魔界
「ここが魔界です」
僕は目の前に広がる景色を見て感嘆の声を上げた。
「へぇ?、これが魔族たちの住処なのか」
隣にいるサタンも興味深げに見回している。
「とりあえず私の家に行くとするかな」
「はい」
僕らは歩き出した。しばらくすると大きな屋敷が見えてきた。
「あれが我が城だ」
「凄いなぁ」
サタンは目を輝かせている。
「ようこそ、ベルゼブブ邸へ」
中に入ると使用人たちが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ」
「ああ」
ベルゼブブは軽く返事をすると僕たちを案内してくれた。
「こちらの部屋でお待ちください」
「わかった」
僕は言われるまま部屋に入った。
「すごいな……」
室内を見回すと思わずため息が出た。
「どうだい気に入ったかい?」
ベルゼブブがやってきた。
「ええ、とても素晴らしいですね」
僕は素直に同意した。
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
彼は微笑むと向かい側の椅子に腰掛けた。
「それでこれから何をするんだ?」
僕は尋ねた。
「まずは君の実力を見せてもらうことにするよ」
「わかりました」
僕は立ち上がると構えを取った。
「いくぞ!」
先手を取ると拳を振り下ろした。だがあっさり避けられてしまった。続けて蹴りを放つとガードされた。さらに回し蹴りを食らわせると後ろに下がられた。
「なかなかやるね!」
彼は楽しげに笑うと剣を構えた。
「次はこっちから行くよ!」
彼は一気に間合いを詰めると斬りかかってきた。
「くっ!」
僕は慌てて避けると反撃に転じた。ベルゼブブはニヤリと笑った。そして次の瞬間には僕の腹に強烈なパンチを叩き込んでいた。あまりの威力に吹っ飛ばされ壁に激突した。
「ぐふぅ……ゲホッゴホ!」
咳き込みながらなんとか立ち上がった。正直かなり痛かった。再び剣を構えなおす。
「今度は本気で行かせてもらおう」
彼の身体から魔力が溢れ出す。
「さあ、こい!」
「いきます!」
僕は駆け寄るとその勢いのまま飛び膝蹴りを放った。しかし簡単に受け止められてしまう。続いて連続で攻撃を仕掛けるがことごとく防がれてしまう。その後も攻撃を続けるが全て受け流されてしまう。
(強い!)
内心焦りながらも必死に攻め続ける。
「うおおぉ!!」
気合とともに渾身の一撃を打ち込む。その攻撃をベルゼブブは片手で受け止める。
「これで終わりですか?」
余裕たっぷりの顔で問いかけてきた。
「まだまだぁ!!!」
僕は叫ぶと同時に全身に力を込める。すると腕や足に血管が浮き上がり筋肉が大きく膨れ上がっていく。
「これは!?」
ベルゼブブは驚いているようだ。
「喰らえぇー!!必殺・超絶破壊拳!!」
叫び声と共に全力を込めた右ストレートを放つ。ベルゼブブはそれをまともに食らうと壁を突き破って吹き飛んでいった。
「やったのか?」
サタンが恐る恐る聞いてくる。
「いえ、まだです」
僕は警戒しながら答える。すると瓦礫を押し退けるようにしてベルゼブブが現れた。
「まさかこれほどとは……」
驚いた様子だった。
「君を甘く見ていたことを謝ろう」
彼は頭を下げると真剣な眼差しを向けた。
「私と戦ってくれないだろうか?」
「いいですよ」
僕は了承すると構えをとった。
「ではいくぞ!」
ベルゼブブは一瞬で間合いを詰めると鋭い突きを放ってきた。それをギリギリのところでかわすとカウンター気味に拳を振るう。だがそれは空を切るだけだった。直後、背後に気配を感じた。振り向く間もなく背中に衝撃を受ける。そのまま地面に叩きつけられた。すぐに起き上がると追撃に備える。
「ほう、今のを避けるか……」
感心しているようだったが油断しているようには見えない。僕は慎重に相手の様子を窺いながら呼吸を整えていく。
「どうしました?もう降参しますか?」
挑発してくるような口調だ。
「冗談じゃない」
僕は不敵な笑みを浮かべた。
「そう来なくては」
彼は嬉しそうに言うとこちらに向かって走り出した。僕は迎え撃つために前に出ると拳を振り上げた。だが次の瞬間、腹部に強烈な痛みを感じて意識を失った。




