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第9夜 夜の美術館


第9夜 夜の美術館



夜が来た。

私は想像の川に釣り針を投げ込み何かを吊り上げようとしていた。

恐らくは、人魚か、ダイヤの王冠でも吊り上げようと思っていたのだろう。


次の瞬間、

私は夜の美術館にいた。


そこには見たこともない絵画がずらりと陳列されているのだった。


私は次々にそれらを眺めていった。


まず現れたのは、白いベールをかぶった一人のバロック様式の貴夫人像だった。

背景には、荒地が描かれて、夫人は重いローブの衣装で白い子犬を抱えていた。

その夫人は私にこういった。

「仮面をお取り。そうすれば目玉も髪の毛も全て抜け落ちるのよ。」



私はそんな言葉に耳も貸さずに次の絵の前に行った。



それはカーニバルを描いた、100号クラスの大きな絵画だった。

道化師、見世物小屋、奇人、奇怪な動物、仮面のピエロ等が所狭しと画面いっぱいに描かれていた。


その中に黒衣の夫人が描かれていて、

その夫人は私にこういうのだった。

「迷宮の中に隠された富を探しなさい、そうすれば貴方の夢想の愛も実現できるでしょう。」



私は思わず頷いたが、更に歩を進めた。



次の絵は、壮麗な古城を画面いっぱいに描いたものだった。

中世のドイツの城のようだった。

門はいかめしく閉じられどこからも入る隙はないようだった。

その城の塔に幽閉された乙女の姿が描かれていた。

その乙女は私にいう。

「私の大事な5匹の小ウサギを無残にも殺したのは貴方ね。だから、貴方は永遠の流刑地で

 1徒刑囚として永遠に罪を、償わなければならないのよ。」


わたしはもうこれ以上見ることが耐え切れなくなっていた。


もうこれで最後にしよう。


そうして、次にきたのは、古めかしい扉を描いた絵だった、

その扉には、骸骨が、指さしている、文字が書かれている。

「ここより入れ、そうすればお前の未来に会えるだろう。」


私は絵に近づきそっと、扉に触れた。

するとどうだろう。

絵のはずがぎいいっと開いたのだ。

私は中に吸い込まれていた。

そこは暗い洞窟のようだった。

なぜか私の手にはロウソクが、

その火を頼りに歩をすすめると、やがて大きな空間に、

そこには30体の棺桶が並べてあった。

私はそれが誰の棺なのか分かるような気がした。

しかし開けることも近づくこともしない方がいいこともまた、わかるのだった。


きつつきがかんかんと木をけたたましく叩いたり、、

ミツバチがぶんぶんと、耳元で騒ぎまわるまで、私はそっと眠っていなくてはならないのだ。

私はそう、言い聞かせると、再び睡魔に身を任せたのだった。


第9夜  終わり









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