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予知夢

『レティシア、君の行いは僕もこれ以上擁護できない。現時点をもって、君との婚約を破棄する』


冷たく言い放つアレックス殿下。周りの方々も冷ややかな視線を私に向けている。殿下…?一体何を…。そう口にしようとした私から出た言葉は、全く違う、罵声だった。


『一体何を仰っているのかしら?そこにいる女は殿下や皆さまを誑かした品の無い悪女ではありませんか!その女に私は貴族としてのマナーを教えて差し上げただけですわ!』



『お前、頭おかしいんじゃねぇの?階段から突き落とすことが貴族のマナーかよ?』


『そのようなことは知りませんわ。それに、貴方のような口の悪い男に言われたくなどありませんわ、ライナス』


『白々しいですね。貴女が突き落としたところを見た方もいるんですよ?素直に認めたらどうですか』


『私は私の矜持に従っているだけ。何も間違ったことはしていませんわ、カリウス・ウェイン』


『貴女はやっぱり好みじゃないなー。性格も悪いし』


『それは貴方だけには言われたくありませんわよ、ルーカス』


『ふん、貴様は言い返すしか能のない女か。やはり貴様や公爵家など罰を受けて当然だ』


『黙りなさいセルバ・マグノリア!私や公爵家を侮辱するなど不敬ですわ!』


『レティシア様……』


こんなこと、言いたくなどないのに……。どうして…?どうして体が言うことを聞かないの…?ライナス様、キツイ言い方をしてごめんなさい…。ああ、殿下…そんな冷たい目で見ないでください……。皆様の冷たい視線を感じながら、私の視界は暗くなっていった…。


○○○


「はっ!?」


私はバッと背を起こした。辺りを見ればあの場所ではなく自分の部屋。たくさんの汗が気持ち悪い。どうやら"アレ"は夢だったようだ。なぜあのような夢を見てしまったのかしら…?心当たりはないし、どことなく皆今より大人びていた。


「……分からないわね」


私は一度夢のことを頭の隅に置き、ベルを鳴らした。少しの間を開けてメイドが入ってくる。私が幼い頃から仕えてくれている専属メイドのリリーだ。


「おはようございます。お嬢様…って!凄い汗ですよ!?どうかされましたか!?」


「大丈夫よ、少し嫌な夢を見ただけ。湯浴みの用意をしてくれるかしら?」


「はい、すぐに!」


慌てるリリーに苦笑しつつ、私はタオルを受け取り、汗を拭う。あれは一体何だったのか……。予知夢……?いや、だとしたら私は、殿下に罪を問い詰められ、それを認めず、罵倒を……?そんな……。


私は夢の内容を整理する。夢にはこの国の第一王子アレックス・ノール・ライゼクス殿下、アイザック辺境伯令息ライナス・アイザック様、マグノリア侯爵令息セルバ・マグノリア様、シュライバー子爵令息ルーカス・シュライバー様、ウェイン伯爵令息カリウス・ウェイン様。


そして…………あの少女は、誰…?ブロンドの長い髪を後ろでひとまとめにしている彼女は、殿下たちの隣りにいた。そして、こちらを悲しそうに見ていた。彼女は一体誰なのか、どうして殿下たちと一緒にいるのか……。


あの夢には、解らないことが多い。だけれど、今よりも未来のことなのは確かだ。おそらくあの会場は3年生の卒業パーティーだろう。そこで、私とアレックス殿下は卒業と同時に結婚をすることになる。夢では、違ったけれど。


とにかく、私はこの夢の通りにならないように。気を引き締めなくては。そう心に誓った。

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