオムが部屋に閉じこもっているから、対処はまだしやすいだろう」


 リューンの事に関しても、アンペラトリスはステラにそのように話していた。

 もちろんこれは、ステラを安心させるためである。エルミタージュ王国の復興となると、リューンの存在が不可欠である。そのためには保護する必要があるからだ。


「準備には数日を要するだろうから、できたら声を掛けるぞ。いいな、ステラリア」


「分かりました。よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げるステラである。

 話がまとまったことで、メスティが描いたベルオムの似顔絵はすぐさまアンペラトリスの部屋へと運ばれる。

 アンペラトリスは、トレイズ遺跡の調査隊を再度編成するために騎士団へと向かう。

 今まさに、500年前の真実を解き明かすための準備が整いつつあったのだ。あとはステラの両親からどのような情報が引き出せるかである。

 その日は着実に近付きつつあった。


 そして、準備を始めてから5日後、ようやく出発するめどが立つ。やっぱりベルオム抜きで魔法鞄を作るのが一番大変だったようで、時間を食った一番の理由なのだった。


「準備整いました。いつでも出発できます」


「うむ、今回は私は同行せぬ。その代わり、ステラリアが同行するので、よくしてやってくれ」


「はっ、もちろんでございます」


 アンペラトリスの呼び掛けに、元気よく返事をする隊長である。

 そして、アンペラトリスはステラへと視線を向ける。


「どのような事があるか分からぬが、無事に戻ってくるのだぞ」


「もちろんですよ、皇帝陛下」


 きりっとした表情で返事をするステラ。その表情にアンペラトリスは安堵の笑みを浮かべた。

 騎士団とともに出発していくステラの後ろ姿を見つめるアンペラトリス。普段なら強い眼差しを送っている彼女だが、今回ばかりはどこか不安に駆り立てられている。

 その理由はまったく分からない。分からないながらも、どういうわけかまったく払拭できない。


(どうしてこうも不安になるのだろうな。だが、私とてやる事がある以上、ステラリアについて行くことはできぬ。……実に歯がゆいものだな)


 その姿が見えなくなるまで、アンペラトリスはじっと見送り続けたのだった。


(何としても無事に帰ってくるのだぞ、ステラリア)


 強くそう願ったアンペラトリスは、振り返って自分の仕事へと戻っていく。リューンの保護とベルオムの監視である。約束をしたからには、しっかりとこなさなければならないのだ。

 はたして、アンペラトリスの不安は杞憂で済むのか、そして、ステラたちは無事に情報を得て戻ってくるのか。

 トレイズ遺跡への旅程は始まったばかりである。

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