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ファンタジー転生記  作者: 林田力
記憶喪失と魔王討伐
36/40

小説家と使い魔

彼女と過ごす日々は楽しかった。今までの人生の中で一番充実しているかもしれない。このまま永遠に続けばいいとさえ思えた。だが、そんな俺にも一つだけ気がかりなことがあった。それは、やはり記憶喪失のことである。いつになったら戻るのか……まったく見当もつかなかったのだ。

「なぁ、メイ……」

「はい?」

「おまえはさ、どうして記憶喪失なんかになっちまったんだ?」

「わかりません……」

「そっか……」

「ごめんなさい……」

「いや、謝るようなことじゃないって」

「ありがとうございます……」

「……」

「……」

……気まずい沈黙が流れる。俺は話題を変えることにした。

「ところでさ……」

「はい?」

「おまえって、どんな仕事に就いてたんだ?」

「あっ、そういえばまだ言ってませんでしたよね?」

「ああ。聞いてなかったよな?」

「実は私、小説家なんです」

「ええっ!?」

「といっても、駆け出しの新人ですけど……」

「マジかよ!?」

「はい。一応、ペンネームは『天野河星乃』といいます」

「アマノガワセイノ?……変わった名前だな」

「はい。自分でも変だとは思うんですけど……」

「いやいや、全然おかしくねぇよ」

「えっ?」

「だって小説書くのに必要だろ? そういう名前はさ」

「あっ……」

「それに、すげぇ良いと思うぜ!」

「ほ、本当に!?」

「ああ!……というより超似合ってるし!!」

「えっ!?……そっ、そうなんですか!?」

「うん!めちゃくちゃカッコイイじゃん!! 俺、マジで感動したよ!!」

「えっ、ええっ!?」

「だから自信持てって!」

「はいっ!」

「よし!じゃあ早速だけど、何か面白い話を聞かせてくれ!」

「えっ?……いきなりですか!?」

「おう!頼むぜ!!」

「う~ん、困ったなぁ……。今、特に思いつかないというか……」

「なんだよ!……せっかく楽しみにしてたのに!」

「ごめんなさい……」

「まぁ、しょうがないけどさ……」

……再び沈黙が訪れる。……すると、メイが突然立ち上がった。

「あの……」

「なんだ?」

「少し散歩に行きましょう」

「おっ、いいね!行こうぜ!!」

「はい♪」

俺はメイと一緒に外へ出た。

「気持ちいいですね」

「そうだな」

心地よい風と暖かい陽射しを感じる。まるで春のような気候だった。

俺たちは無言で歩き続けた。そして、しばらく歩いた頃……。メイが俺の前に立った。

「どうした?」

彼女は無表情のまま両手を広げると、ゆっくりと目を閉じた……。……次の瞬間、彼女の身体が眩しく光る。

「なっ、何だよコレ!?」

あまりのまぶしさに思わず手で目を覆う。やがて光が収まると、そこには一人の少女が立っていた。……いや違う!これは人間じゃない!そこにいたのは、背中から天使のように真っ白で大きな翼を生やした、美しい女性の姿であった。

「あなたが私のマスターですね?」

「えっ?……マスター?……どういう意味だ?」

「私はあなたの使い魔です」

「つかいまっ?……ちょっと待ってくれよ! 話が見えないんだけど!?」

「詳しい説明は後でします。今は時間がありません」

「時間が無いって……一体なんの話をしてんだ!?」

「お願いです。どうか私を信じてください」

「信じるって言われてもな……」

「信じていただけないなら仕方ありません」

「ちょっ、おい!どこ行くつもりだ!?」

女性は振り返ることなく飛び去って行った。


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