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異世界劇団 〜魔王討伐後の平和な世界をヒーローショーでドサ回りします~  作者: 高城 剣


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第18話 弟子、誕生!

小道具や衣装の片付けをしている俺達の元に、ゼンくん、リュミリエちゃん、ダンくんがやってきた。

小さなお友だちとは言え、貴族様にここは立入禁止だとも言えずにいると

「「「ザムドさん、ルリハさん、弟子にしてください!」」」

と、三人揃って言い放ちやがった。

ダッシュで駆け出す座長。

逃げた?いや、親父のベルガンド様にご注進ってやつだな。

町の子どもと違って追い返すのも気を使う。

俺はめんどくさいから、黙って成り行きを見守ることにする。

ザムドとルリハも何も言わずに黙って三人を優しく見つめている。

「ザムドさん達、フレイムドラゴンを討伐したんですよね!」

ショーを真に受けたって言うより、事前のご機嫌伺いでのザムドたちの冒険譚を聞いてのことのようだ。

それはともかく、特にダンくん、ゼンくん、立派な貴族を目指すのに、この寄り道はマイナスだと思うな。うん。

冒険者でも英雄でもなく、劇団員だからな、今は。

お、座長が息を切らしてベルガンド様を連れてきたぞ。

「あ、お父様」

「ゼン……リュミリエもダンも、お前たちはまったく」

怒ってはいないようだ。ほとほと困っている顔してるし。いつもこんななのか、このちびたちは。

ただ、下の二人に比べて、長男ゼンくんはバツが悪そうな顔してる。

長男坊は辛いよな。下を抑えなきゃいけない役目だけど、一緒に騒ぎたい年齢だし。仲良さそうだし。

人様の家庭事情に口だす趣味はないし、勝手にやってくれ。片付け終わんないから、早めにお願いしたいが。


「おいユウ」

ちっ!くそ座長。巻き込む気だな。

「はい、座長。なんでございましょうか!」

と返事をしたら、苦虫噛み潰したような顔しやがった。

「おまえが、お子さん方に剣闘を教えて差し上げろ」

「……ザムドじゃなく?」

「ザムドじゃなく、な」

「なぜでしょうか?わたくしめの技術を芝居用。言うなれば実践的ではございません。そのような技術をお教えしても、特に役には立ちますまい」

俺の口調にメルもカーラも吹き出すのをこらえているのが判る。

「ユウとやら、頼まれてくれまいか?今宵の芝居、我が子達は痛く感銘を受けていてな。自分たちもこういう芝居をしてみたいというのだ」

ベルガンド様、直々にお願いと来たもんだ。

「今宵の芝居の内容から全て、このユウが決めたこと。芝居で言うなら、このユウはザムドたちの師匠と言っても」

おこがましい役目にしやがった。

しかし、お遊戯会や学芸会?そんなのがこの世界にあるのか知らないが、やってみたいというのを止めるほど、俺は後輩の育成を疎ましがっちゃいない。

「そこまでご熱心であらせられるなら、お力を貸すことに依存はございません」

と、俺は一礼。

「そ、そうか、ならば、明日から一週間、毎日こちらに来て、臨時の家庭教師として務めてほしい」

まぁ、座長が頷いてるからスケジュール的には問題ないんだろう。

「承知しました。その際は劇団全員とは申しませんが、幾人かを同行することをお許しいただけますか?」

「もちろんだ。任せる」

「かしこまりました」

と一礼し

「ゼン、リュミリエ、ダン、明日からよろしくな」

「「「はい!師匠!」」」

「ユウ!おまえ呼び捨てにするな!」

と座長が割り込むも

「かまわん。教師が生徒にへりくだる必要はない。ただし、ユウ、怪我だけはさせるなよ」

「心得ております」

くそ、ベルガンドのおっさん、セリフの後半に殺気が乗っかってるぞ。

「では、片付けがございますので、これで失礼します」

と、俺はテントの外に逃げ出した。

途端に誰かにぶつかった。

「あらあら、ユウ。どうしましたの?顔色が悪いですよ?」

ネーベラだった。

「あはは、ちょっとな。貴族様の迫力に気圧されちまった」

「そうですか。ちょっとこちらへ」

と物陰に連れて行かれたが、ネーベラ、大きいから、物陰でも目立つんだけど。失礼だから言わないけど。

「何か、頼まれごとですか?」

