領主
「あのぉーすいません、私こういうものですぅ?」
男性はアルヴィソートと名乗った。
「えっと……アルヴィソートさん、ですよね?僕は冒険者のカイトです!お見知りおきください!」
顔を上げると、そこにいたのは長い髪を一つに結んで前に垂らした少女のような可愛らしい顔をした青年だった。
「それで、なんでしょう?」
私は用件を伝えた後すぐに立ち去るつもりでいたが、彼にどうしても聞いてみたいことがあったので質問することにした。
「失礼とは思うんですけど?貴方、本当は男性ではないですか?」
アルヴィソンは目をぱちくりさせ、「何故それを……」と言った。
「あちゃあ、ばれちまったのかよ。俺もまだまだ未熟者だなぁ。」と言いながら髪を結び直した。
「男なら隠す必要なんてありませんよね??やっぱり女の子じゃ……」
アルヴィソン改めアメリアさんは不敵に笑うと
「残念だけど、それはないんだよ。それにお前が思ってるようなことは起きてないさ」
どういうことでしょう、と思っている
「それより、ちょっと付き合ってくんないか?」
「別にいいですよ?」
彼は嬉しそうな表情になった。この人も随分分かりやすい人だ。
「まあいいか。ところで、君はこれから何か予定があるかい? なければ私の屋敷に来て欲しいのだが」
「あれ、でもでも。もうすぐギルドから依頼完了の報告が届く時間ですよね。行かない方がいいんじゃないですかぁ?」
「ああ、それもそうだな。まあ先にこちらを片付けてしまえば大丈夫だろう」
ちょうどその時だった――。
ドタドタッ!! ザッザッ!!!! 大きな足音を立てて何者かが現れたのだ。しかも複数人だと思われることから恐らく冒険者だろうと思われた。
(こいつらは一体?)
少なくとも街の人間ではないことは確かである。彼らの風貌がかなり物騒なものであることから、彼らもまた俺達と同じ目的でやってきた連中に違いなかった。
彼らは先ほど倒したばかりのホブ・ゴブリンを指差して叫び始める。
「おい見ろよ! こいつが今回の獲物らしいぜ。これだけあればしばらくは遊んで暮らせるってもんだよな?」
「ほんとだよ、これで今日くらい酒が飲めるってもんさ!」
(やはりそういうことか。どうやら我々は同じ標的を狙っていたようだな)
私達は無事に領主との顔合わせを終えた。
「如何でしたでしょうか?」
「あぁ。問題なかったよ。これで後は時を待つだけだね」
「はい。それにしてもまさかこのような手段に出るとは思いませんでした」
「まぁ、私も予想外だったけどね。でもこれでいいんだ。さぁ帰ろうか」
「はい。承知しました」
それから馬車に乗って帰路に着いた。
「あー疲れたー!何であんなおっさんと会わないといけないんだよ!」
「まあまあそう言わずに。これも大事な仕事だよ」
「でもよぉ?!」
「まあ、そう言うな。私も少し反省している」
無能公務員体質の領主に期待したことに心を痛めたらしい。
「しかし、あの時はああするしかなかったのだ」
「ええ、分かっておりますとも」
私はうなずいた。