わかるか!
店員にとって常連じゃなければ、ご遠慮ください。
という買い方。
「「ディアハッ!!」」
その日はデジタルでもポケットでもなく
気分を変えようということで、決闘しようということになった。
俺とS君は決闘を嗜む決闘者でもある。
ちなみにBGMはマスクドライダー電車王の
『ダ○ルアクション剣版、セリフあり』
である。
「俺のターン、ドロー!
俺は最初からトバしていくぜ?
モンスターをセットし、ターンエンドだ!」
「僕のターン、ドロー。僕はモンスターを召喚して攻撃。
戦闘終了時に効果を発動してセットモンスターごと除外します。」
「よし、終わったw」
ちなみに、俺の手札は封印された神様パーツが4種とドロー罠であった。
除外されたのは、墓地に送られた際にサーチ効果を発動するモンスターである。
「そや、S君よ。」
「無銘さん、ディアハで『待った!』は無粋ですよ?
『異議あり!』も却下します。」
「いや、そうじゃなくて。
タチの悪い客は聞いたけど
面倒くさい客はどんなのが居るの?
あ、ドローしてカードを1枚セットしてターンエンドね。」
「タバコを買いに来たお客さんが面倒くさかったですね。
僕のターン、ドロー。
通常召喚を破棄して、相手フィールドにモンスターを召喚。
追加効果で自分フィールドにトークンを召喚して攻撃します。」
「自爆特攻かよ。
何があったのさ?」
「銘柄を聞いても、重さで返事されました。
僕は一定以上の戦闘ダメージを受けたので、手札から速効魔法を発動します。
この効果により、互いのデッキからモンスターを全除外で。」
「エグいな、おい。
勝てる道筋が消えたわ。
ちなみに、どんな客よ?
お兄さんに告白しなさい。」
読者の皆様に誤解がないよう、
一応断っておくが、懺悔的な意味での告白である。
〜回想開始〜
どこにでもいるようなオバチャンがタバコを買いに来たんですけど、
来店するなり
「8ミリロング!」
って叫びだしたんですよ。
まぁ、タバコだろうと思って
「はい、銘柄はどちらでしょうか?」
って聞いたんですよ。
該当するタバコが7、8種類くらいあったんで。
それでも、
「8ミリロング。」
しか言わないんです。
「はい、ですから銘柄はどちらですか?」
って聞いたんです。
「ハ〜チ〜ミ〜リ〜ロ〜ン〜グ〜」
って返されたんで、
もう選んでもらった方が早ぇわと思って
該当するタバコ全部出して
「この中にありますか?」
って聞いたら
「コレ。」
って選びました。
で、会計済ませて帰ったんですけど、
今度は別の日に別のオバチャンが
似たようなことをやりましてね。
よりによって
「1ミリロング」でした。
同じ銘柄のタバコかと思ったんですけど、
レジカウンターをバンバン叩きながら
「1ミリロング、1ミリロング、私の1ミリロング〜」
って連呼するし、違うみたいやったんで
ウチの店にある「1ミリロング」のタバコを全部出したら
そん中の一つを手に取って
「コレ、カートンで。」
って言われましたわ。
正直、「知らんがな」の話ですよ。
「わかるかぁっ!」って叫びたくなりましたわ。
〜回想終了〜
俺もS君もタバコを吸う。
俺は銘柄を言わずにミリ数だけでタバコを買ったことはない。
わけでもない。
厳密には違うのだろうが、
S君の前任に当たる娘が、
俺が吸うタバコの銘柄は覚えていたが、ミリ数を間違えてたので
「それの5ミリ」
という言い方をしたことが何度かあるためである。
彼女が銘柄とミリ数を覚えてからは
軽いギャグのつもりで
「いつもの」
と言ったこともある。
もっとも、彼女が辞める前になると
俺の顔を見ただけで
「コレですよね?」
と準備されていたり
「新発売されたので、今日はコッチですよね?」
と、買うつもりの無いタバコも何度か買わされ、
ついでに彼氏でもないのにクリスマスプレゼントまで集られたので、
個人的にはお相子であると思っている。
ちなみに集られたクリスマスプレゼントは、
彼女が買ってるらしい『巨人』漫画の最新刊である。
年末の金欠時に集られた恨みと
集った時の彼女の笑顔は今でも覚えているが
名前は忘れた。
8ミリオバチャンにせよ、
1ミリオバチャンにせよ、
S君が知らない常連の可能性は無きにしも非ずだろう。
確かに、初見でミリ数だけで銘柄を当てるのは
ほぼ不可能であるのは認めるけどね。