救護
「あれ? 彼は確か……?」
ふと思い出したように呟く女性の声を聞き、何事だろうと視線を向けると……そこには見覚えのある顔があったんだよ。
「君はまさか!?」
そうだ。間違いない! この人は、以前王城で会ったことのあるあの大臣じゃないか!!
「どうして彼がここにいるんだろう? それに、他の人たちは一体……?」
……うん? よく見ると他にも数名の兵士がいるようだが、彼らの姿にもどこか違和感があるような気がするな? 一体どういうことだろうか……? とりあえず、今は目の前にいる彼を助けることが先決だし、後でゆっくり考えるとするか……。それからしばらくして、ようやく目を覚ます様子を見せたのでホッとしたのだが……
「ああっ……私はなんてことをしてしまったんでしょう……」
「えっと……どうかされたんですか?」
「いえ、なんでもありません……。それより、あなた方が私を救ってくれたんですね。本当に感謝致します」
「お気になさらないでください。当然のことをしたまでですから。それよりも、なぜあんなところに倒れていたのか教えてもらえませんでしょうか?」
問いかけたところ、どうやら彼は国境付近の警備をしていたらしい。ところが突然魔物の大群が現れ、なすすべもなく蹂躙されてしまったのだという。
「何とも恐ろしい話ですね。しかし、それだけの数を相手にしても無事だったとはさすがは兵士といったところですね」
「はははっ、確かにそれもありますが、私の実力はまだまだですよ」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はカイトといいます」
「わたくしはリゼットと申します」
「あたしはマリアンヌよぉ」
「僕はシャルロットと言います」
「これはご丁寧にどうも。私はこの国の宰相を務めておりますアベル・レヴァインと申すものでございます」
……ん? この人って確か……? ああ、思い出してきたぞ。私の記憶違いでなければ、この国で一番偉い人じゃないのか? そんな人がなんでこんなところで戦っているのかわからないけど……まあいいか。それよりも今は怪我の治療を優先しよう。その後、私達は全員で協力して怪我人たちを次々と治療していったんだけど……
「うーむ。これでもまだ足りないのか」
「仕方がないでしょう。これだけの人数がいっぺんに怪我をしたのですから」
「そうだねぇ……。でも、このまま放っておくわけにはいかないだろう?」
「それはそうだけどよ。でも、どこに運ぶつもりなんだ?」
「そうだよ。いくら兵士さん達でも、一度に運びきれるかどうか」
中々思うように事が進まなかった。するとその時、声をかけられた。
「ちょっと待った! それなら私に任せてくれないか?」