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『父』と私と私の作るセカイ

 大きな部屋には、たくさんのおもちゃがあった。

 それは建物の模型で、人間を模ったもので、匂いを発する果物と酷似したものもあれば、自力で動けない小さな車が散らばってる。いわゆる小型模型(ミニチュア)たちだった。世界を縮小し細分化した、見慣れたものたちの模造品だ。

 父が、私たちが遊ぶため、それだけの目的で開放した部屋。

 もともとは屋敷の空き部屋のひとつで、今では、ものの散らばるおもちゃ部屋。


「好きに置くといい」

 

 ぼやけた視界で。

 感覚を頼りに。

 手触りで。

 世界を。


「つまり、いつも通りだ」


 手に掴んでいるものが何かを確かめ、ゆっくりと置いていく。

 そんな私を父は、言葉少なに見つめている……のだろう。私は目の前の世界に夢中で、私の思考の中に父の姿を確認する意思が入る余地はなかった。でも分かる。父はきっと、微笑んでいる。子どもを見守る、父親の笑みで見つめている。ほら、あなただってそんな風に笑えます。

 

 私の世界。

 私が創り上げ、父が眺める──セカイ。

 

 ヂッ! ……ああ、彼女もいる。

 鳥かごからここまでを、きっと父についてきたのだろう。上機嫌に、高らかに、何事かを歌っている。妹に拾われてきたときから、私たちよりもこの屋敷に住まう誰よりも、彼女は父にべったりだ。そして当の父も、人間の言葉よりも彼女の歌のほうを聞きたがっているように見えた。


 私が創り、父が眺め、彼女が歌う。


 父と、白く小さな鳥の視線を受けつつ。

 私は、部屋の真ん中に大きなお城の模型を置いた。


 そのお城には、一人の若く麗しい姫が──多少、毒舌家のきらいがある姫が住んでいて、日々、テラスから景色を眺めているのだ。

 素晴らしい世界を。

 奥行ある広々とした世界を。

 ここではないどこか、今ではないいつかを──舞台、とした。


 なんとも素晴らしき、異世界を。

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