第1章 第1話
そこにいた少女。それはうちの学校では知らぬ者などいない。定期テスト、県模試1位は当たり前。人間なら誰でも振り向くその容姿。枯れた花も少女が触れれば咲き乱れる。そんな彼女の名は―
「水原 葵。君の名前も教えてよ」
「葛島 龍斗」
俺はそう答える。しかしなぜ彼女がここにいるのだろうか。
「お前、なんでこんなとこにいるんだよ」
俺はさっきからずっと気になっていたことを質問する。
「そんなことはどうでもいいんだよ。君こそなんでそんなところにいるの?」
俺は水原の言葉に自分が今どうゆう状況なのか思い出す。俺は自殺しようとしていたのだ。今から飛び降りてもいいが、彼女にそんなショッキングなところを見せるわけにはいかない。俺が今飛び降りることで彼女が病んでしまったりしたら大変だ。別に急にかわいい子に話かけられたのだから、そのチャンスを逃すのは惜しい。とか思ったわけではない。とりあえず俺はフェンスをもう一度登り元の場所へ戻る。彼女は俺が戻ってきたのを確認すると口を開く。
「なんでここにいるのかは教えられないけど、君の人生の手助けがしたい」
「は?」
今、俺の人生の手助けをしたいって言ったのか?それって、つまりプロポーs
「君が今考えているようなしょうもないことじゃないよ」
「なんで俺がどんなこと考えてるか分かったんだよ。…だったらどういう意味なんだよ」
そうだ。プロポーズではないなら、どういう意味なのだろうか。愛の告白?結婚はちょっと早いからまずはお付き合いから。ってやつか?そうなのk
「君には本当にしょうもない考えしかないんだね。そんなことはないから安心して」
「だからなんで俺がどんなこと考えてるか分かるんだよ。こえーよ」
なぜか俺の考えてることがお見通しだ。ならば今エロいことを妄想すれば間接的にセクハラができるのでは!?
「はぁ。口は悪いし頭も悪い。まったくダメだね」
「なっ。お前言っていいことと悪いことがあんだろ!さっきまで自殺しようとしてた人間によくそんなことが言えるな!」
確かにセクハラしようとか考えてたのは少し悪かったかもしれないが、そこまで言う必要はあるまい。なんかもうズタボロに言われたが間違ってないので悔しい。
「あれ?間違いだった?自分の好きなラノベが来年アニメが放送するというのに自殺しようとした人が頭が悪くないと?」
「!?」
コイツどんだけ俺のこと知ってんだ?まさか俺のストーカーか!?だからこんなとこにもいたのか?
「はぁ。君の考えてることに一々ツッコんでたら話が進まないから、もう無視するけど。人生、つまらないんじゃないの?」
まったく、痛いところをついてくるやつだ。確かに俺の人生はつまらない。だから、自殺もしようとしてた。だが他人にそれを決めつけられるのは、嫌だ。
「あぁ。確かに人生はつまらない。だかな、それはお前には分からない」
俺はわざとコイツを突き放すような言い方をした。そうだ。コイツに俺の人生のつまらなさが分かるはずがない。この世界は理不尽で不平等だ。自分がいいものに恵まれた者ほど、みんな違ってみんないい。なんてほざきやがる。コイツのように、容姿に恵まれ。友達にも恵まれ。自分を取り巻く環境にも恵まれたなら、俺の人生もつまらなくはなかっただろう。だが俺は恵まれなかった。容姿も中途半端で悪いとはいえないが良いともいえない。友達も人生で出来たのは1人。俺を取り巻く環境?俺はいつでも1人だったよ。
「君は、逃げてるだけだよ」
俺はその言葉を聞いてハッとした。
「すべて自分以外のせいにして、責任逃れをして、自分の人生から目を背けているだけだよ!良くしようとするフリをしてるだけ。私には君の人生のつまらなさが分からない。でも、私は……私もそうゆう時期があったから。その時に、ある人が人生楽しく楽に行こうぜ!って言ってくれたの。私それにすごく救われた。だから今度は私が助ける番!君の人生を楽しくしたい!」
そんな純粋な生き方をしてもいいのだろうか。だが俺は少しひねくれ過ぎたのかもしれない。
「人生を楽しく楽に行こうぜ!か。俺もそんなふうに考えてた時期があったな…思い出したよ。ありがとう」
そう。俺にもそんな時期があったのだ。あの頃は純粋に物事を楽しんでいた。勿論「人生」も。今そんな純粋に生きる生き方をしてもいいのかもしれない。
「俺の人生を楽しくするって言うけどよ、具体的にはどうすんだ?」
すると水原は口角を上げ、自信満々にこう答えた。
「まずは今が大切だよね!」
そう答えた水原は、夜の星々にも、街の明かりにも負けないような、とても美しく魅力的な笑顔だった。
読んでいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!