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異世界劇団 〜魔王討伐後の平和な世界をヒーローショーでドサ回りします~  作者: 高城 剣


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第16話 貴族のお子様と悪の軍団

俺は目を閉じて、ゆっくりと深呼吸する。

そうしながら、ショーの流れを高速で思い返す。

ショーは水物だ。客の反応いかんによっては流れが変わる。

脳内で、そんな分岐もシミュレート。

実は俺はアドリブに弱い。だから可能性を予期しておく。

誰かが失敗したり怪我したり客が乱入したり。過去の経験は全て起こりうる可能性。

だから、こんな事を考えなきゃいけない、この時間が嫌いだ。嫌いでもやらなきゃいけない。

観客を楽しませ、演者が楽しむのが最善。そこを目指すために嫌いな時間を過ごす。

多かれ少なかれ、メンバーどもは似た心境……だと思いたい。

「お願いします!」

テントの外から声がかかった。

俺は目を開け立ち上がる。

「さぁ、ショータイムだ!」


メルの前口上が終わると俺は一声奇声を発し、アロンとともにテントから飛び出す。

俺の声に合わせてカーラも飛び出してくる。

マクセルが悪のテーマっぽいやつを演奏。うん、ノリノリ。

そのまま3人でヒャッハーな声を上げつつステージを走り回り、カーラとアロンは観客のいるひな壇に飛び上がる。

悲鳴や嬌声を上げる客の間を駆け抜け、再びステージに戻る。

「さぁ、野郎共!我らが魔神に捧げる生贄の品定めは終わったか?」

「「ヒャッハー」」

返事は普通にしろよ、バカっぽい……まぁいいや、バカだし。

「よおし、それでは始めるとしようか!人間どもへの侵攻を!」

今度は走らずに武器を構えてじわじわとひな壇に迫る。

「お待ちなさい!」

お約束な叫び声とともにルリハ登場。うん、ルリハの鎧もメタリックさが増している。

ここで女戦士っぽい曲にマクセルが切り替える。

「なんだ貴様は!」

「邪悪なるものを討ち滅ぼす、正義の使徒!聖戦士ルリハ!ここに推参!」

うん、名乗りポーズもきれいに決まった。最初に提案したときは「バカみたい」と散々嫌がられたが、今や受けが良いから癖になってる様子。

……ふっ、計画通り。

「おのれぇ!我らの邪魔はさせん!いくぞ!」

と3人がかりで次々と斬りかかるが華麗に躱されて反撃を受ける。

いいぞ、ルリハの動きが良い。こりゃ萌え……燃えるぜ!

