応接室
私達は、そのまま城内へと案内され、謁見の間ではなく、応接室のような場所に通された。そこで暫く待っていると、一人の男性が入ってきた。その姿を見た瞬間、私は思わず固まってしまうことになった。何故ならば、そこに現れた男性は、紛れもなく私の父親であるアレク=ファルシアナの姿だったからである。
しかし、私の記憶にある父親とは違い、髪の色が白銀色をしていたんだ。私は咄嵯に鑑定を使ってみたのだが、ステータス画面に表示されていた名前も違っていた。だから私は一瞬戸惑ってしまった。……えっとぉ……どういうことなんですかねぇ……。
私は混乱してしまった頭を必死に落ち着かせながら、改めて目の前の人物を見つめていた。見た目は完全に父上に間違いないんだけどなぁ。ただ、名前が違うんだよなぁ……。……うーむ…………あっ、そうだ! 確か、父上は昔言っていたような気がする。『私は若い頃から冒険者に憧れていてな』とかなんとか……。ということはつまり、今のこの姿は父上が憧れている理想の冒険者の姿で、本当の父上はこっちの方ということなのか?……うん、きっとそうなんだと思う。だから、さっきまではあんなにも畏まった様子を見せていたのか。納得したよ。
それから程なくして、国王陛下がやってきた。その姿を見て再び驚くことになる。というのも、今度は母上が一緒についてきていたからだ。……というか、二人とも若返ってないか? 特に母上なんて、まるで二十代前半にしか見えないんですが? あれれぇ? おかしいなぁ? そんなことを考えながらも、俺はその場で立ち上がり、頭を下げた。
「面を上げろ」と言われてから顔を上げると、そこには懐かしい二人の姿が目に飛び込んできた。……あれっ? なんかおかしくないか? 普通ならもっと年老いた姿を想像していたんだが、目の前にいる二人はどう見ても十代の若者に見えるし、声も若い時のものに聞こえた。……もしかして、これが噂に聞くアンチエイジングというものなのかもしれないな。
「久しいなカイト」
「はい」
「息災であったか?」
「はい」
「そうか」
「はい」
……んんんんんんんんんんんんん……なんだこの会話は?
「ところで、今日は何用で参ったのだ?」
……おいおい、マジかよ。
これじゃあ、まるっきり面接じゃないか!
「実は……」
「待て」
「はい?」
「お前の後ろにいる者達は誰だ?」
「あの……」
「カイト様、私から説明させていただきます」
このようなやり取りを何度か繰り返した後、ようやく話が前に進むことになった。
「なるほど、そういうことでしたらお任せください!」
「助かる」
「それでは、早速準備に取り掛からせて頂きたいと思いますので、本日はこれにて失礼致します」
「分かった。よろしく頼むぞ」