第1章 第5話
朝のHRが終わり、如月の席に様々な女子が集まっていた。否、女子だけではない。男子も集まっている。その中にはもちろんいつも、水原を囲んでいる女子達も入っている。その理由はよく分かる。もちろん俺の事だろう。ある女子が
「あんなキモ男とよく実行委員する気になったね。身の危険を感じたらいつでも言いなよ」
と言った。キモ男ね。はいはい。キモ男……キモ男……俺は目から水が出そうになるのを堪える。すると如月が
「葛島君はそんな人じゃないよ!だからそんなこと言うのはやめて!」
俺はさっきとは違う理由で泣きそうになる。如月って天使なん?女神なん?超救われた。俺実行委員頑張れる気がするy
「LINEだよ!おに〜ちゃん♪」
その時如月を含む如月の席に集まっていた人達がみなこちらを一斉に見た。終わったやつだこれ…あばよ。俺の青春!あばよ。俺の未来!あばよ。俺の人生!ふと水原の方を見るとアイツは俺を睨んでいた。うん。完全に俺が悪いです。すんません。なんも言えません。はぁ〜もう、まったくぅ〜。ウチの妹はお兄ちゃんが大好きだなぁ〜。俺は恥ずかしいよ。俺の現実逃避も虚しく如月が口を開く。
「え、えっと。私は妹じゃないし、身の危険はないと思うの。だからその葛島君を信じてあげて?」
シーンと静まる教室。皆は見てはいけない物を見たかのように、各々がその事に触れず、教室を出て行った。そして残されたのは、俺と如月と水原である。
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気まずい!ヤバいヤバいヤバい。如月になんて言おう。今のは俺じゃないから!とかか?ダメだ、それだと屁をこいたあとすぐに自分じゃないと言うと疑われる現象が起こってしまう。ここは黙秘だ。黙ってやり過ごすのだ。待てよ…
俺は咄嗟にスマホを見る。
「!」
俺のスマホにはLINE通知が来ていなかった。
「おい!如月見てくれ!」
俺はスマホの画面を如月に見せる。
「さっきのは俺じゃない!LINEの通知が来ていないんだ!」
「ほ、ほほ、ほんとだ……」
良かった分かってくれた。なぜだか如月はオロオロしている。
「そうだよね。如月君なわけないよね。あ〜びっくりした」
ということは、俺に罪をなすりつけようとした者がこのクラスにいるということだ。ソイツは許さん!と言いたいところだが、ソイツとは気が合いそうなので友達になりたいところだ。と次の瞬間。
「LINEだよ!おに〜ちゃん♪」
今度は本当に俺の通知が鳴った。水原はアニメの悪役キャラのように、片方の口角を上にあげていた。コイツ!やりやがった!俺の人生の手伝いをするんじゃねぇーのかよ!すると如月が恥ずかしそうに頬を染めて、
「さっきの通知音…私……な…の………」
は?
「は?」
思わず声が出てしまった。しかし未だに如月の言っていることがよく分からない。どうやら驚きすぎて日本語が飛んでしまったらしい。ココハドコワタシハダレ。いやそれは記憶喪失や!とか考えてしまうくらいにはよく分からなかった。
「だから、さっきの通知音私なの!ごめん!なすりつけて」
如月は大きな声でそう言う。
「おっ、おう」
そう返事するしか出来なかった。如月が妹ボイスを通知音にしていると、そう聞こえたからだ。恐らくは俺の聞き間違いだろう。
なぜならこれは、超マニアックな妹ボイスだからである。これは「妹×妹 妹妹魔法!はじけるすーぱー 愛の光線」略していもらぶと言う知る人ぞ知る伝説の妹アニメのボイスだからだ。これを知っているとなると、如月はそうとうなオタクになってしまうのだ。如月がオタクなはずが無い。うん。俺の聞き間違いだな☆しかし如月は
「というか葛島君もいもラブ好きなの!?やっぱりスズたん推し?それともレミたん推し?まさかのソラたん推し?私はやっぱりスズたんだなぁ〜やっぱりメインヒロインなだけあるよね!そんなことはよりさ!いもラブファンと実行委員が出来るなんて幸せだよ!オタク友達としてこれからもよろしくね!」
うんこれ聞き間違いじゃないやつだは。てかめっちゃ早口じゃん。恐ろしく速い口撃、俺でなきゃ聞き逃しちゃうね。
「よっ、よろしく」
俺は引き気味に返事をする。昨日の可愛い如月はどこに行ってしまったのだろう。今の如月は俺がラノベを読む時と同じようなニヤニヤとした笑みを浮かべ、フヘ、フへへへへへへ。なんて笑っていた。まぁオタク友達が出来るのも悪くない。ましては美少女だ。俺は運がいいのかもしれない。人は見かけによらない。というのを体感した俺であった。
読んでいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!