第1章 第3話
俺のLINEの友達が4人になった。ついに念願の4人だ。しかも美少女である。
「今日は祝いだな。赤飯でも買うか」
こうして俺は帰りにスーパーに寄ることにした。店内はひんやりしている。夏休みが終わったといっても、まだまだ暑いので丁度いい。赤飯を探していると、そこには見たことがある少女の顔があった。黒髪のショートカットで優しそうな雰囲気を持っている。その少女の名は、如月 紬。俺のクラスメイトで俺が水原以外で唯一話したことのある女子だ。(まぁ話したといっても、俺が如月の前でつまずいて大丈夫?って聞かれただけだが。)如月は水原に負けず劣らずの美少女で学校内でも男子生徒からとても人気がある。彼女は雰囲気通りにとても優しい。どこかの水なんとかさんとは大違いだ。そんなことを考えていると如月と目があった。彼女がこちらに近づいてくる。小走りをしている…可愛い♡
「葛島君?だっけ?」
おぉ!名前を覚えてくれてたなんて感激!赤飯増やそ。
「そうだけど。如月はなんでこんなところにいるんだ?」
そんなこと質問しなくても分かる。なぜならここはスーパーだからだ。しかし、長年陰キャしてきた俺が急に女子の前で会話術が覚醒したりはしない。繋ぐため、繋ぐため必死なのだ。
「買い物。今日の夕飯を買いに。葛島君は?」
「奇遇だな。俺も夕飯を買いに来たんだ」
今日は本当に運がいい。LINEの友達が4人になり、クラスの美少女とも話せた。俺明日死ぬんじゃないか?
「そうなんだ。何買うの?」
おぉ!ここからまだ会話が出来るとは!普通はここで「そうなんだ。じゃあまたね」ってなって会話が終了すると言うのに。なんという幸運!なんという奇跡!
「俺は赤飯を買いに来た。実はいいことがあってな」
「いいこと?なにがあったの?」
やっぱこれ俺明日死ぬは。事故るは。まだ会話続くか!?普通!?今日は最後の晩餐だな。高いものたくさん食べよう。
「実は今日LINEの友達が4人になったんだ!」
そう俺が自信満々に発言すると、如月は一瞬なにを言っているのか分からないような表情をして、吹き出した。
「ふふっ。ふふふ…ふふふふふっ」
俺はなにか笑われるようなことを言っただろうか?というか笑顔可愛いすぎだろ。それは反則だろ。惚れてしまいそうだ。
「いや。ごめんね?LINEの友達が増えただけで赤飯って…ふふっ」
え!?なにやっぱ変なこと言ってた俺?みんなLINEの友達が1人増えるたびに喜び庭駆け回ってんじゃないの!?庭なんて家にないけど。マンションだし。
「そんなことで葛島君が喜ぶんなら、私のもLINEあげるよ」
俺死んだは。一生の運使い切ったは。
「マジで!?ありがとう!もう最高だは!LINE友達5人だ!わーい!」
俺の反応をみた如月はもう我慢ならないという風にプルプルと震えている。
「笑いたいなら笑えよ。俺は今気分がいいからな☆」
「ごっごめん…ふふっ。ふふ…ふふふふふふ…ふふふふふ…あはははははっ」
そんなに笑えることか?これ。あと美少女がそんな大口開けて笑うんじゃありまっせん!
如月の笑いが収まるまで5分ほどの時間を有した―
「いやぁ。ほんとごめんね?面白くてつい。葛島君って面白いね。こんな友達ができて嬉しいよ!」
と如月はさっきとは打って変わって、とても可愛らしい笑顔でそう言った。
「え?」
俺は思わず声が出てしまう。俺が友達?友達ってどういう意味だっけ?俺が?この美少女と?トモダチ?…
「私なにか変なこと言った?友達っておかしい?」
!?
「なぁ如月!友達ってあの友達か!?あのリア充共が私たちずっ友だよね〜。とかいってるあの友達か!?」
「リア充共って…うん。そうだけど…嫌だった?」
嫌な訳がない。俺はそう言うつもりなのだが声が上手く出せない。すると如月が驚いたような顔で俺を見てくる。
「!」
俺は気づくと涙を流していた。
「大丈夫?そんなに嫌だった?ごめん…」
如月が不安そうな顔をして聞いてくる。
「嫌な訳がない!驚いて声が出なかったんだ。だって美少女に友達って言われたんだぜ?でも本当に俺が友達でいいのか?自分で言うのもなんだが、俺頭も良くないし、顔だって悠矢に比べれば良くない。性格も良い方ではないし…」
俺は俯きながらそんな自分で言ってて悲しくなることを言った。ふと如月を見ると怒ったような顔をしていた。
「葛島君が嫌な訳ないじゃん。まだ知り合ったばかりで分からないけど面白いし、私は葛島君が友達だったら嬉しいよ。だからそんなこと言わないで?これからよろしくね」
如月はそう言うと少し顔を俯かせてボソッと何かを言った。俺にはよく聞こえんかったが。
「美少女って……////」
気づくと俺は号泣していた。女の子の前で号泣だなんてダサいにも程がある。ていうか俺はいつからこんな涙脆くなったんだ。だが俺が友達だと嬉しいだなんてウソでも本当に涙を抑えられないほど嬉しいことだ。
「如月ありがとう。これからよろしくな!」
「うん!よろしく!」
如月が見せたその笑顔はキラキラ輝いていて、俺には眩しすぎるものだった。
俺は赤飯を爆買いしてスキップしながら家に帰った。
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