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第8夜 ローマ庭園にて

私は夢の中にいた。


それはいつも見慣れた風景のはずなのに、妙にゆがみ、私の視界を曇りガラスの風景に、

変幻させていたのだった。


知らずに、私は、家の戸を開けて混濁した、意識のままに、さまよいだしていた。

彼方に、開けた、街路があり、その先には、古代ローマ風の庭園があるようだった。

私は無心に歩いていた。

というより、まるで夢遊病者のように、私は滑る様に、歩みをすすめていった。


そのとき、一人の白い少女が現れて、

「私のお墓に行かせてあげるわ」というのだった。

「わたしのふるさとは、遠い昔の、神殿の中、そこを探せば私は今もいる」


そして指差す先には庭園が広がっていた。

それは確かにローマ庭園だった。

荒れ果てた、庭園には、人気はなく、森閑としているのだった。

中央に、大理石の大きな噴水があり、静かに水を噴き上げていた。


近づいてみると、牧神のラッパから、デーモンの口から、水は噴き上げていた。

しかし、夕闇は迫り、薄暮の中に、寂しそうに噴水は流れ落ちているのだった。


彼方を見やると、列柱が連なり、そこは古代の神殿のようだった。

聳え立つエンタシスの列柱は、長く連なり、今は荒れ果てた、神殿を、

守り続けているのだった。


そして、草生す、園庭には、古代の神々の大理石像が、幾体も、もの思わしげにたたずんでいた。


私は探した、何を?

白い少女の墓を、

暫くうろつくと、見覚えのある、大理石像がたたずんでいた。

バラを抱えた大理石の少女像、その足元には、白い墓石が、

そして、墓碑銘は、


「レスボスに生まれし、乙女ここに眠る」


私はなぜか涙ぐんでいた。


そのとき不意に獣顔体人の古代神が現れ、

「ここはお前の立ち入るところではない、直ちに立ち去れ」

と私に、宣告するのだった。


霧が巻いてきたようだ。

私もそろそろ帰らなければならないようだ。


第8夜 終わり




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