大学生の転生
僕はいつものように大学の講義を受けていた。講義の内容は難しくはないが退屈なものばかりなので眠くなることがしばしばあった。しかし今日に限ってなぜか目が冴えて全く寝付けずにいた。
(なんでだ?)
僕は疑問に思いながらも必死に耐えていた。すると突然教授の声が聞こえなくなった。周りを見渡しても誰もこちらに注意を払っていなかった。
(あれ? みんなどこいったんだ?)
僕は不安になりキョロキョロしていると急に視界が真っ暗になった。何も見えないし音もしない。まるで暗闇の中に一人取り残されたかのようだった。
(何が起きたんだ!?パニックになっていると今度は強烈な睡魔に襲われた。抗うことができずそのまま眠りに落ちてしまった。次に目覚めた時そこは教室ではなく森の中だった。しかも服装まで変わっており革製の鎧を身につけ剣を持っていた。
(どういうことだ?)
訳がわからず混乱していたその時、茂みの方からガサガサという音がしたのでそちらを見ると全身黒ずくめの男が立っていた。
「お前は何者だ?」
僕は警戒しつつ尋ねた。
「俺は魔王軍の幹部の一人、ブラックマンティスだ」
男はニヤリと笑って名乗ると鎌を振りかざしてきた。咄嵯のことで反応が遅れてしまい避けきれず右腕を切り落とされた。激痛に襲われ悲鳴を上げた。
「ぐわあああっ!!」
あまりの痛みに意識を失いかけたがなんとか堪えた。
「ほう、なかなかやるじゃないか」
ブラックマンは感心したように言った。
「まあいい。これで終わりにしてやるよ」
彼はそう言うと再び襲いかかってきた。今度こそ避けられないと思い覚悟を決めた瞬間、目の前にいたはずの彼が消えた。そして背後から声をかけられた。
「危ないところだったね」
振り返ってみるとそこには男がいた。どうやら助けてくれたらしい。
「ありがとうございます」
僕は礼を言って頭を下げた。
「いいんだよ。それより早く手当しないと」
彼の言葉を聞いて思い出したかのように傷口を見るとうっすら血が出ているだけでほとんど治っていた。驚いて自分の体を確かめると服についた汚れ以外は怪我の痕跡が全くなくなっていた。
「凄いな。これが魔法なのか?」
僕が尋ねると彼は首を振った。
「残念だけどそれは違うんだよ」
「じゃあお前は一体……」
僕の言葉を遮るように遠くで爆発するような大きな音が響いた。
「どうやら始まったみたいだね」
彼は呟くとその音のする方へ歩き出した。
「ちょっと待ってくれ!どこにいくつもりなんだ?」
「もちろん戦いに行くんだよ。君も来るかい?」
「当たり前だろ!」
僕は即答して彼の後を追った。
しばらく歩いていると開けた場所に出た。そこでは大勢の人々が魔物と戦っていた。
「これはいったい?」
戸惑っている僕の横を誰かが走り抜けていった。見るとさっきの男と同じ格好をした人が戦っていた。よく見てみると他にも同じ服を着た人がいるようだ。彼らは次々と敵を斬り伏せていく。
「大丈夫か?」
一人の男に声をかけられた。
「はい、ありがとうございました」
僕は礼を言うと立ち上がった。
「君はどうしてここに来たんだ?」
「実は……」
僕はこれまでの経緯を説明した。
「なるほど、そういうことか。なら俺たちと一緒に来ないか? きっと力になれるはずだ」
「わかりました」
僕は彼について行くことにした。




