第17話 戦いは終演へと向かうの、かな?
「さっきの3兄弟、レイガにとどめを刺すシーンに一緒に出したい。そうなると、俺達悪党が観客席から連れてくるのはおかしい。なので、メルが連れてくる役目。で、きっかけだが、ザムドとルリハがピンチになる場面。あそこで観客の声援だけじゃなく、実力行使も含ませたいってわけだ」
「そこまで貴族にゴマするわけ?ユウのくせに?」
「その言い方に対しちゃ文句しか無いが、理由としちゃ、さっきのお遊びで、あの兄弟の受けの良さを利用しない手はないって考えただけだ。座長も文句言うどころか手当弾むくらいの勢いさ……きっと」
皆の目が疑いから諦めに変わる。
「この劇に関しちゃ、ユウの勘を信じるよ、ぼくは」
「ザムドがそういうなら、あたいも」
「われ、同じく」
「あたしはいつでもユウを信じる」
「姉ちゃんがそう言うなら、おいらも」
皆、そう言ってくれるのは嬉しいが、別に決を取ったつもりもないし、何言われようが強行する気だったけど。
「わかったわよ、わたしもユウの指示通りにやるわ」
当たり前だ、邪教エルフ!と言い返したいのを我慢して
「頼む」
と答え、全員に変更になる流れを指示した。
「座長にはいいの?」
「こういうときにこっちに来ないやつの事なんか知らない」
ユウらしいと皆に笑われた。別にいいけどよ。
鐘の音が響いた。
はいはい、トイレ終わり。さっさと席に戻れ貴族様ども。と、口には出さずにテントから顔半分だけ出して念波を送る。
実際そんな能力があったら、今ので俺、殺されるかなぁ。
「ユウ、お腹がひくついてる。なんか変なこと考えてるでしょ?」
とカーラに指摘された。
執事な人が声をかけてきた。
「皆様の準備が整いましたので、よろしくお願いします」
「あいよ」
さぁ、再開しよう。
俺はカーラとアロンを従え、颯爽とテントを飛び出し叫んだ。
「レイガ様!ご降臨ください!」
すると、レイガが今までにないほどの大きな雄叫びを上げた。
うはっ、観客が固まった。リザードマンの本気の叫び、怖ぇぇぇぇ!
「我を呼んだか、我が、下僕よ」
レイガがゆっくりと登場。
おぉ、泣きだす子どももいる。
本気の迫力ってやつだ。
「レイガ様、よくぞいらっしゃいました。ご覧ください!あそこにいる多くの贄たちを!今ここにレイガ様に捧げます!」
「善き哉」
「さぁ、者共、行くぞ!」
「「ヒャッハー」」
と、俺達3人が客席に向かおうとしたタイミングで
「待てぇい!そこまでだ!」
と駆け出してくるザムドとルリハ。
「この聖騎士ザムドと」
「聖戦士ルリハが」
「「お前たちの野望を打ち砕く!」」
観客席から拍手喝采。
そう、ヒーロー登場はこうでなくちゃいけない。
マクセルが戦闘BGMをかき鳴らし、さらに盛り上げる。うん、俺の好きなヒーローのBGMね。
ここで一旦レイガと俺は退場。それを追う形でザムドも退場。
ルリハVSヒャッハーたちの対決。
ここは女児向けバトルアニメの記憶を参考に、ルリハに舞うような感じのアクションを付けた。
やりづらい、覚えられない、実戦でこんな動きしないだの文句タラタラだったが、うん、ちゃんと覚えてきれいに動けている。
観客たちも見惚れている。
あ、アロンが間合い間違えてルリハの剣が頭に当たった。舞う形のため、結構勢いつけて振り回してるんで、なんか鈍い音が聞こえたが、アロンは何事もなかったかのようにアクションを続けている。一瞬だけ固まったルリハもアロンの反応を見て、元に戻った。
うん、殴られ慣れてるバカは、こういうとき有利だよな。
俺だったら、あの勢いで殴られたら、さすがにスムーズには続けられない。さっさと負けたふりして、舞台袖に引っ込む。
「さぁ、魔界へ帰る時間です!ホーリーーーーダンシングーーーーピュリフィケーショーーーン!」
と、その場で回転して、剣をヒャッハーたちに突き出す。
メルの光魔法がそこで炸裂。
「「うあわぁぁぁぁ」」
と舞台袖に吹っ飛び、ヒャッハーたち退場。
「よしっ」
と可愛くガッツポーズ(技名叫びも、このポーズも嫌がられた)をするルリハ。
観客から声援を受け、まんざらでもない表情で一旦退場。
そして舞台に飛び出す、俺とザムド。
「聖騎士よ、レイガ様の手を煩わせるまでもない!ここで葬ってくれるわ!」
「かかって来い!」
俺とザムドの剣が激しくぶつかる。……壊れない程度に、ね。