「あぁ、明日から一週間、通いで芝居の稽古を子供たちにつけてくれ、とさ」

「貴族は命じるのが仕事の一つ。命じられる事には不慣れですし、貴族に命じることが出来るのは王のみ。対応さえ間違えなければ、ここのベルガンド様は良き方ですよ」

「そこは心得てるよ」

「うふふ、ならば大丈夫ですよ。ユウ、あなたなら、立派にお勤めできると思いますよ」

「ありがとな、ネーベラ。気が楽になった」

「いえいえ、あとはカーラさんにお任せしましょうか」

とネーベラは去っていった。

そこにカーラが走ってきた。

「ユウ!大丈夫?さっき顔色悪かったけど……ネーベラと浮気したら治った?」

「するかボケ」

と頭を軽く小突いてやった。

「えへへ」

「なんだよ?」

「ユウの浮気しない宣言、いただきました」

何か言い返したら藪蛇案件なので、俺は黙って片付けに専念することにした。


宿の部屋に戻り、まとわりついてくるカーラを適当に受け流しながら、俺は明日からのプログラムを考える。

お遊びタイムで舞台に上げた際の側転から考えるに、運動音痴ではない。子供ながらの身体の柔らかさと無謀さがある。

実戦なんて、平和な世の中じゃ必要ないのかもしれないが、バク転くらいは出来て損がないから、そこまで仕込もう。

そのためにはマットがいるな。劇団の連中と違って雑には仕込めない。土の上で練習させて怪我させたら、例の西大陸とやらに送られかねない。

マットに関しちゃ、先を見越して、デニガンに発注済み。

ちと確認しよう。まだだったら、他の手を考えなきゃだし。

「ちょっと、デニガンの部屋に行ってくる」

「あ、なら、あたしも行く。アロンの様子もたまには見てあげないと」

「優しい姉上だな」

「そうでしょ?たまに気にする優しさ」

放任主義なんだと思っておこう。


「ねえデーニガン。ワイルドボアの革の加工、終わったぁ?」

「可愛らしく言っても、無駄じゃ。半年くらいかかると言っただろうが」

山の中で狩ったワイルドボアの革で綿状のものを包んでマットにしたい!とは言って頼んだのだが、やはり時間的に無理だったか。

「皮をなめして革にするのに時間がかかると言ったよな?」

「万が一、新技術発見!とかで早まらないかと思ってさ」

「その新技術を探してこい、バカタレ」

「はいはい」

「おおいカーラ」

「なに?」

「おまえの弟を叩き起こせ。儂じゃ殴っても起きんのだ」

ドワーフに殴られて永眠してるだけじゃないかと俺は思ったが、普通に寝言を何やらつぶやきながら、机に突っ伏して寝てるんで、生きてはいるっぽい。

「過酷な現場だね、ここは」

「ん?ユウもやるか?」

「カーラ、アロンを早く起こすんだ!」

「はいはい。よいっせっ!」

あ、脳天にかかと落とし。

「んん……あ、姉ちゃん」

「起きて仕事続けて」

「はーい」

こいつ、不死身なんじゃあるまいか?


俺とカーラは再び部屋に戻った。

さて困った。マット無しじゃバク転どころか側転の練習さえ危ない。

「カーラ、なんかアイデアないか?転げ回っても衝撃を吸収できる敷物」

「あたしのことを頼ってくれるのは、溢れるほど嬉しいけど……うーん、ネーベラのお腹とか」

なんか、昔見たアニメにそんなキャラいたな。

「ネーベラ、子供好きだし」

なにそのワンチャンあるみたいな流れ。

カーラがベッドの上で手招きしているが、誘いに乗ったら、今日はそれ以外何もできなくなる。

ん?……ベッドか。

「あるじゃねえか!」

「なになに、急に」

「ベッドのマットレスっていう手があった」

「リュミリエちゃんにイタズラでもするの?」

こいつ……

「だ、黙んないでよ、冗談なんだから」

口は災いの元だからなぁ。

「ね、ねえ、ごめんなさい。変なこと言ってごめんなさい。ユウ、ねえ」

あ、泣き出した。

これくらいにしといてやるか。

「もう、つまらないこと言うなよ」

「うん、うん、うん」

と、しがみついてきた。

ふぅ。こういうのが面倒なんだよな。でも、こっちも惚れてるわけだし、やれやれ。

結局マットレスを使うこと以外、何も決まらずに、カーラに没頭する羽目になった。

最悪、剣闘だけ教えりゃ、依頼は果たした事になるんだし。

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