「者ども、なにを、しているか!!」

そこに部下の不甲斐なさに腹を立てた魔神レイガ登場。

ド派手な羽の装飾や大仰な動きに客がどよめく。

そうだ、悪党は怖くないといけない。

レイガに挑むルリハだが、まったく歯が立たない。

「ルリハーっ!」

とステージにザムド登場。

ルリハが、このザムドが助けに入る場面に本気でキュンキュンしているのを俺は知っている。

「ザムドぉ」

あ、キュンしすぎて甘えた声出してやがる。

「我が聖剣で悪しき闇を打ち払わん!聖騎士ザムド!参上!」

うん、名乗りも完璧。

メインの戦闘テーマ曲へマクセルが切り替え。

「ルリハ、しっかりしろ!ここは切り抜けるぞ!」

と、アドリブセリフで色ボケなルリハに喝を入れて、ザムドは俺達に剣を向けた。

成長したなぁ、ザムド。

ここからも悪党が押し気味のバトル。正義のピンチは続く。

「ルリハ、退くぞ!ライトニングスラッシュ!」

と、ザムドが技名を叫ぶのに合わせて、メルが明かりの魔法をザムドの前方に放つ。

魔法は地面に当たって弾け、カメラのフラッシュを焚いたような効果をもたらす。

舞台を囲むように松明が焚かれ、明るさは十分だったが、やはりフラッシュの光は強烈。魔法だけど。

正直、魔法が弾けるタイミングで目をそらさないと、ダメージがキツイ。観客は・・・まぁ、ちょいと目がチカチカするだろうが、聖騎士様の技だ。仕方がない。

衣装の魔改造のせいもあり、余計眩しい。

ちなみに、ロイナンシュッテに来るまで、こんな事を出来ると一言も言わなかったメルを俺は許していない。

で、その隙にザムドとルリハは舞台から捌けた。

そこでマクセルの演奏もストップ。しばし休憩。呑まなきゃいいけど。

取り残された悪党。魔神レイガは恨み言をつぶやきながら、俺達に後を任せて、一時撤退。


さて、お遊びの時間だ。

「聖騎士と聖戦士は再びやってくる。その前に、ここにいる連中の誰かを味方に引き込みたい!カーラ、アロン、行け!」

アロンはひな壇の最上段にジャンプ。カーラは素早く左右に飛び回る。

悲鳴を上げる子どもたち。一部大人貴族様も悲鳴を上げてる。よしよし、いい感じ。

「さぁ、遊んでないで、候補者を連れてこい!」

「「ヒャッハー」」

うん、だから、それを返事に使うな。教えた俺が悪かった。

主催のベルガント様、だっけ?そいつの坊ちゃま嬢ちゃま3人を、座長の指示通り、二人が連れてきた。

忘れたり、間違えたりしないかと密かにドキドキものだったが、座長の方を確認する限り、間違わずに済んだようだ。

「ふむ、怯えもせずに堂々としているな!見込みのある奴らだ」

多少持ち上げないとね。

「お前たちには、我ら魔神軍の配下となってもらう」

「「「えーーーー」」」

ふむ、揃いも揃って堂々と不満表明。

「不服のようだな。見込みがあるようなので連れてきたのだが」

「悪いことをしちゃいけないんだぞ」

正論だ。素晴らしい。貴族も捨てたもんじゃない。

「なるほどな。しかし!連れてきた手前、何もさせずにこのまま帰すとあっては魔神軍の名折れでもある。そこで!」

と言葉を切り、3人の子供達一人ひとりの目を見る。

全員逸らさない。すげえな。

「まずは自己紹介だ。我が名は魔神レイガ様の一の配下、ユウ!」

無駄に見栄を切ってやった。ひとに名前を聞くときは自分から名乗るんだ。そこは忘れちゃいけない。悪党でもね。

「さぁ、お前たちの名前を教えてもらおう」

「ゼン・ベルガント」

「歳は幾つだ?」

「6歳」

「よし、次はお前の名だ」

「リュミリエ・ベルガント」

「歳は幾つだ?」

「5歳よ」

「最後のおまえ、名は?」

「ダン・ベルガント。4歳」

「ほぉ、お前たちは兄弟なのか?」

「うん」

とダンくん。素直だね、君は。知ってて連れてきたんだけど。

それにしても年子か、奥さん頑張ったんだな。

なんて余計な思考は一旦置いておいて。

「この俺様と同じ事を見事にこなしたら、素直に帰してやる。いいか、まずはこれだ!」

と俺は2回側転。

「どうだ。ゼン!やってみろ」

「簡単だよ」

と生意気モードで余裕のクリア。

「おっと、リュミリエはスカートか。他のこと・・・」

「わたしにも出来る!」

と止めるまもなく側転しちゃったよ。。スカートがまくれて、下のドロワースが見えちゃったけど、大丈夫かな?と恐る恐る父親ベルガンドを見ると拍手してる。

よかった。あ、座長はこっち睨んでるや。。まぁ、いいか。

「ははは、活発なお嬢さんだ。さて、ダン。出来るか?」

躊躇するダンくんにゼンとリュミリエが何やら耳打ち。アドバイスかな。仲良きことは美しきかな。

「頑張る!」

ちょっと勢いつけて、回った!ややふらついたが、ちゃんと出来てる。

「すごいな、ダン。やるではないか」

この上なく、嬉しそうに微笑むダンくん。観客からも拍手が上がる。

もしかして、いい人たちなのか?

貴族って、ゲスで冷酷なんじゃないのか?

偏見?

「3人とも見事にやり遂げおって・・・仕方がない。最後の試練だ。できるだけ大きな声で、お前たちの父と母に感謝の言葉を言うのだ!」

あ、3人集まってコソコソ話し始めた。

「準備はいいか。まずはゼン、じゃなくてリュミリエからだ」

一瞬、年齢順じゃないの?という顔でこちらを見たが、すぐに観客席の方を向いた。

「お父様!お母様!いつもありがとうございます!わたしは、こんな悪党たちには負けません!」

とスカートの裾を持ち上げて優雅にお辞儀。

観客大喝采。

いいね。

「では、ゼン!」

こちらに不敵な笑みを向け、観客席に向いた。

「お父様!お母様!このゼン、ロイナンシュッテを治めるに値する、立派な貴族を目指します!」

観客再び大喝采。

何だよ、俺泣きそう。

「よぉし、ダン。お前の意気込み、皆に聞かせてやれ」

「えっと・・・お父様、お母様、僕は、ゼン兄様を支えられるよう、勉強頑張ります!」

おいおい、お前たちの父上、スタンディングオベーションだよ。

こいつら、ノブレス・オブリージュってやつ、しっかり身につけてやがる。

「カーラ、アロン、この素晴らしき子供たちに、土産を!」

中身は例のお土産用の金ピカな剣を少しグレードアップしてザムドの聖剣に似せたもの。特別な非売品だ。

頑張って作ったのはアロン。

俺は一人ひとりに土産を渡し、元の席に戻るよう促した。

さぁ、お遊びの時間は終わりだ。ここからショーは後半戦に突入する。


さぁ、魔神レイガの再登場!のはずが、座長がメルに駆け寄って耳打ちした。

するとメルはステージ中央に走り出て

「皆様!ここで一旦休憩に入ります。執事の方が鐘を鳴らしますので、その音が聞こえましたら、お戻りください。ほんの一服、出来る程度のお時間です。ご承知おきください」

前半20分くらいだったんだけどな。要はトイレタイムだな。

街中でやるときは、こんな休憩は無かったのに、大した気遣いなこって。こっちのテンション維持も考えてくれ。変に気が抜けると怪我するぞ。

こっちは衣装脱ぐ暇もないからトイレなんか行けないし。

ステージ上にいるわけにもいかず、俺もカーラもアロンもテントに戻る。

せっかく時間をもらったんで、ザムドたちと同じテントに。ルリハが邪魔しやがって的な視線を向けてきたが気にしない。

仕事中だしな。

「なぁ、ザムド。後半のラストバトルなんだが、オチを少し変えたい。レイガ、カーラ、アロン・・・ルリハも聞けよ」

「聞いてるわ」

と不機嫌モード。

後で叱責しよう。本番前は芝居に響くから言わないけど。

あ、メルにもやらせることがあるんだ。テントから顔と片手だけ出して手招き。

こっちに気付き、え?わたし?的なリアクションしてくるのがウザい。おまえしかいないだろ。

「なぁに、呼びつけて・・・うわっ狭っ。なんでこっちに集まってんの?」

「う・ち・あ・わ・せ、だ」

「そ、そう。で?」

「ラストバトルの一部を変更する。それに合わせて、メルにもやってもらうことがある」

なんかすげぇ面倒くさそうな顔しやがる。

めんどくせえと感じるのは俺の方だ。

「いいか、良く聞け」

と、俺は改めて話し始めた。

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