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ファンタジー転生記  作者: 林田力
オムニバス短編
28/40

ドアの鍵

左門は不思議そうにしている。

「でも、佐助さんはどうして僕の部屋に来られたんですか? 確か、この部屋の鍵はかけておいたはずなんですが」

「ああ、そのことなんだがさ」

佐助は頭を掻いている。

「実は、鍵なんてかかっていなかったんだ」

「え?」

左門は目を丸くした。

「どういうことです?」

「つまりさ」

佐助は困り顔になった。

「お前さんの部屋に入った時、ドアにはちゃんとカギがかかっていたんだよ。だけど、すぐに壊れちまったんだ」

「壊れたって……まさか!」

左門の頭の中に一つの可能性が浮かび上がった。

「あなたの仕業なんじゃないですか!?」

「違うってば」

佐助は慌てて否定している。

「俺じゃねえよ。それに、もしそうだとしても、どうして俺に罪を着せようとするんだよ?」

「それは……」

左門は口籠もってしまった。

「すみません。咄嵯に思いついたことなので、理由までは考えていませんでした」

「まったく、お前さんは相変わらずだなぁ」

佐助は呆れた様子を見せている。

「まあ、いいさ。とにかく、お前さんの部屋の中に入ってみたんだけどさ。その時に気がついたんだよ。窓が開いてたから、そこから逃げたんじゃないかってな」

「なるほど」

左門は納得してみせた。

「それで、わざわざここまで追いかけて来てくださったわけですね」

「そういうことだ」

佐助は大きくうなずいた。

「お前さんの身に何かあったらと思うと気が気でなくてさ。居ても立ってもいられなかったんだよ」

「そうですか」

左門は嬉しそうな顔をしていた。

「そこまで思ってもらえるとは光栄です」

「まあな」

佐助は照れくさそうに鼻の下を指先でこすっていた。

「ただ、お前さんの無事な姿を見た途端、安心しちゃったせいか、急に腹が減ってきてさ。お前さんの分と合わせて二人分の弁当を買ってきたから、一緒に食おうぜ」

「はい」

左門は大きくうなずいた。

「ところでさ」

佐助は箸を動かしながら言った。

「お前さん、これからどうするつもりなんだ?」

「そうですね」

左門は考え込んだ表情をしている。

「とりあえず、ここを出ようと思っています」

「出る?どこにだよ?」

佐助は眉間にシワを寄せている。

「もちろん、元の世界にですよ」

左門は平然と答えた。

「元の世界だって?」

佐助の顔色が変わった。

「おい、ちょっと待ってくれよ。お前さんはこの世界の住人だろ。なのに、何でそんなことを言い出すんだ? 意味が分からんぞ」

「いえ、僕はこの世界の人間ではありません」

左門はきっぱりと告げていた。

「だから、ここから出て行かなければならないんです」

「ちょっ、ちょっと待った!」

佐助は慌てふためいていた。

「この世界の住人じゃない? それじゃあ、お前さんは一体何者なんだ?」

「僕の名前は左門召介。魔術師です」

「そいつぁまた……」

佐助は困惑した顔つきになっている。

「随分と変わった経歴の持ち主だな」

「よく言われます」

左門は笑顔で応じている。

「でも、この世界での暮らしも悪くないんですよ。毎日が刺激的で楽しいんです。特に、あなたのような素晴らしい人と巡り会えたことは、僕にとって幸運以外の何ものでもありませんでした」

「お、おお……そうか」

佐助は頬を引きつらせながら笑っている。

「ところで、一つ質問があるのですけど」

左門は真面目な口調になった。

「この部屋のカギを壊したのは、やっぱり佐助さんなんですか?」

「いや……」

佐助は首を振った。

「俺は壊していないってば。そもそも、この部屋の鍵は壊れていなかったんだよ」

「え?」

左門の目が点になる。

「じゃあ、どうして鍵が壊れたって言うんですか?」

「ああ、それはさっきも説明した通り」

佐助は頭を掻きつつ答えた。

「俺が来た時には既に壊れていて、ドアが開いていたんだ。それで、それで、中に入ったら鍵がかかっていたってわけさ」

「なるほど」

左門は納得してみせた。

「そういうことだったんですね」

「そうだ」

佐助はうなずいている。

「俺も驚いたよ。まさかカギがかけられていないなんて思わなかったからさ。でも、おかげでお前さんの部屋に入れたんだから、結果オーライってところかな」

「それは良かったです」

左門は微笑んでいる。

「ところで、佐助さん」

「うん?」

「佐助さんは、どうしてここに来られたんですか?」

左門は再び尋ねた。

「実はさ」

佐助は困り顔をしている。

「俺にも分からないんだよ。気がついたらいつのまにかこんなところにいてさ。正直、途方に暮れてるって感じなんだ」

「なるほど」

左門は大きくうなずいた。

「それは大変ですね」

「そうなんだよね」

佐助は苦笑いを浮かべた。

「ただ、お前さんの部屋に行けたことだけはラッキーだったよ。他の連中のことはまだ全然知らないからさ。もし、お前さんさえ良ければ、いろいろと教えてくれないか?」

「はい、喜んで」

左門は大きくうなずいた。

「といっても、僕もまだこの世界のことについては詳しくないのですが……。とりあえず、僕たちの知っている情報を交換しましょう」


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