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不死の少女は王女様  作者: 未羊


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第103話 だらけるステラ

 グランとの話を終えて、城へと戻ってきたステラとアンペラトリス。まずは落ち着いて家系図を本棚へと戻す。

 すると、揃って大きなため息をついていた。

 アンペラトリスもエルミタージュ王家の子孫だった。ただ、その祖先の多くは外の大陸から入ってきた者たちであり、ステラリアやその両親や家臣たちの仇である可能性がある。なんとも複雑な気持ちになるステラだった。


「今日はもう休んでも構わないぞ。お互いに気持ちの整理がつかないだろうからな」


 アンペラトリスはそう言って、自分の執務室へと帰っていく。皇帝である以上、やることはたくさんあるのである。

 一方のステラは、アンペラトリスの気遣いに従って、自分の部屋へ戻ってそのままベッドに転がっていた。

 天蓋を眺めながら、ただごろごろと転がるステラ。一応服はグランの所に行った時から着替えてはいるのだが、ベッドが汚れないか心配である。


「ステラ様、失礼致します」


 ステラがごろごろとしていると、メスティが部屋へと入ってきた。


「皇帝陛下が戻られましたので、ステラ様も戻ってこられたと思いました。ひとまずお茶にでもなさいませんか?」


「そうさせてもらいましょうか」


 メスティの提案に、体をがばっと起こすステラ。

 その時の姿に、メスティは思わず驚いてしまう。


「ステラ様、なんてはしたない格好を」


 それもそうだろう。着ていた服を脱いで肌着の状態なのだ。なにせ埃っぽいところに居たのだからしょうがない処置だろう。なにせステラはドレスを一人では着られないのだから。


「そうは言われましてもね。ドレスを一人で着るのは厳しいですから、とても着替えられなかったのですよ」


 言い訳をするステラである。

 だが、そんな言い訳をしてメスティが許してくれるわけもなく、お茶をお預けされてお風呂へと連行されてしまうステラなのであった。

 わっしゃわっしゃと全身をきれいにされたステラは、いつものお姫様ドレスに着替えさせられる。

 11歳という年齢ゆえにコルセットがないことだけが救いだった。


「コルセットが嫌でしたら一人でもお着替えできますでしょうに」


 苦言を呈するメスティ。


「コルセットがなくても装飾が多くてどこがどうなっているのか分からないのでは、結局同じなんです」


 それに対してしっかり文句を返すステラだった。

 なんだかんだと言い合いながら、どうにかお風呂と着替えを終わらせた二人。ようやく部屋に戻ってきて改めてティータイムである。

 紅茶はすっかり冷めてしまってはいたものの、二人ともそれを我慢して飲んでいる。


「……冷めるとやっぱりあまりおいしくありませんね」


「ステラ様が悪いのですから、我慢なさって下さい」


 文句を言えばメスティに言い負かされてしまうステラである。


「それにしても、ずいぶんと皇帝陛下がご機嫌でいらっしゃいましたけれど、どこに行かれていて何があったのでしょうか」


 アンペラトリスの様子がおかしいのはステラに原因があるとみて、メスティはわざわざ本人に問い掛ける。

 だが、ステラの方も素直に答えるわけがない。


「私に言われても困りますね。知らなくてもいい事はあると思いますよ。皇帝陛下がご機嫌なのはいい事ではないですか」


 とぼけておくステラである。もちろん、メスティが納得するわけがなかったのだが、ステラの状態を見て結局諦めることにしたようだ。

 ステラはアンペラトリスのお気に入りなので、下手に接すると自分に跳ね返ってきそうで怖いのである。実に賢明な判断と言えよう。

 そんなわけで、お菓子を頬張りながらにこやかにするステラの様子を、メスティはただ眺めている事しかできなかった。


 その後、ステラがゆっくりと部屋で過ごしていると、お茶を片した後から姿を見せなかったメスティが部屋へとやってきた。


「ステラ様、間もなくお夕食の時間でございます」


「そうですか、そんな時間ですのね。すぐに向かいます」


 疲れをいやすためにベッドに転がっていたステラは、ぐいっとその体を起こしてベッドから立ち上がる。

 そして、服をパンパンと叩いてしわを伸ばすと、メスティの後について食堂へと向かっていった。


 食堂に着くと、そこにはいつもの通りアンペラトリスしか居なかった。


「おお、ステラリア。十分休めたかな?」


 相変わらず、ステラを見るとこれでもかという笑顔を見せるアンペラトリスである。本当にどれだけステラを気に入っているのだろうか。


「はい、ただだらけすぎてしまって思わず眠ってしまいそうでした」


「はははっ、正直な奴よな」


 ステラの冗談めいた返しに、実に楽しそうに笑うアンペラトリスである。

 すっかりステラに気を許しているアンペラトリスは、今日も自分の隣にステラを座らせる。そして、ステラに問い掛けてきた。


「のう、ステラリアよ」


「なんでございますでしょうか、皇帝陛下」


 ステラの方もずいぶんとほだされてきたのか、最初の頃のような警戒心がすっかり薄れたようにきょとんとした表情で反応している。


「どうだ、明日からは我が軍の訓練に本格的に参加してみぬか?」


 アンペラトリスからの提案に、思わず目を丸くしてしまうステラなのであった。

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