俺がバク転でザムドの攻撃を避けたり、背落ちでやられるリアクションを取るたびに「おぉぉ」という観客からの感心だかなんだかの声が聞こえる。
悪い気分じゃない。
さて、そろそろ必殺技タイム。
ダメージ蓄積でガクリと膝をついた俺に向かい、
「魔界へ帰れ!ホーリーーースラッーッシュ!」
とザムドが剣を振り下ろす。
再びメルの光魔法が炸裂。
「おのれぇぇぇぇ!」
という断末魔とともに、俺も退場。
それと入れ替わるように、ルリハが舞台に転がり込んでくる。
それを追って現れるレイガ。
さぁ、クライマックスだ。3人とも頑張ってくれ。
ルリハのピンチに割って入るザムド。
「大丈夫かルリハ!」
「はい!」
と、なんだか乙女な表情で返しやがる。まぁいいけど、本音よりも芝居を優先してほしい。
「よし!行くぞ!」
二人がかりでレイガに斬りかかるが、全く通用しない状況。
実際、当たっても平気だから当ててくれとレイガに言われているので、バチバチと当たる音がすごい。
次の問題は効果音だな。そしてマイクとスピーカーが欲しい。
何か邪教の魔法でなんとかなりそうなのがイヤなんだが。
それはともかく、
「よし、行ってこい」
とメルの背中を叩く。
メルが勢いをつけて舞台脇に飛び出す。
「みんなー、ザムドとルリハがピンチだから大きな声で、がんばれーって応援して!行くよ、せーの!」
「がんばれー」
「声が小さいよ、みんな、もう1回!せーの!」
「「「「がんばれーーーー!!!」」」」
声援に応えるかのように、レイガの斬撃を押し返すザムド、ルリハ。
「あと、少し!あと少しの力があれば、魔神に技を当てられるんだ!」
ザムドの悲痛な叫び。
いいね。良いアドリブ。俺の望みを理解している。さすが主演俳優。
そしてメルが叫ぶ。
「ダンくん、ゼンくん、リュミリエちゃん!さっきの魔神軍の宝物、小聖剣の力で、二人を助けて!お願い」
突然の指名に驚き、キョロキョロしている3人。だが、父であるベルガンド様がニコニコしながら行きなさいと促すと、おっかなびっくりしながら3人が出てきてくれた。
ナイスサポートだ貴族の父さん!そしてメルが手伝うこと無く、3人は自力で舞台に来てくれた。
きちんと、特性のおみやげ聖剣も携えている。
「いいか、3人で聖剣を振り上げて、魔神に向かって振り下ろしてくれ!聖なる光よ!と叫びながら、タイミングを合わせて!」
注文多いなと、我ながら思うが、まぁ、いい。
メルが3人を横並びにして動きを再説明。
力強く頷く3人。
メルは3人の後ろに立ち、
「さぁ、行くよ、せーの!」
「「「聖なる光よ!」」」
動きに合わせてメルが光魔法を放つ。
「ぐおぉぉぉぉ」
と怯むレイガ。実際眩しかろう。
「よし!今だ!ルリハ!」
「はい!」
「「ホーリーーーツイーーーン!パワースラッーッシュ!」」
二人のアクションに合わせて、メルが点滅するかのように立て続けに光魔法を放つ。
本人曰く、こんな使い方、普通しないそうだ。知ったこっちゃないけど。
「ぐぉぉぉぉぉぉ」
魔神レイガ、消滅っと。
「やったぁぁぁ!魔神が倒されたよ!みんな、ザムドとルリハとダンくん、ゼンくん、リュミリエちゃんに大きな拍手を!」
とメルの煽りに観客席から大きな拍手が響く。追加戦士3兄弟も何か誇らしげだ。
こういうのがショーの醍醐味だ。偽りの中の本当っていうか、うん。
ヒャッハーたちと俺はやられた瞬間、速攻で控えに駆け込んで普段着に着替え、その後に駆け込んでくるレイガやザムドの衣装脱がしを手伝う。
ルリハは反対側の控えでカーラに手伝われて着替えている、はずだ。
普段なら、ここから土産やら菓子の販売の手伝いに回るのだが、今回はそれが無い分だけ、楽だ。
衣装や小道具の片付けに入る。
ザムドとルリハとレイガは貴族様のお褒めの言葉を賜りに、挨拶回りに。貴族付き合いって大変だな。
マクセルは手伝わずに酒瓶持って、どこかへ。いつものことだ。
そこに座長出現。
「ユウ、やってくれたな!」
と思いっきり背中を叩かれた。
「受けたでしょ?」
「あぁ、ベルガンド様も大喜びだ」
「なら、普通に褒めろや」
「あそこまで変更するなら相談しろ」
「あ?休憩時間くらい、自主的に控えに顔出せ、座長だろうが」
「やかましい!」
いや、これでも仲良くやってんだよ?馬が合わないだけで。
これにて今回の大仕事も無事終了。
めでたしめでたし。
のはずだったんだが……




