ベッドの上
「おーい! こっちだ!」
「久しぶりぃ~!」
「元気だった?」
「うん、まぁね……」
「仕事はどうよ? 順調か?」
「う~ん……ボチボチかな」
久しぶりに会う仲間との会話は弾んだ。
「うん、そうだね。数え切れないほど、いっぱい、冗談言い合って、いっしょに笑ったりしてたなぁ。でも、あの時は、ほんとうに楽しかったよ」
「そうですね。わたしも楽しい思い出ばかり、思い浮かぶわ」
「ああ……」
「ねえ、また会えるよね?」
「もちろんさ。いつかまた必ず会おうぜ!」
「ええ、約束ですよ!」
「じゃあな、みんな! 達者で暮らせや!」
「バイバ~イ!!」
こうして、俺とメイの意識は現実世界へと戻っていった……。
……気がつくと俺たちはベッドの上にいた。ここは病院の一室らしい。
「あれっ!? なんでこんなところにいるんだろう!?」
「ふぇっ!?……あっ!! そっか! 私、事故に遭ってここに運ばれたんですよね!?」
「おっ、覚えてないのか?」
「はい……なんか頭がボーッとしていて、よくわかりません……」
「マジかよ……」
「はい……」
……まさか、夢オチってことはないだろうな? 俺は自分の頬をつねった。痛かった。これは現実なのか? それともまだ夢の中なのか? わからないが、とりあえず今は、目の前にある現実の世界を生きるしかないようだ。
「うぅ……頭がまだズキズキします……」
「それにしても、おまえの記憶喪失には驚いたぞ」
「本当に何もかも忘れちゃっていて……」
「気にするな。記憶なんてそのうち戻るさ」
「だと良いんですけど……」
「それより、これからのことだが……」
「はい?」
「まずは退院してからの話だよ」
「あっ、そういえば……」
「しばらく入院する必要があるみたいだから、そのつもりでいろよ」
「そうなんですか?……わかりました。ではお言葉に甘えて、もう少しだけ休ませてもらいますね」
「ああ、ゆっくり養生しろよ」
「はい。ところで、あなたのお名前は?」
「名前?……そんなもんねぇよ」
「えっ!?」
「だって俺、人間じゃないからさ」
「えええっ!?」
「実は悪魔なんだ」
「えええええええっ!?」
「まぁ、そういうことだからよろしく頼むわ」
「はいっ!?」
「俺の名前は『サタン』だ。ちなみに性別はない」
「ええええええっ!?」
「というわけで、しばらくの間、世話になるぜ!」
「ちょっ、ちょっと待ってください!……あなたは一体何者なんですか!?」
「だから言ったろ? 悪魔だってば!」
「えええっ!?」
「まぁ、細かいことは気にせず仲良くしようぜ!」
「ええっ!?」
「じゃあな!」
「ええっ!?」
こうして俺とメイの奇妙な共同生活が始まった……。
「はい、どうぞ」
「おおっ!サンキュー!」
「熱いうちに食べましょう♪」
「そうだな。いただきますっと……」
「いっただっきまーす♪」
……病院での一件以来、俺はずっとメイと一緒に暮らしている。彼女の両親も最初は戸惑っていたが、今ではすっかり慣れてくれたようで特に問題はなかった。むしろ歓迎されているくらいである。そして今日もまたいつものように二人で食卓を囲む……。
「美味いなコレ! メッチャうめぇじゃん!!」
「本当!? 嬉しいわ!たくさん作った甲斐があったわね!!」
「うんうん! マジで最高!!」
「えへっ?」
……彼女は料理が得意だった。毎日、朝昼晩と三食欠かすことなく作ってくれる。しかもどれも超が付くほど絶品なのだ。おかげで俺の生活水準は格段に向上したと言ってもいい。しかし、この俺が女の子の手料理を食べる日が来るとは……。人生は何が起こるかわかんないものだぜ……。
「ごちそうさまでした!!」
「はい、お粗末様でした」
「いや~!マジで幸せすぎるわ~!!」
「ふふっ、大げさだなぁ……」
「いやいや、ほんとに感謝してんだぜ?」
「えっ!?……そっ、そうなんですか?」
「うん。俺のために毎度ありがとね」
「いえ、好きでやってることなので……」
「でもさ、こんなに良くしてくれると申し訳ないというかなんと言うかさ……」
「いいんですよ! 気にしないで下さい!!」
「そうか?……じゃあ遠慮なく甘えることにするよ」
「はい!……ふふふっ」
「はははっ!」




