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風の音  作者: 燦〜aki〜
2人だけのライブとココア
8/8

夢と現実と社会








彼女の背中はとても小さく


これ以上泣いてしまうと


折れてしまうのではないかと思うぐらいの


小さい体で


大きな不安を抱えて声を上げていた


彼女の不安が少しでも無くなればいいと思った


僕ができることがあるならと思えた


こんな素敵な歌を歌える彼女と


彼女の夢を守ってあげたいと思った


彼女『あ…あの』


ワイ『は…はい!』


驚きのあまり手を離してしまった


嫌だったかな?


本当は彼女が何か言う前に


優しい一言でもかけれたらと思っていたが


先手を取られて驚いてしまっていた


彼女『あ…ありがとうございます。だいぶ落ち着きました』


ワイ『よ…よかった!だ…大丈夫?』


彼女『もう大丈夫です…少し思い出してしまって』


ワイ『そっか…』


彼女『心配かけてしまってごめんなさい』


ワイ『俺は大丈夫だよ!』


彼女『少しお話聞いてもらってもいいですか?』


ワイ『僕でよければ聞くよ?』


彼女『実は…階段で転けたって言うのあれ嘘なんです…』


ワイ『え…うん…なんとなくだけどわかってたよ…』


彼女『え!わかってたんですか?』


ワイ『う…うん…さすがに転けただけでこんな傷にはならないだろうなぁって…』


彼女『バレちゃってましたか…』


彼女『実は私…地元でスカウトされたんです。東京のプロダクションって人に』


ワイ『え!じゃあもうプロダクションに所属してるの?』


彼女『わからないんです…それが…3月の半ばぐらいに東京に来て…プロダクションで契約してるっていう寮に住むことになりました。そこに住まわせてもらって…歌のレッスンを受けてたんですが。ある日からプロダクションの偉い人って方が…その…売れたいか聞いてきて…売れたいって答えてからレッスン中に体を触ってきたりしてきて…』


何も言えなかった…


それは怒りなのか悲しさなのか


とにかく自分の話ではないのに苦しかった


あった事もない


偉い人にかなり憤りを感じた


未来ある彼女に


権力を押し付けてセクハラするなんて…


彼女は続けた


彼女『拒んではいたんですが…日に日にエスカレートしていって…レッスンが終わった後ホテルに連れていかれそうになりました…ふりほどいて逃げてとりあえず電車に乗ってここにきたんです…そしたら立花さんと会って…』


彼女に始めた会った日だ


帰れないと言っていたのはこの事だったのか


やっと納得がいった


彼女『東京に来て初めて歌を褒めてくれたのが立花さんだったんです…すごい嬉しくて…帰りたくなくて…』


ワイ『そうだったんだ…そんことがあったなんて思ってもなかったよ…』


ワイ『え…そのあと帰ったよね?寮に帰ったの?』


彼女『はい…一応その人たちに合わないような時間に寮に帰りました…でもすぐに寮にその人たちが来て…』


彼女の声が震え始めた


かなり怖かったのだろう


彼女『私…親にも地元の友達にも有名になって帰るって伝えてて…こんな形で相談するのが嫌で…』


彼女が肩を震わせる


背中に手を置いた


彼女『ごめんなさい…泣いてばっかりで…』


ワイ『大丈夫だよ…辛かったでしょ』


彼女『さっき寮から出てきました…偉い人たちとかがすごい止めてきて怒鳴ってて逃げてきちゃいました…』


彼女『スマホも置いてきちゃって連絡しないで遅れてごめんなさい…』


ワイ『だ…大丈夫だよ…』


彼女『私…こっちきて話できる人…相談できる人立花さんしかいなくて…』


彼女『でも…夢は諦めたくないんです…小さい頃からの夢なんです…』


彼女『私聞いちゃったんです…私のマネージャーと言っていた人がその偉い人に…なんでわざわざレッスン受けさせるんですかって…そしたら偉い人が…商品は使いようだって…言ってました…その意味とその後の行動考えたら…本当に怖くなってしまって…』


彼女の震える手に涙が落ちる


彼女『親に相談しようとも思ったんですが高いレッスン料払ってもらってるの知ってますし…こんなにすぐに諦めて帰るなんてできなくて…』


彼女の手が震えている


悔しかったんだろう


夢を見て地元を飛び出して来たのに


現実がこんな事になるとは思ってなかったのだろう


夢を見ていた頃の歌を自分の歌詞を歌って


悲しくなってしまったのだろう


憤りと苦しさと悔しさが伝わって来た


彼女が心配で仕方がなかった


どうにかして権力振りかざしてるクソ野郎共から


彼女を守ってやりたいと思った


彼女…上京してきたのにこんな辛いことあって不安よな…


ワイ動きます


覚悟が決まった


ワイ『なにか…何か僕にできる事…僕にできることをさせてほしい…』


彼女『え…』


ワイ『とりあえず君がよければだけど…落ち着くまで うちに住まないかな?一部屋空いてるんだよね…ネカフェに泊まるってなってもお金つらいでしょ…』


彼女『え…でも…迷惑かけてs』


ワイ『気にしないで気にしないで!本当に!相談してくれた事も嬉しいし…勝手で申し訳ないんだけど…僕君のファンなんだよね…何かできることがあるならしてあげたいと思ってる』


彼女『でも…』


ワイ『そ…それに事情も知らずにあの日帰ったほうがいいって帰らせた俺にも責任があると思ってる…勝手にだけど…あの時俺が帰るんじゃなくて他の提案ができてたらこの傷はなかったかもしれない…』


ワイ『俺にも責任があると思うんだ…』


彼女『そんな!立花さんは何にも悪くありません…私がバカなだけで…』


ワイ『君は何にも悪くない!悪いのはそいつらだ!』


大きな声を上げたせいか彼女がビックリしていた


ワイ『大人の権力を振りかざしてるそいつらを俺は許せないし君をそんな場所へ返したいと思わない…』


彼女『でも…迷惑かけてしまいます』


ワイ『俺のことは気にしなくていいよ?』


少しの沈黙


ワイ『嫌でなければ…強制はできないけど…』


彼女が黙り込む


ワイなりに全力で下心は消したつもりであったが


彼女はどう捉えたのか…


ワイの脳内では赤く光ったパトランプが点滅している


ダメだったか…


明日の一面は少女誘拐未遂でワイは人生終わりか


短い人生だった…


彼女『あの…』


ワイ『は…はい!』


彼女『よろしくお願いします…』


ワイ『えっ…』


彼女は呟くようにその言葉を発した


彼女のその一言は


助けてほしいと言ったような気がしていた




風が吹いた 樹の葉っぱたちがサラサラと音を鳴らしている


心地よかった











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