大きな木の下で 3
【本編の前に】
前回の更新は作者の手違いで月曜日になっていました。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
俺は続ける。
『最初は報告してきた奴が、木に登った奴を陥れるために言わなかったのだと思った。だが君は言った、[人は1つの側面から物を見ることができない生き物だ]と。そうだとしたら、全く別の考えが浮かんできたんだ』
『もしかしたら報告した奴は、報告を受けた奴が【リボンを取ってあげるため】だと知っていると考えて、言わなかったのではないかと思った。だから貶めようとした、という理由は適切ではないと思ったのだ』
認識、もしくは価値観の違い。
少し考えてみれば呆気なかった。
AとBという2種類の人間がいれば、2通りの考え方が生じる。
ならばそこの違いが埋まらなければ?2人の間にアンジャッシュが起こる。
当然の帰結だ。
女の子は頷いた。
『そうですね、私もですわ。だからこそ、しっかり確認を取ることや話を聞くこと、コミュニケーションを取ることは大切だと思うのです』
『全くだな』
俺が肯定すると、女の子ははにかんだ。
だが、笑顔を浮かべているにしては、どこか物憂げに見えた。
わからない、俺という他人の共感を得ているのに。何故だ?
『どうした。何か気になることでもあるのか?』
俺が聞くと、女の子は目を伏せた。
『少し、怖くて』
『怖い?』
『はい。意志の疎通が行われないことで、生じる物事が、怖いです』
生じる物事か。私は天を仰いだ。まずは。
『人間関係が悪くなるな』
『はい、喧嘩が起きるかもしれませんね』
『規模が大きくなると、良くないな』
『何かの火種になるかもしれませんね』
火種。何故か耳に残った。
俺は脳内で噛み砕いて、反芻した。
唐突に1つの考えが閃いた。
身震いした。
もしも。
『あぁ、非常に良くない。確かに恐ろしいな』
俺は女の子を見据えた。
女の子も俺を見ていた。
『だが、俺はもっと恐ろしいと思った』
その認識の齟齬が。
『それがわざと起こされた場合は』
悪意によって生じたものだったら?
女の子は一瞬だけ目を大きく開き、ゆっくりと頷いた。
【お知らせ】
本日から毎日投稿します。
予定通りに投稿出来ればあと4話で完結です。
もうしばらくお付き合いください。