後日談のⅠ─19C5H5N511C4H7NO4C5H9NO47820811─
「はい。あなたは死んじゃいましたあ♪」
気が付くと真っ白な空間の中で、目の前に女がいた。
神経を逆撫でするような笑顔を浮かべ、にやにやとワタシを見ている。
神々しい光りを放つ薄い絹のような材質で編まれた、背景と同化するほどに白い服を身に纏っている。服そのものが薄いせいか、女の肉感的な身体の主張が目についた。目障りだ、とワタシは思った。
「はいはい。そんな怒った顔しなーい。光栄な事態に、今からあなたは直面できるのよお?」
女は媚びた声で言う。苛立たしさが止まなかった。由来の知れない苛立たしさと、よく分からないが虚無感があった。
目の前の女。何処かで見たような気がする。
しかし何処でだっただろうか。
それに、ワタシは誰なのだろうか。
ここはどこで、ワタシの今以前はどのようなものだったのだろうか。
「はい。それじゃあもう一度言いまーす。あなたは死んじゃいましたぁっ♪♪♪」
とてもとても愉しげに、女は再度そう言った。
ワタシは、死んだ……どう死んだ?
「疑問がいっぱいの顔だわ。ふふ、かーわゆーい。あなたは自分の名前、分かるう?」
「いや……何も」
「ふうん? なにも分かんない? ならお姉さんが名付けてあげるっ。あなたの名前は、そうねえ……ああ! 良いの浮かんだっ!」
ぽん、と手を叩いて。
目の前のお姉さんを自称する年増の女は。
「あなたの名前は、セレベルよ」
セレベル。
それがワタシの、名。
「これからよろしくぅ、ベールちゃんっ!」
ぽん、とワタシの肩を叩き、気安く女は瞳に笑みを含んだ。
至近距離の女の細められた双眸がじっと、私を見据えている。
「ほんとはもっとお喋りしていたいんで、す、が、あなたとお喋りしている間にも気の毒な世界は蝕まれ続けているの。だから、ね」
肩に置かれた手が私の身体をゆっくりとなぞり、首筋にまで這ってきて、
「がんばって、積もってきてね」
ふと、視界の全てが、霧散した。